プロジェクトマネジメントの三角形とは何か? ~鉄の三角形から便益の三角形、関与の三角形を解説~

2023年1月30日

プロジェクトマネジメントの三角形とは

プロジェクトマネジメントの三角形のイメージ

プロジェクトマネジメントの三角形とは、プロジェクトマネジメントの制約を表したモデルのことです。これはプロジェクトで得られる成果物の品質はスコープ(作業範囲)、費用、時間から成り立っているという考えで、「三重制約」「鉄の三角形」などとも呼ばれます[1]Project management triangle – Wikipedia(2023)

三角形内のスコープ、費用、時間はお互いに影響し合っており、1つの要素に変動があれば、他の要素にも影響を与えます。
つまり、これらの3つの要素を上手くコントロールすることが、プロジェクトで質の高い成果物を得るために重要であり、プロジェクト・マネジャーが最も注意しなければならない要素と考えられてきました。

新しいプロジェクトマネジメントの三角形

近年では、プロジェクトマネジメントのエキスパートであるアントニオ・ニエト・ロドリゲス(Antonio Nieto-Rodriguez)が新しい三角形として「便益の三角形(The benefit triple constrait)」「関与の三角形(The engagement triple constrait)」を提唱しています。

ここからは、この新しい三角形について解説していきます。

便益の三角形(The benefit triple constrait)

便益の三角形のイメージ

便益の三角形はプロジェクトが生み出す便益を構成する3つの要素を表したものです。
それぞれの要素の意味は以下のとおりです。

価値(Value delivered)

価値とは、プロジェクトの価値を意味しています。
これは金銭などの有形の価値だけでなく、社会への影響などの無形のものも含まれます。

リスク(Risks)

リスクとは、プロジェクトのリスクを意味しています。
往々にして、リスクが低いものは得られる成果も小さく、リスクが高いものは得られるものも大きいものです。
大きな成果を得ようとすると、高いリスクに対処しなければならず、リスクの高さはプロジェクトの成功確率を低下させます。

持続可能性(Sustainabillity)

持続可能性とは、プロジェクトが長期にわたって便益を生み出すのか、それとも短期的なのかを表しています。

お互いへの影響

プロジェクトの三角形と同様、便益の三角形の3つの要素は、お互いに影響を与えています。
たとえば、価値を高めようとすると、大きな成果が必要になるため、リスクが高まります。しかし、大きな成果が得られるのであれば、プロジェクトがもたらす便益も長期になることが予想されるため、持続可能性も高まります。

なぜ便益の三角形が必要なのか?

従来、プロジェクトマネジメントは求められる成果物を高い品質で得ることが重視されていました。そのため、高い品質の成果物を予定していた作業を経て、予算内で、期限内に得られることがプロジェクトマネジメントの重点課題となっていました。

しかし、現在ではただ単にプロジェクトを完了させるだけでなく、その便益も考えなければ、競争に勝つことができなくなってきました。
たとえば、単に期限内に制作したゲームソフトよりも、予定の期限は過ぎたものの、リリース後の影響が大きいゲームソフトのほうが、プロジェクトは大きな便益を生み、プロジェクトを成し遂げた価値があったとされます。

そうした時代の中で、「では便益とは何なのか?」を端的に示したものが便益の三角形です。

関与の三角形(The engagement triple constrait)

関与の三角形のイメージ

関与の三角形は、プロジェクト・マネジャーを含む、プロジェクトのステークホルダーの関与に影響する3つの要素を表しています。

プロジェクトには様々なステークホルダーがいます。彼らから関与を促さなければ、プロジェクトは円滑に進みません。

ここからは、関与の三角形の3つの要素を詳しく見ていきます。

連携(Alignment)

連携はプロジェクトのステークホルダーが、そのプロジェクトを自身の仕事だと見なしている度合を意味します。
連携はプロジェクトの目的や、参加者の感情的なつながりに影響を受けます。

専念(Dedication)

専念は、チームやステークホルダーがどの程度の時間を費やせるかを表しています。
各ステークホルダーがそのプロジェクトに専念してくれることが望ましい状態ですが、稀な状況でもあります。

認知(Recognition)

認知は、プロジェクトのステークホルダーたちが、「自分の役割には意味がある」「やったことが評価された」など、プロジェクトに貢献していることを認知することを意味します。
プロジェクトに参加した個々人が、チームとして関与していけるかを占う、重要な要素です。

お互いの影響

関与の三角形の各要素もお互いに影響を与えています。
たとえば、連携の意識が低く、ステークホルダーがそのプロジェクトを自分の仕事だと考えていなかったとします。
そうなると、そのプロジェクトに使う時間も自ずと減ってしまいます。
こうした事態の原因となっているのは「このプロジェクトで自分はどのような役割を持っているのか」という認知がなされていないことが考えられます。

なぜ関与の三角形が必要なのか?

ステークホルダーから関与を引き出すことがプロジェクトの成功のカギであることは、従来のプロジェクトマネジメントでも認識されていました。

たとえば、プロジェクトマネジメントのガイドラインであるPMBOKでは「ステークホルダー・エンゲージメント」として注目しています。

ステークホルダー・マネジメントとは?

ステークホルダー・マネジメントとは、プロジェクトのステークホルダーから関与を引き出すための活動です。
PMBOK第6版では、ステークホルダー・エンゲージメント計画書を作成することで、ステークホルダーから関与を促す計画を練っていきました。

PMBOK第7版でも、ステークホルダー・パフォーマンス領域の中で、関与の仕方を考えていきます。

関与の三角形は、従来注目されていたステークホルダー・エンゲージメントの重要項目を簡潔に表したものです。
これまでは重要とされながらも、注目すべき点が難解でしたが、関与の三角形により、対処すべき項目がわかりやすくなりました。

1Project management triangle – Wikipedia(2023)

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Posted by promapedia