コントロール・アカウントとは何か?PMBOKの用語を解説
コントロール・アカウントの概要
コントロール・アカウントとは、スコープ、予算、実コスト、スケジュールなどを統合し、かつパフォーマンス測定を行うためにアーンド・バリューと比較するマネジメント上のコントロールを行う単位のことで、「コスト・アカウント」と呼ばれる場合もあります。
通常、WBS(Work・Breakdown・Structure)ではプロジェクトを管理する基本単位に「ワーク・パッケージ」を設定します。ワーク・パッケージは、階層化された構造(ツリー構造)の最下層レベルのWBS要素です。このワーク・パッケージにアクティビティや人員・リソース、予算・コストを割り当てます。
しかし、プロジェクトの期間や規模によっては、アクティビティや人員の管理とは別単位で予算配分やコスト・コントロールをする方が管理しやすい場合もあります。そんな時に使われる管理単位が「コントロール・アカウント」であり、このコントロール・アカウントにはいくつかのワーク・パッケージが含まれます。そして、それぞれのワーク・パッケージは、1つのコントロール・アカウントにのみ関連づけされます。
コントロール・アカウント単位で立てる計画や計画書は、コントロール・アカウント・プラン(CAP)と呼ばれ、アーンド・バリュー・マネジメント(EVMS)のコスト計画などが記載されます。CAPには原則として、コントロール・アカウントごとに責任者(アカウント・マネージャ)を配置し、予算管理やコスト管理を行うことが望ましいとされています。
コントロール・アカウントの位置づけ
ここからはコントロール・アカウントがプロジェクトマネジメントの中でどのような位置づけにあるのかを解説していきます。
PMBOK第6版におけるコスト・マネジメントの工程は、以下の4段階に分かれています[1]PMBOK第6版、231頁。
- コスト・マネジメントの計画
- コストの見積もり
- 予算の設定
- コストのコントロール
コスト・マネジメントの計画では、プロジェクト憲章・プロジェクトマネジメント計画書から予算・コストに関する情報を確認します。そこからコスト管理を行うための、方針・ルール・具体的な手順などを決めていきます。
コスト・マネジメント計画書には、以下の内容が記載されます。
- コスト見積もりの有効桁数
- コストの測定単位
- 組織の手続きとのリンク
- コントロールしきい値
- パフォーマンス測定の規則
- 報告形式
- プロセス
「組織の手続きとのリンク」でWBS要素と企業の会計システムの勘定科目コードを紐付けるため、WBSが活用されます。階層化された各WBS要素に付与されている一意の識別子はWBSコードと呼ばれます。
WBSは作業の見える化を図るために作られ、作業工程を細かく分解して作業を洗い出します。WBSでは、アクティビティやタスクを活動の種類に沿ってツリー状にまとめていき、このそれぞれの構成要素がコントロール・アカウントになります。
コントロール・アカウントの必要性
コントロール・アカウントは、ワーク・パッケージよりも要素の粒度が大きい単位に当たります。そのため、ワーク・パッケージほど細かく構成要素を設定する必要のないプロジェクトの場合に、設定させるケースが多いです。
ただし、WBSでは必要なタスクをすべて洗い出すことが重要です。後から予定外のタスクが発生し、進捗遅れやトラブル発生などに見舞われれば、プロジェクトが上手く回らない可能性が高くなります。そのため、できる限りワーク・パッケージまで要素に落とし込み、上手く階層化し、最適な人員配置や予算管理、コスト管理を進めていくことが求められます。
また、まれに担当者が複数人割り当てられているケースもありますが、できるだけ1作業1担当者とするのが理想です。なぜなら、1作業に担当者が複数割り振られていることで作業への責任性が薄れたり、最終的な判断や誰が責任をもって作業を完了させるのかがわからなくなったりするためです。
注
↑1 | PMBOK第6版、231頁 |
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