意思決定や決断が苦手な人のための「ノイズキャンセリング仕事術」「朝の三択法」を解説 ~横山信弘『絶対達成する決断力のつけ方』より~

2023年5月16日

決断は避けられない

私たちは日々、選択と決断をしながら過ごしています。中には無意識に行っているものもありますが、ことビジネスにおいては、意思決定や決断は非常に重要な意味を持ちます。

今回は、企業の現場で目標を絶対達成させるべく、12年間で1000件以上のセミナーや講演を行ってきたコンサルタントの横山信弘氏の著書『絶対達成する決断力のつけ方』より、決断力がない人でも決断できる方法について解説します。
決断するのが苦手だと感じている人でも、これを実践すれば「良い決断」ができるようになります。

今回の内容は動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。

ノイズキャンセリング仕事術

意思決定や決断といったなにかを選択する局面では、その物事に集中する必要があります。
しかし、「重要でないことに気を取られて、大事な決断ができない」といったことは、思っている以上に多くあります。
横山氏の考案した「ノイズキャンセリング仕事術」は、本来するべき仕事に集中するための方法です。

ノイズキャンセリングとは、ノイズを打ち消すという意味で、ヘッドホンやイヤホンでよく使われている技術です。電車など騒音のある場所でも周囲の音を気にせず、音楽を楽しむことができます。これを応用したのが、ノイズキャンセリング仕事術です。
つまり、誘惑(ノイズ)に邪魔されず、ノイズを打ち消して仕事に集中する方法です。以下の具体的な方法を実践するとノイズが除去され、必要な物事に集中できるので、自ずと決断力がつきます。

アクセサビリティーをあえて悪くする

スマホを肌身離さず持っている方は多いと思います。そばにあると、つい手に取ってSNSを見たり、動画を見たりしてしまいがちです。そんな時、時間があっという間に過ぎて、気づいたら1時間、2時間が経っていたということも珍しくありません。これは、スマホというアクセスのしやすい環境がそうさせています。そのため、あえてアクセスをしにくく、開くのが不便で面倒だと思わせましょう。

SNSからログアウトする

スマホからTwitterやInstagramなどのアプリを開くと、常にログインされていて簡単にアクセスできます。便利な機能ではあるのですが、SNSばかりに時間を使いすぎていると感じている方は、簡単に開けないようにログアウトしてしまいましょう。ログアウトしてしまえば、次に開こうとするとIDやパスワードを入力しなくてはなりません。面倒になるので、癖でアプリを開いてしまう人にとって抑止力になります。

ブックマークを解除

パソコンでもブックマークしてあると、ワンクリックでアクセスできるため、ついYouTubeなどを見てしまうことがあります。これを防ぐために、よく見るページをブックマークから解除してしまいましょう。これも先ほどのSNSからログアウトするのと同じで抑止力となり、本来すべき事柄を思い出すことができます。

通知を切る

何をしている時でも、通知が来ればスマホを開いてしまうという状態では、集中して仕事をしていても、家族とご飯を食べていても、落ち着きません。今している物事に集中するために、絶対に必要な通知以外は、切ってしまいましょう。

バッテリーが切れたら終わりという状況にする

自分は集中力がないと感じている人に、特におすすめの方法です。たとえば、休日にパソコンを持って外で仕事をしようとしても、本当に必要な仕事を先送りにしてしまうのであれば、意味がありません。強制的にバッテリーがもつ時間内しか使えないようにすれば、無駄な使い方はせず、短時間で集中してやるべきことが終わります。いつもバッテリーやアダプターを持ち歩き、ネットサーフィンで時間が潰れてしまう人は試してみてください。

リマインダーを設定する

パソコンやスマホ、タブレットを連携できるアプリを入れて、やるべきタスクを設定します。こうしておくと、やるべきことを先送りにしていると、パソコンを開いても、スマホを開いてもタスクが表示され、「早くやってしまわなければ」という気持ちになります。これはいわば逆ノイズで、ネットサーフィンをしようと思ってもタスクが表示されるので、先にタスクを片づけてしまうことができます。必要なら、表示間隔を毎日、毎週といった設定にして、タスクを意識させるようにしましょう。

