小規模事業者持続化補助金のわからないことを聞いてみた ~経営計画・評価のポイント・注意点~
小規模事業者持続化補助金の魅力
個人事業主として開業すると「小規模事業者持続化補助金」の名前をよく耳にするようになります。
2022年5月30日現在の小規模事業者持続化補助金の概要は以下のとおりです。
小規模事業者および一定要件を満たす特定非営利活動法人(以下「小規模事業者等」といいます。)が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、小規模事業者等が取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします。
小規模事業者持続化補助金(一般型)
このように小規模事業者持続化補助金は規模の小さな事業者が経営課題を解決し、事業を持続させるために使える補助金です。
他の補助金との大きな違いは、新規製品・サービスに限られるものの、補助金を販路拡大に使用できることです。
たとえば「事業再構築補助金」はその名のとおり、傾いた事業を立て直すために使用されます。補助金の多くはこの事業再構築補助金のように、経営上のネガティブな状況を改善するためのものです。
しかし、小規模事業者持続化補助金は「新サービスのためのチラシを作成したい」というような販路拡大のための費用も補助の対象に入っています。
このように魅力的な小規模事業者持続化補助金ですが、申請したからといって必ず採択されるわけではありません。書式に則り、補助が必要だと判断される申請書を提出しなければなりません。
今回は商工会の職員からのアドバイスをもとに、小規模事業者持続化補助金の申請をする上でのポイントを紹介していきます。
まずはWebサイトをチェックする
小規模事業者持続化補助金の申請を考えたら、まずはWebサイトをチェックすることをおすすめします。
Webサイトには申請書だけでなく、ガイドラインや記入例まで公開されているので、これらの情報をもとに申請書類をまとめていきます。
経営計画について
経営計画はどの程度書くものなのか?
小規模事業者持続化補助金の申請の中でも経営計画の作成は難所の1つです。用紙には「<経営計画>及び<補助事業計画>(Ⅱ.経費明細表、Ⅲ.資金調達方法を除く)は最大8枚程度までとしてください。」と注意書きがされていますが、実際にどの程度の文章量で書くものなのでしょうか。
経営計画は最大枚数である8枚書くことが推奨されています。
なぜなら小規模事業者持続化補助金の申請書はほとんどが事務手続き的な書類で、申請者の事業の内容がわかるのはこの経営計画しかないからです。
そのため、内容が薄い経営計画であると、なかなか評価されません。審査員が事業内容を評価できるように、経営計画は最大枚数の8枚書くことをおすすめします。
ポイントはガイドブックに明記されている
経営計画を書く上でのポイントはWebサイト上で公開されているガイドブックにも記載されています。
その内容は以下のとおりです[1]R1補正・R3補正小規模事業者持続化補助金〈一般型〉ガイドブック。
- 自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
- 経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
- 経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
- 補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
- 補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
- 補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
- 補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
- 補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
- 事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
経営計画の参考
経営計画を8枚も書くのは大変です。この経営計画を書く上で参考になるのが、ネット上で公開されている記載例です。
たとえば2022年5月30日現在では、Webサイトに珈琲店、カラオケ店、旅行業、割烹料理店、宿泊業、板金加工の記載例が入手できます。記載例の業種は異なっていますが、内容の構成や論理展開はほとんど同じです。
この記載例を参考に、自身の経営計画の執筆を進めていくとよいでしょう。
具体的に数字で表す
経営計画を書く上で記載例から見習わなければならないことは、計画を具体的な数字で示すことです。たとえば「広告を出せばもっと売上が上がる」というような感覚的な表現ではなく、「○○円の売上を達成するためには、○○人の新規顧客が必要である。その新規顧客を獲得するために○○円分のWeb広告を出す」というように数字で計画を語ることが大切です。
申請書の審査員はこうした情報をもとに経営計画が実現できそうかどうかを判断します。
「経営方針・目標と今後のプラン」は何を書けばよいのか
経営計画の中には「経営方針・目標と今後のプラン」という項目があります。この項目には何を書けば良いのでしょうか。
この項目には、今の事業を続けていくことでどのような社会的な意義があるのかを記載します。
たとえば「日本の課題であるDXを進めていきたい」「地域交流の拠点になりたい」など、この事業を補助することで社会がどのようによくなるのかを書いていきます。
商工会・商工会議所の職員に相談する
経営計画は小規模事業者持続化補助金の中でも重要な位置を占めていますが、この他にも注意すべき点があります。経営計画に気を取られ、それ以外の申請書類に不備があってはなりません。
また、一般的には問題ない記述に見えても、申請書の記述としては間違いであるということもあるかもしれません。その結果、書類不備となってしまうことがないように、申請書類は商工会・商工会議所の担当職員と十分に相談し、作成する必要があります。
もうすでに始めてしまった事業は補助されない?
小規模事業者持続化補助金では、これから始める事業であれば補助されますが、もうすでに始めてしまっている事業は補助の対象になりません。
「せっかく申請書類をまとめたのに補助の対象ではなかった」ということがないように、補助の対象も確認しておきましょう。