メタバースとは何か?話題のキーワードをわかりやすく解説

2021年12月13日

メタバースの概要

メタバースのイメージ1

メタバースとは「仮想空間」を指す言葉であり、それを提供するサービスの固有名詞であり、そのような世界を目指すコンセプトでもあるのです。
「メタバース」という言葉そのものは1990年代から存在していましたが、IT技術の進化が著しい昨今、より具体的な意味を持って扱われています。
それと同時に、IT業界ではまだ発展途上の技術・概念であるため、意味や言葉の指す範囲が固定化されていない側面もあります。

メタバースの由来は、英語の「meta(超、超越)」と「universe(宇宙)」を合体させたものです。
最初にメタバースという言葉が登場したのは、1992年に発表された小説「スノウ・クラッシュ」の中です。同書では「人々が経済活動を行う3DCG仮想空間」をメタバースと呼びました。
スノウ・クラッシュ以前にもメタバース的な概念は存在しましたが、スノウ・クラッシュの登場以降はそういった仮想空間を意味する概念として扱われるようになりました。

小説から生まれた「メタバース」は、「インターネットによって実現を目指す社会の1つ」というコンセプトとしても捉えられるようになりました。

「仮想空間」を指すメタバース

仮想空間には様々な種類がありますが、「メタバース」が意味するのは「3DCGによってオンライン世界に構築された空間」となります。
いわゆる対戦型やMMORPGと呼ばれるジャンルのオンラインゲームに似ていますが、メタバースはさらに「利用者が仮想空間に参入する」「利用者が経済活動を行う」という要素も含んでいます。

利用者が「画面の中の世界に参入する」

利用者はネットワークを介し、アバターを用いてメタバースの空間に参加します。
現存のオンラインゲームと大きく異なるのは、VRなどの技術を用いて、ユーザーが「画面の中の世界そのもの」に参入する点です。

オンラインゲームの多くはモニター画面を「見る」ことで仮想空間に参加します。
一方、メタバースはすべてのユーザーが「仮想世界に入る」ことを前提としています。この点は現存の仮想空間とメタバースの最も明確な違いと言えるでしょう。

利用者が経済活動を行う

さらにメタバースの世界では、作品を制作したり、イベントを行ったり、時には仕事をすることで、仮想通貨の取引が可能です。
これらの通貨は現実のお金に換金できます。メタバースが社会に浸透した場合、メタバース上の仕事のみで生活していくスタイルも実現できるかもしれません。

このように「参入できる」「経済活動を行える」メタバースは、「第2の現実」として捉えられることもあります。

「サービス」を指すメタバース

上記で解説したメタバースの仮想空間を「サービス」として扱うこともあります。
「ユーザーが登録し、活用するサービス」の名称としてメタバースを扱うということです。

現在メタバースが注目されている理由

2021年11月、元Facebook社が社名を「Meta」に変更し、メタバースの事業に年間1兆円の投資を行うと発表しました。これが最近メタバースという言葉が大きく注目されるようになった理由の1つです。
Meta社は今後10年間、収益を生み出さずともメタバースに対する投資を続けると発表しています。
すなわち少なくともこれから10年間は、メタバースの現実化・実用化を目指す開発の下地が整ったということです。

海外ではすでに「Decentraland(ディセントラランド)」や「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」などの仮想通貨を用いるサービスが拡大しています。これらのサービス内の土地「デジタル不動産」の活動も活発で、仮想の土地が200万ドル以上で売却された例もあります。
このような背景を受け、アメリカの仮想通貨の投資信託を扱うグレイスケール社は、「メタバースは年間1兆ドル以上の収益機会を期待できる」と発表しました。

そして2021年12月、日本の暗号資産交換業者4社が「日本メタバース協会」を設立すると発表しました。
協会は「日本がメタバース先進国になる」ことを目標として掲げ、国内外のメタバースの情報を収集し、会員である企業や個人に発信していくと発表しています。
このように、日本でも着実にメタバースの市場づくりが始まっています。

メタバースのメリット

メタバースのイメージ2

メタバースを利用できるようになった場合、一個人のユーザーにも、ビジネスを行う企業にもメリットがあります。

ユーザーとしてのメリット

新しい体験ができる

仮想空間で人と交流することは、ほとんどの人が初めての体験となるでしょう。
CGの世界では非現実的な出来事も再現可能です。メタバースに参加することで、ユーザーは今までになかった体験を得ることができます。

直接対面せず、世界中の人とコミュニケーションが取れる

メタバースはインターネット上の世界であるため、人と直接対面する必要がありません。
とくに2020年から2021年にかけては、日本でも「外出する」「人に会う」ことに大きな制限が設けられた時期でした。
直接対面せずに交流できるメタバースは、このような環境において重要なコミュニケーションツールに成り得るでしょう。

自由な発想で創作活動ができる

インターネットかつ3DCGである仮想空間には、物理法則などの制約がありません。
ユーザーは現実の制限にとらわれない、より自由な発想での創作活動を楽しむことができます。

収益を獲得できるチャンスがある

現在でもネット上の作品発表や配信によって収益を獲得することが可能です。
「第二の現実」として構築されるメタバースでは、より多くの機会が見込めるようになるでしょう。

企業としてのメリット

メタバースの存在は、ユーザーだけでなくビジネスを行う企業にもメリットがあります。

コストカットが見込める

現実のオフィスをVRのオフィスに移行するなどの方法で、コストカットを見込めます。

新しいビジネスチャンス・収益源の可能性

メタバースの市場は未完成であり、多くのビジネスチャンスが潜んでいます。
また3DCGの世界に参入することで、新たな収益源を発見することもできるかもしれません。

少ない制約による自由なビジネス

場所や物、人数は常にビジネスの制約になりますが、仮想現実ではそれらの課題を解決しやすくなります。
ユーザーと同じく、より自由な発想でビジネスに取り組めると言えるでしょう。

メタバースの課題

メタバースのイメージ3

開発途上であるメタバースには、解決しなければならない課題ももちろん多く存在します。

技術的な問題

メタバースを普及させるには、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の技術が必須となります。
現段階ではこれらの技術は開発されている真っ最中であり、社会にも十分に浸透していません。
メタバースの開発に関わる業界や企業では、メタバースのインターフェースや通信プロトコルの基準なども含めて開発が進められています。

現実の「人」に与える問題

仮想現実を「第二の世界」として捉えるメタバースは、現実の人々にも影響を与えることが懸念されています。

情報のプライバシー

メタバースを提供する企業は、現在以上にユーザーの個人情報を収集することが想定されます。
それらの情報がサービスに利用される場合、プライバシーやセキュリティの課題はより大きなものとなります。

依存症

「ネット依存症」や「ゲーム依存症」は現代でも話題に上がります。
仮想世界への没入体験が想定されるメタバースでは、これらの依存症がより深刻化する点が懸念されています。

法制度

仮想世界における法制度はまだ十分とは言えません。
メタバースの現実的な普及を考える場合、これらの整備は非常に重要です。
たとえば現実によく似た仮想世界で犯罪が行われた場合、現実世界でもそれらの犯罪行為を働きやすくなってしまうのではないか、などが心配されています。

参考