【Googleから学ぶ】知識の共有を阻む課題と解決法 ~『Googleのソフトウェアエンジニアリング』より~

Googleも悩んだ知識の共有

プロジェクトマネジメントに限らず、知識の共有はチームとして仕事をする上で不可欠です。知識の共有は仕事の属人化を防ぎ、チーム・メンバーの知識やスキルを向上させます。
しかし、知識の共有は常に様々な課題に阻まれます。
今回はGoogleのソフトウェアエンジニアリングのノウハウをまとめた『Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス』の記述から、知識の共有を阻む課題とその解決法について考えていきます[1]竹辺 靖昭 (監修)、Titus Winters (編集)、Tom Manshreck (編集)、Hyrum Wright (編集)、久富木 隆一 (翻訳)『Googleのソフトウェアエンジニアリング … Continue reading

学びを阻む課題

『Googleのソフトウェアエンジニアリング』では、知識の共有を妨げる「学びを阻む課題」として、以下の点を取り上げています[2]『Googleのソフトウェアエンジニアリング』53~55頁。

  • 心理的安全性の欠如
  • 情報の孤島群
  • 情報の断片化
  • 情報の重複
  • 情報のスキュー(skew)
  • 単一障害点(single point of failure/SPOF)
  • 全か無かの専門知識
  • 猿真似
  • 幽霊の出る墓場

これらの課題は、大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。

  • 心理的安全性の欠如
  • 情報の分散
  • 不確か(不十分)な知識

次はこの3つのカテゴリーに沿って、課題の解決法を考えていきましょう。

課題の解決策

心理的安全性の欠如

心理的安全性の欠如と言うのは、文字通り「心理的安全性」が無いという課題です。
心理的安全性とは、組織の仲間が互いに信頼・尊敬し合い、率直に話ができるなど、対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる環境を意味しています[3]エイミー・C・エドモンドソン … Continue reading

人が何かを学ぶ時に重要なのは、「自分はまだまだ未熟である」ということを自覚し、学ぶ必要性を認識することです。
心理的安全性が確保されている職場であれば、この学びに対する認識はすぐに得られます。
しかし、「知らないことを上司に知られると怒られる」「スキルアップの必要性を話すと、給料を減らされる」という可能性がある職場であれば、周囲に学習の必要性があることを伝えづらくなります。
こうした職場が心理的安全性が欠如している職場であり、このような状況でスタッフが学びに前向きになることはできません。
『Googleのソフトウェアエンジニアリング』でも「心理的安全性は、学びの環境を促進する上で決定的に重要である」と書かれています。

職場の心理的安全性を高めるためには、失敗を受け入れる文化を構築していきます。

情報の分散

学びを阻む課題である「情報の孤島群」「情報の断片化」「情報の重複」「情報のスキュー(skew)」「単一障害点(single point of failure/SPOF)」「全か無かの専門知識」はいずれも情報が分散され、共有されていないことによるものです。

「情報の孤島群」は組織や部署でコミュニケーションや共有ツールを使わなかったが故に発生する知識の断片化を指します。そして、この情報の孤島群がより大きな全体像の不完全版を持つ状態を「情報の断片化」、各孤島が自前の方法を再発明することを「情報の重複」「情報のスキュー(skew)」と呼びます。

情報の孤島群の発生と、それを発展させた様々な課題の原因とも言えるのが「単一障害点(single point of failure/SPOF)」であり、これは決定的な情報が1人の人物からのみ得られる場合に生じうるボトルネックを意味します。
つまり、ある特定の人物しか知らない状態や、できない状態が単一障害点です。

単一障害点は「情報を独占してやろう」という悪意からも発生しますが、「できない人のために自分がやってやろう」という善意からも発生します。その結果、できる人とできない人が分かれていきますが、これを「全か無かの専門知識」と呼びます。

既に述べた通り、これらの課題は情報が分散化されているために発生しているため、情報を共有することにより解消可能です。
組織内で資料やデータを共有したり、メールや社内SNSで情報交換したりすることで、情報の孤島群や単一障害点の発生を防ぐことができます。

不確か(不十分)な知識

「猿真似」「幽霊の出る墓場」は、ともに不確かであったり、不十分な知識により発生する課題です。

猿真似はその名の通り、物事の仕組みを考えず、見たままを真似することです。プログラミングで言えば、すでに動いているコードを見て、その仕組みを考えず、コピー&ペーストで使うようなことです。

一方、幽霊の出る墓場とは、何かが起こることを恐れて行動ができない場所のことを指します。たとえば「昔に書いたコードだから、下手に触るとシステム全体にバグがでるのではないか」と考え、なかなか修正されないコードが幽霊の出る墓場です。

猿真似も幽霊の出る墓場も、スタッフの知識不足から発生します。ただ単に情報を共有するだけでなく、深くその内容を理解できるようにする教育の場が必要です。

1竹辺 靖昭 (監修)、Titus Winters (編集)、Tom Manshreck (編集)、Hyrum Wright (編集)、久富木 隆一 (翻訳)『Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス』オライリージャパン、2021年。以下『Googleのソフトウェアエンジニアリング』と略記。
2『Googleのソフトウェアエンジニアリング』53~55頁。
3エイミー・C・エドモンドソン (著)、野津智子(訳)『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』英治出版、2021年、30頁。