TOF方式センサとは何か?そのメリットと利用用途を解説
TOF方式センサの概要

TOF(Time of Flight)とは、光源から放射された光が対象物で反射して、センサ(光検出器)に返ってくるまでの時間を計測することで対象物との距離を計測する方法をいいます。
“Time of Flight"を直訳すると「飛行時間」になりますが、その名の通り、光の飛行時間で距離を計測していきます。
TOFは空気中の光の速さ(30万㎞/秒)が常に一定である点に注目し、光の往復時間で距離を計測していきます。
例えば、センサに光源が返ってくるまでの時間が10ナノ秒(以下、n秒)であった場合は、片道分の時間5n秒と光の速度30万㎞/秒をかけて距離計測します。計算式は、下記の式となり、センサと対象物の距離は1.5mということになります。
- 5n(0.000000005)秒×30万㎞=1.5m
従来のTOF方式センサは外乱光に弱いという特徴を持っていました。
外乱光とは、周囲の明かりのことをいいます。例えば、工場などの照明機器以外によって発生する光の変化が距離測定に影響してしまうのです。
しかし、外乱光に強いTOF方式センサも登場してきており、このような理由によって、防犯カメラだけではなく、自動車や工場などTOF方式センサの利用用途は広がりを見せています。
TOF方式センサのメリット
距離計測には、TOF方式センサの他にも、BGS方式センサがあります。BGS方式とは、受光素子上の受光位置でセンサと対象物の距離を検出する方法です。長距離になるほど、受光位置の差異が小さくなるため、長距離の計測精度が低下してしまいます。
しかし、TOFは、常に一定の光速の時間差を距離に換算するため、近距離でも長距離でも検出精度は一定となります。そのため、精度が高い距離計測が行えるのです。また、暗い環境でも問題なく距離計測できます。
また、センサ(光検出器)と光源で構成されており、単純な装置構成で導入しやすいというメリットもあります。
TOF方式センサの利用用途
TOF方式センサの利用用途
応用例 | 目的 | その他の要求 |
---|---|---|
自動車のモニター | 衝突防止・接触防止 | 高信頼性 |
スマートエアバック | 子供の識別 | 小型 |
防犯カメラ | 実寸法の計測・覗き見防止 | 屋外設置 |
自動ドア | 子供の保護 | 自動検出 |
店舗 | 店舗内の人数カウント | 自動計数 |
ゲーム機器 | 非接触操作 | 高信頼性・安価 |
自動販売機・案内板 | ジェスチャー操作 | 安価 |
ロボット | 自動制御 | 小型光速 |
工場 | 自動検品 | 移動中計測 |
TOF方式センサの活躍が期待される分野は、自動車からロボットまで幅広いです。
他の計測方法では、長距離計測で精度が低下したり、暗い場所で利用できなかったり問題点があるため、計測距離が長くても精度が常に一定に保てるTOF方式センサが注目を集めています。
TOF方式センサの利用用途をご紹介しましたが、自動車への応用は、光源を照射して走行しても危険がないことが確認されるまでは実用できません。信頼性規格や法律的な問題もあるため、本格的な自動車応用には時間がかかるといわれています。
しかし、監視カメラにTOF方式センサを活用すると、対象物の実寸法が簡単に計算できるとして大きな注目を集めました。
近年では、Microsoft社がKinectというジェスチャーゲームを販売したことにより、TOF方式センサが注目を集めています。
Microsoft社のKinectのようにゲームにTOF方式センサを採用する場合は、安価な製品である必要があります。
また、工場の品質識別では移動中の計測が行えるTOF方式センサである必要があります。そのため、各メーカーでさまざまなオリジナルセンサの開発が行われています。