決断力を上げる朝の三択法

ここまでは、決断するのに邪魔なノイズを除去する方法を解説してきました。それでは次に、具体的な決断の方法を紹介します。

目標を達成するための決断をするのが、この「朝の三択」の目的です。この段階では、目標がすでにある状態で、それを達成するためのプランを選択します。
この三択法は、選好の逆転現象を利用しています。選好の逆転現象とは、状況によって、人の好みや優先順位が変わってしまう現象のことを指します。心理的な現象を巧みに利用しているからこそ「良い決断」ができます。

では、具体的な方法を見ていきましょう。

期限と目標値の設定

期限は、先延ばしにならないように「半年以内」などではなく、「〇月〇日」と具体的に設定しましょう。

3種類の選択肢を用意する

  • ノープラン・・・現状維持
  • チャレンジプラン・・・がんばればできるかもしれないプラン
  • ビッグプラン・・・理想よりもさらに上の、実現が難しいプラン

寝る前に「ビッグプラン」に焦点を合わせる

アズ・イフ・フレームという質問のテクニックを使って、「ビッグプラン」に焦点を合わせます。「ビッグプランを実際に行ったら、自分はどんな風になるのか」を、できるだけリアルに思い描きます。このとき、リアルに想像するためにパンフレットを取り寄せたり、具体的な計画を書き出したりして、五感を使ったイメージができるようにしてください。

翌日の朝、三択をする

前夜にビッグプランに焦点を合わせたら、実際に三択をするのは「翌日の朝」です。具体的な手順を見ていきましょう。

三択の手順

1.キッチンタイマーで2分をセット
このとき、スマホなどの外部接続可能な機器で時間を計らないようにしましょう。ノイズが入ってきてしまう可能性があります。

2.A4の紙に、「期限と目標値」「選択肢3つ」を書く
小さな紙に小さく書くのではなく、大きめの紙に書きましょう。

3.ダブルフレーミングを行う
ダブルフレーミングは、そのプランを選択したときに上手くいく確率、上手くいかない確率を数値で表わします。成功の可能性と失敗の可能性の両面から考えるのが、ダブルフレーミングです。これをすることで直感ではなく、冷静に自分の頭で考えて判断できます。
この「成功率〇%」というのは、自分の感覚で書いて構いません。選択肢の中で、相対的にどれが成功しそうで、どれが失敗しそうなのかがわかれば良いと思ってください。実際にやってみると、自分でも思わぬ結果となり、その後の選択に影響を与えます。

4.2分間の中で決断したことを紙に書く
ダブルフレーミングの後に、最後の決断を行います。ここまですると、先に出していた3つのプラン以外の選択肢が、タイムリミットの間際に突然現れ、それを選ぶ決断をする場合もあります。そうやって決めたことを紙に書いて、朝の三択は完了です。

この方法で決断すると、不思議と爽快な気分になると言います。始めは会社の指示で、「やらなければいけない」と憂鬱に思っていたことだったのに、朝の三択をして前向きな気持ちになって取り組むことができ、目標を達成できた人もいます。
これは本当に不思議な変化ですが、一度騙されたと思ってやってみてください。

まとめ

決断することは難しく、ときにエネルギーを使う行為です。決断を先延ばしにしてしまうことは、普段の生活の中でもよくあります。しかし、ノイズを除去して「朝の三択」を使って決めることで、目標達成に向けて、前向きな気持ちで前進していくことができます。「自分は決断力がない」と諦めず、行動を起こしてみてください。

参考

  • 横山信弘 『絶対達成する決断力のつけ方――意思決定が速くなる「ノイズキャンセリング仕事術」』ダイヤモンド社、2013年