サーベイ・フィードバックとは何か?導入方法と失敗例を解説

2023年2月14日

組織開発に大切なのは人材との関係性

組織開発とは組織を活性化させる手段です。
組織開発が日本に導入されたのは1950年代で、自分や他者の感情を客観的に理解する「感受性訓練」などが行われました。
また、組織開発の例として、「QCサークル」という品質管理活動を自主的に行うグループが生まれ、互いに啓発し合う関係性が作られました。
このように、人同士の関係性に働きかけるのが組織開発です。
組織開発と言うと、会社や事業所のような大規模な組織を想像しますが、チームやグループなどの小規模集団にも当てはめることができます。

今回は、様々な組織開発の手段の中から「サーベイ・フィードバック」について、『図解 組織開発入門 組織づくりの基礎をイチから学びたい人のための「理論と実践」100のツボ』を参考に解説します[1]坪谷邦生『図解 組織開発入門 … Continue reading

サーベイ・フィードバックとは

サーベイとは、調査のことです。
組織の課題や従業員のやる気などを調査する目的で行うサーベイを、「従業員サーベイ」、「エンゲージメント・サーベイ」などと呼びます。
これは働きやすさや賃金などの満足度を測る従業員調査とは違うものです。
調査項目としては、働きがいや仕事へのモチベーション、強みが活かされているかなどが挙げられます。

サービス・フィードバックの調査項目の例
  • 働きがい
  • 仕事へのモチベーション
  • 強みが活かされているか

つまり、労働環境の改善ではなく、組織への愛着心を高め組織としての能力を向上させることが目的です。
この調査結果を従業員にフィードバックすることで、一緒に問題解決や対応策を考えることができます。

サーベイ・フィードバックのメリット

1つ目のメリットは離職防止です。
従業員のやる気や組織への愛着心を可視化できるので、離職される前に対策を講じることができます。

2つ目は声なき声を拾うことです。
組織では、言いたいことがあっても言えない空気が流れていることがよくあります。
そういった声や意見を聞き取ることができるのが、サーベイ・フィードバックです。

3つ目は、経営層と同じ景色を見て進めることです。
組織の改善について、従業員と経営層が同じ視線で見ることができます。
また、そのプロセスを一緒に進めることで組織に対する信頼や愛着心を高めることができます。

サーベイ・フィードバックの導入方法

ここからは、サーベイ・フィードバックの導入方法を解説していきます。

サーベイを設計する

まず、調査を実施する目的を考えます。
離職の防止、経営理念の浸透、生産性の向上など、目的によってスケジュールや調査項目も変わります。
特にスケジュールは重要です。
頻度が高すぎれば現場の手間となり、フィードバックまでの期間が長いとその効果も薄れてしまいます。

調査項目を設計する

目的に合わせた調査項目としては、たとえば以下のものが挙げられます。

調査項目の例
  • 離職防止やモチベーション向上:仕事に対する誇りや幸福度、人材育成の満足度
  • 経営理念・ビジョン・戦略:明確か、賛同できるか、顧客や現場の視点で見られているか
  • リーダー・経営層:影響力や評価、指示が明確か

このように、サーベイ・フィードバックの調査項目は目的に合わせて設計します。
要点を絞って項目数を少なくし、10分以内で回答できる調査が理想です。

調査結果を提示する

組織で共有するためには、シンプルで分かりやすい結果が重要です。
また、結果は平均値や分布で表し、優先順位を示す方法がおすすめです。
偏差値や点数は明確ですが、フィードバック時に対話が生まれにくいというデメリットがあります。

調査結果をフィードバックする

フィードバックには、建設的な対話を生むためのグランドルールが必要です。
「批判禁止」、「一度受け入れる」、「犯人探しをしない」などのルールを設定し、安心して話せる場にします。

フィードバックの際は、データを示し、メンバーからそのデータがどのように見えるか考えや意見を交換します。
データを示す際にも調査者から課題を提示するのではなく、データと優先順位などのきっかけを示すことで対話が生まれやすくなります。
対話の中で組織の課題を共有し、その解決方法を一緒に考えます。
具体的なアクションプラン、または個人の行動目標まで落とし込むことができればフィードバックとしては成功です。

難しければサーベイ・サービスを利用する

設計や調査項目の作成が難しい場合は、既存のサーベイ・サービスを利用するのも1つの手です。
サービスを選ぶ基準は、目的に沿った調査項目となっているかどうかです。
さらに実績が多いサービスであればデータが集積されているので、他組織と比較して自組織を評価することができます。

サーベイ・フィードバックの失敗例

『図解 組織開発入門』では失敗例として4つのパターンが挙げられています。

効果を期待しすぎる

調査を実施すれば課題と解決方法が自動的に浮かび上がると考えるのは過大評価です。
調査の目的はあくまでデータとして可視化することであり、課題や解決方法を見出すのは組織の人間の役割です。

結果を放置する

調査のデータを得て満足し、メンバーに共有せずに経営層に報告して終了する例です。
調査に協力したメンバーからすれば、逆に不信感を抱いてしまう可能性もあります。

データを都合よく解釈する

データに対し理由を付けて都合よく解釈する例です。
1人で分析すると偏りが出るので、公平に解釈するために複数人での分析やメンバーとの対話を行うことがおすすめです。

数字に踊らされる

データの数値だけに注目し、結果の数字を変えるためだけの場当たり的な対策をしてしまう例です。
データから本質的な課題を分析しなければ、本当の解決にはなりません。
ひどい場合は他社の数値と競争するようになり、メンバーに対して「いい結果となるような回答をしろ」と指示を出すこともあります。
調査の結果をよくするために都合の良い回答を強要しては本末転倒です。

1坪谷邦生『図解 組織開発入門 組織づくりの基礎をイチから学びたい人のための「理論と実践」100のツボ』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2022年。以下『図解 組織開発入門』と略記。