解雇ができないケースとは?解雇制限期間や解雇予告について解説

2023年2月2日

はじめに

勤務態度に問題のある従業員がいたり、会社の経営が大きく傾いたりして、会社側が「従業員を解雇したい」と考えても、法律上解雇できないとされるケースがあります。
この記事では、法律上解雇ができないケースについて解説していきます。

解雇制限期間

解雇ができない期間

解雇は従業員の生活の安定を失わせるものであるため、不意打ちのような形で行われることがないように、労働基準法では一定の規制が設けられています。それが解雇制限期間です。

以下の解雇制限期間中は労働者に非がある場合でも解雇はできません(後述する「解雇予告」のみをすることは可能です)。

  • ① 労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のため休業する期間
    ※通勤途中に負傷した場合や、私傷病(仕事上ではなく、プライベートで病気にかかること)で休業している場合は含みません
  • ② 産前産後の女性労働者が産休の規程(労働基準法65 条)により休業する期間
    ※労働基準法65 条に規定される産休とは、出産予定日より6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から出産後8週間の休業のことです。
  • ③上記①および②の休業期間後30日間

このように、労働者の生活が脅かされることになるのが明白な状況下での解雇は、労働者保護の観点から、制限が加えられています。

解雇制限期間の適用外

ただし、以下の場合は、上記の解雇制限期間の適用外となります。

  • 病気の治療にかかりながらも、少しは会社に出勤している一部休業の場合
  • 育児休業や、介護休業の場合
    (産休期間が終了し育児休業へ、または業務上の負傷による休業から介護休業へといった具合に休業の事由が変更された場合は、30日経過していなくても、解雇制限期間が解除されます)

また、業務上の傷病で休業していた労働者であっても、有期契約の従業員であり、休業している期間の途中で契約期間が満了するような場合は、労働者を辞めさせても労働基準法違反にはなりません。

解雇制限期間が解除されるケース

解雇制限期間中であっても、以下の場合は労働者を解雇できます。

打切補償を支払う場合

業務上の傷病による療養のために休業している労働者が、療養開始後3年を経過しても傷病がなおらない場合は、会社側がその労働者の平均賃金1,200日分(打切補償)を支払った場合、解雇しても労働基準法には抵触しません。

事業継続不可能な場合

天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となった場合にも解雇制限は解除されます。
ただしこれは「事業場の火災による消失(事業者の故意または重過失によるものを除く)」「震災による工場の倒壊」など、経営者として対策を講じていてもどうしようもなかった状況にある場合を指します。
「経営上の見通しを誤って経営困難に陥った」といった場合は該当しません。
またこの場合は、「解雇制限の解除事由となる事実があるかどうか」という、労働基準監督署長の確認(認定)を受ける必要があります。

解雇予告と解雇予告手当

解雇予告のタイミング

原則、会社側が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません

30日前に予告をしない場合、つまり即日解雇をする場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとされています。解雇予告手当の支払いは、解雇の申渡しと同時に行うべきとされています。

即日解雇が一般的(?)

このように解雇する会社側が、「30日以上前の予告」か「30日分以上の平均賃金の支払い」かを選べるわけですが、実際のところは「30日分以上の平均賃金を支払って即日解雇」というケースがほとんどのようです。

解雇される予定で働いてもらったとしても、その従業員に誠実に勤務してもらうことはなかなか難しいと考えられる上、他の従業員のモチベーション低下などにも繋がる危険性があるので、「30日分以上の平均賃金を支払って即日解雇」とした方が、大抵の場合都合がよいと言えるでしょう。

解雇予告と解雇予告手当は併用可能

解雇予告と解雇予告手当は併用することも可能です。予告日数は、一定日数について解雇予告手当を支払えば、その支払った日数分だけ短縮ができます。
例えば、10日分の平均賃金を支払って、20日前の解雇予告とすることもできます。

解雇予告の計算

解雇の予告においては、解雇日について「〇年〇月〇日の終了をもって解雇する」といった具合に特定しなければなりません。また予告期間の30日間については、解雇予告の翌日より暦日で計算し、その間に休日や休業日があっても延長はありません。

解雇予告の取消しはできる?

解雇予告は原則取り消しできません。
ただし、例外として、労働者の自由な判断による同意があれば取り消すことが可能です。
一方、会社側が解雇予告の取消しをしようとしても、労働者の同意が得られなかった場合は、解雇予告期間の満了をもって解雇となります。

この場合、労働者は自己都合退職ではなく、解雇によって退職したとみなされます。
解雇による退職の方が、自己都合退職よりも失業給付金をもらえる期間が長くなるため、労働者にとっては金銭的にお得になります。

解雇予告の除外

以下のケースでは、解雇予告なしに労働者を解雇できます。

  • ①天災事変その他やむを得ない事情のため、事業の継続が不可能になった場合
  • ②労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合、

ただし、①②両方の場合とも、前述の「解雇制限期間が解除されるケース」と同様、その事実があったことを労働基準監督署長から認定(確認)を受けなければなりません。

参考