プロジェクトマネジャー(プロマネ)やWebディレクターにプログラミングスキルは必要か?

2020年5月28日

プロジェクトマネジャーやディレクターにはプログラミングスキルは必要か?

就職をして新しくプロジェクトマネジャー(以下、プロマネと略記)やWebディレクターになる方や、それらのポストへの転職を考えられている方から「(プロマネやディレクターって)プログラミングができないといけないんですよね?」と質問されることがよくあります。
今回はプロマネやWebディレクターに対するよくある質問について考えていきたいと思います。

プロマネ・ディレクターにプログラミングスキルは必須ではない

結論からいいますと、プロマネや、Webディレクターに、プログラミングスキルは必須ではありません
もちろん、プログラミングスキルがあると、企画や提案内容の幅が広がったり、作業をお願いするプログラマーとよりスムーズにやり取りできるようになったりするため、プログラミングができるに越したことはありません。
しかし、プログラミングスキルがなくても、プロジェクトの進行管理を行うことは充分可能ですし、制作を指揮することはできます。
むしろ、プログラミングができるかどうかよりも、もっと大きくITシステムやWebシステムの仕組みを理解しておくことの方が重要です。

ITシステムやWebサイトの仕組みを押さえておくことの方が重要

では、プロマネやWebディレクターが知るべきITシステムやWebサイトの仕組みとは何なのでしょうか?
例えば、プロジェクトのミーティング中に「サーバー」や「ブラウザ」、「データベース」という言葉がでてきたら、どのようなものか、何に使われているかイメージはつくでしょうか?
サーバーとはITシステムやWebサイトを動かすためのコンピュータのことです[1]サーバ – Wikipedia。例えば、AmazonのようなECサイトで商品ページを見ようとしたり、購入しようとすると、Webサイト上でページが表示されたり、決済されたりするのは、サーバーがユーザーの要求に対して、レスポンスを返す役割を果たしているからです。
ブラウザは、サーバーからのレスポンスを実際にユーザーが理解できるような形に変換する役割を果たすものです。今、このWebサイトを見るために、「Edge」「Google Chrome」「Safari」などを使われているかと思いますが、これらのツールがブラウザです。Webサイトももともとはhtmlという言語で書かれたコードに過ぎないのですが、これらのブラウザを介することによって、普段私達が目にしているデザインされたWebページが見られる仕組みになっています。
データベースとは、データを格納する役割を果たすものです。難しく考えず、Microsoft社のExcelのようなものを想像してもらっても大過ないかと思います。Webサービスに会員登録することや、自分のマイページを表示させることは、Excelに似たデータベースに情報が蓄積されているからこそ可能になっています。
浅くでもいいので、こうしたITシステムやWebサイトの仕組みに関する知識がないと、プロジェクトのミーティングなどでの会話についていけませんし、クライアントの要望を誤解してしまう可能性もでてきてしまいます。それにより、仕様書や要件定義書を作成することができなくなり、結果としてプロジェクトの失敗を招いてしまうことにもなりかねません。
円滑なプロジェクト進行、制作進行のためにも特定のプログラミング言語を習得するというよりは、広く「ITシステムってこのようにして動いている」「Webサイトってこうして表示されている」という知識をつけておいた方がよいでしょう。

ITシステム・Webサイトの知識のつけ方

業務で学ぶ(OJT)

ここからはITシステムやWebサイトの知識のつけ方をいくつかご紹介していきます。
環境にもよりますが、ITシステムやWebサイトの知識をつける一番の方法は、周囲の先輩スタッフやプログラマーの方にわからないことを質問していくことです。
例えば、プロジェクトのミーティングや、プログラマーさんとの会話の中で、わからない単語や用語が出てきた場合は、それをメモしておき、後で検索してみます。
それでもわからないことがあれば、先輩スタッフやプログラマーさんに声をかけ、教えを乞うのが一番でしょう。

