ホーソン実験とは何か?ホーソン実験から見る人間関係と生産性、モチベーション効果およびホーソン効果を解説
いつの時代も転職の理由の上位にあるのが、職場の人間関係です。この人間関係こそ、組織におけるモチベーションを上げ、生産性を高める上で重要なファクターです。
それを根拠づけるものとして「ホーソン実験」があることはご存知でしょうか。今回はホーソン実験について解説していきます。
ホーソン実験と人間関係
後に「ホーソン実験」と呼ばれるようになる実験を行ったのは、マネジメント思想に大きな影響を与えたといわれるジョージ・エルトン・メイヨー(1880-1949)です。
メイヨーは1927年に電話機などを製造しているウェスタンエレクトリック社に協力を依頼し、生産性を高める実験を行いました。それがシカゴのホーソン工場で行われたため、この実験は「ホーソン実験」と呼ばれています。
実験は2つの作業グループに分けて行われました。それぞれのグループに対して働く環境やインセンティブの条件を変えることで、生産性がどのように変化するかを見ていくことにしたのです。
ここからはホーソン実験の経過を見ていき、何が生産性に影響を及ぼすのかを考えていきましょう。
実験1:コミュニティによって上がる生産性
メイヨー教授が1つ目のグループに対して行ったことは、作業場の照明を明るくすることでした。
結果として、たしかに生産性は上がりましたが、照明を戻しても、さらには照明を落としても生産性は上がっていたのです。この結果から、当初は「条件の変動そのものが生産性を上げる」という仮説が立てられました。言い換えれば、「何か変化があったら、生産性も変化するだろう」ということです。
この仮説に基づき、メイヨー教授は報酬や休み時間など、その他のインセンティブ要因を変えていきました。
すると、すべての実験において生産性が上がることが確認されたのです。
実験の結果を受けて、ともに実験に関わっていたマサチューセッツ工科大学の生物学教授クレア・ターナーは、生産性が上がった要因として、
- 監督の方法
- 収入
- 実験の物珍しさ
- 実験によって従業員に注がれる関心
をあげました。
実は実験の対象となっていた従業員たちはコミュニティを形成し、自分たちに注がれる関心を楽しみながら、実験への参加意識を高めていたのです。
つまり、実験されていた1つ目のグループはグループの結束を強め、「自分たちのために実験してくれているのだからがんばろう」と思ったのかもしれません。
実験2:生産性が制限されるコミュニティ
1つ目のグループの生産性が高まった本当の要因に気づかないメイヨーは、2つ目のグループに対しても1つ目のグループと同様の実験を行いました。
すると1つ目のグループと違い、あるレベルで生産性が上がらなくなってしまったのです。
観察の結果、以下のことがわかりました。
- 非公式のコミュニティが形成され、各個人の作業量を勝手に設定していた
- コミュニティはマネジメントに対抗して団結し、独自の行動ルールを作っていた
- コミュニティは金銭的インセンティブに無関心であった
つまり、1つ目のグループとは異なり、2つ目のグループは実験に非協力的で、冷ややかな対応を取っていました。
こうしたことから、その職場の生産性は、マネジメントではなく、自然とできあがった独自のコミュニティによって決定されていたと言えるでしょう。
ポイントはマネジャーの在り方
メイヨー教授は、1つ目のグループでは生産性が上がり、2つ目のグループでは生産性が制限された結果から、生産性を上げる鍵は「マネジャー」にあると断定しました。
1つ目のグループのマネジャーは親しみやすい人物で、作業者たちをよく理解しようと努め、会社のシステムや手続きにそれほどこだわりませんでした。
それに比べて2つ目のグループのマネジャーは、会社寄りの画一的な考え方を持っており、従業員とも距離感があったのです。
生産性は、マネジャーが従業員を信頼し、協力的な関係を築き上げることで上がり、ただの監督に終始した態度で臨むと下がることがわかりました。
まとめ
ホーソン実験の結果から、マネジャーは従業員の個人的な問題を理解する、話を聞く、面談するなどの技術を学ぶ必要があることがわかります。
メイヨーはホーソン実験から以下の結論を導き出しました。
- 従業員が自ら働く環境の条件を決めたり、目標を設定したりする自由が大きくなるほど、仕事の満足度は増す
- 互いのやり取りや協力の度合いが高いほど、グループの結束レベルが高くなる
- 仕事の満足度や生産性を左右するのは、物理的な作業の条件よりも、従業員間の協力や価値の実感である
そして、これからのマネジャーは、以下のような人物が求められる、と述べています。
- 打ち解けやすく
- 人を中心に考え
- 配慮がある
つまり、職場のモチベーションを高める上で最も重要なのは、職場の環境や従業員の参画レベルをコントロールできる「マネジャー」であり、「マネジャー」と「従業員」の人間関係こそが生産性を決定づけていると言っても過言ではないのです。
補足:ホーソン効果
今回紹介したホーソン実験の副産物として「ホーソン効果」という言葉が産まれました。ホーソン効果は、何かを測定・観察すること自体が振る舞いに影響を与えるというものです。
これまで見てきたとおり、ホーソン実験の1つ目のグループは観察されていることに好意的であり、その結果生産性を高め、2つ目のグループは逆に批判的で生産性を低下させました。
このように、観察されているという意識に応じて、個人、あるいはグループが行動を変化させることをホーソン効果と今日では呼んでいます。