本から学ぶ(おすすめ本の紹介)

知識をつけるには、やはり本を読むのが一番です。ここでITシステムやWebについてざっくり学べるおすすめの本を3冊ご紹介いたします。

退屈なことはPythonにやらせよう

1冊目はオライリー社から出版されている『退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング』です。
「ざっくり学べるおすすめの本」といいながら、がっつり600ページを超える本ですが、「ITシステムを使って何ができるか」ということが、いろいろと書かれています。
どんなに大規模なITシステムであっても、多くの場合はこの本で紹介されている機能の組み合わせに過ぎません。
「PDFのテキストを読み込む」「エクセルに書き込む」など、ITシステムが何をできるのかを知っていれば、ITシステムの開発プロジェクトをより円滑に進行することができるでしょう。

イラスト図解式 この一冊で全部わかるWeb技術の基本

2冊目の本は、『イラスト図解式 この一冊で全部わかるWeb技術の基本』です。
Webやインターネットに関する本はさまざま出版されているので、正直なところ好みということもありますが、最初の1冊として図解が多い方がよいと考え、この本を選びました。
「Webサイト」というと、目に見えている画面部分しか気にしないのですが、その裏にはHTML・CSSなどのコードだけでなく、サーバーやドメイン、データベースなどが隠れていることが理解できれば本書を読んだ意味があったと言えるでしょう。

教養としてのプログラミング的思考

ラストの3冊目は『教養としてのプログラミング的思考』です。
プログラミング言語にはJavaやPython、PHPなどさまざまなものがありますが、その考え方・書き方というのはある程度似ています。
プログラミングができないとしても、プログラミング特有の考え方や書き方の流れを理解しておかなければ、プログラミングの設計図である各種設計書を書いても、プログラマーさんを惑わせてしまうしろものになってしまいます。
この本はクイズ形式でプログラミング的思考を学べるので、新人のプロマネやWebディレクターにおすすめしています。

資格を取得する

資格勉強の中でITシステムやWebサイトに関する知識をつけるのもおすすめです。
ITシステムに関する資格は、IPAが窓口となっている「情報処理技術者試験」が有名です。「情報処理技術者試験」はいくつかの資格試験の総称であり、その中の「ITパスポート」「基本情報技術者試験」という言葉を耳にした方は多いかと思います。
情報処理技術者試験はWebに関することも含め、ITシステムに関する知識をまんべんなく問うてくるので、プロマネやWebディレクターのような仕事にはうってつけです。
また、国家資格ですので、キャリアに箔がつくことも間違いなしです。

WebサイトやWebシステムに限定した資格で、情報処理技術者試験に匹敵するようなものはなかなかないですが、民間資格の中ではNTTコミュニケーションズが提供している「インターネット検定(旧ドットコムマスター)」はそれなりの人気を博しています。

身近なものから調べてみる

ある程度知識がついてきたら、今使っている業務支援システムやWebサービスが、どのような仕組みで機能しているのかを調べてみると面白いと思います。身近なITシステムやWebサービスをいくつか選び、仕組みや構成をひとつずつ図に整理してみたり、どのような仕組みになっているのか検索してみると、同様のITシステムやWebサービスの開発を依頼された時に必要なものの見当をつけることができます。

さいごに

今回はプロマネやWebディレクターにプログラミングスキルは必要なのかを考えていきました。
プログラミングスキルはあるに越したことはないものの、プロマネやWebディレクターに必須であるとは言い難いものです。
プロマネやWebディレクターを新しく志望しているのであれば、プログラミングを学ぶよりは、サーバーやデータベースなど、ITシステムやWebサイトの仕組みから学ぶことをおすすめします。
Webサービスやアプリが、どのような仕組みで機能しているか、自分で予測できるようになれば、仕様書や要件定義書をよりスムーズに作成できるようになりますので、まずは広く知識をつけていくことから始めていきましょう。