ダッシュボードに必要な内容 ―使いやすいダッシュボードをつくるための質問―

2020年7月22日

ダッシュボードとは何か?

Googleアナリティクスのダッシュボード画面
Googleアナリティクスのダッシュボード画面

IT化が進むにつれてさまざまなアプリケーションが開発されるようになりました。
その中で「ダッシュボード画面」の内容に頭を抱えることも増えてきました。
アプリケーションでいうダッシュボードとは、車のダッシュボードの隠喩であり、「コックピットエリア」とも呼ばれます。さまざまな情報を一括して表示する画面であり、多くのアプリケーションを起動させたときに最初に出てくるホーム画面に設定されます。
車のダッシュボードとは、自動車においてフロントウインドシールド下、前席正面にある内装部品全体を指した名称のことでありますが[1]ダッシュボード (自動車) – Wikipedia、アプリケーションのダッシュボードを考える場合はどちらかと言えば飛行機のコックピットをイメージしたほうがよいでしょう。

飛行機のコックピットにはさまざまなメーターやボタン、レバーが設置されています。
これらのメーターは常にパイロットが確認しないといけないものであり、ボタンやレバーはすぐに操作できなければならないものです。
この飛行機のコックピットと同様にアプリケーションのダッシュボードも以下のコンセプトを備えていなければなりません。

  • 必要な情報がすばやく手に入れられる
  • 必要な機能をすばやく操作できる

この2つのコンセプトをアプリケーションごとに上手く調整していく必要があります。
そのためにはアプリケーションを使うユーザーを徹底的に分析していきます。

ダッシュボードを使うユーザーは誰か?

ユーザー分析をする場合、まずはユーザーは誰かを特定することからはじまります。
会社で言えば、どの部署の人物で、どのような作業をするのかを特定していきます。
こうした作業には、マーケティングのペルソナ分析が有効です。
ペルソナとはもともと「仮面」を意味する言葉ですが、UXデザインやマーケティングで使用される場合は「象徴となる顧客像」という意味で用いられます[2]UXデザインで用いられるペルソナを作成して、ターゲットユーザーを考える | SSAITSのブログ
ダッシュボードの開発で言えば、以下のような質問に対する答えをプロジェクト・メンバーで話し合い、ペルソナを固めていくとよいでしょう。

ユーザーの目的は何か?(どのような判断を行うのか?)

まずはユーザーの目的を話し合っていきます。いいかえれば、ユーザーはダッシュボードを見ることにより、どのような判断を行うのかを考えていきます。
例えば、同じ会計システムであっても、ユーザーによって目的は異なります。

  • マネジャー … 戦略
  • 一般のスタッフ … 運用
  • 中間管理職 … 戦術
  • アナリスト … 分析

マネジャーなどの経営層であれば、財務状況を見て大きな戦略を考えることが目的ですし、会計システムにデータを入力するスタッフであれば、入力し忘れがないかなどの運用状況を確認することが目的になります。
部長や課長などであれば、管理している部や課の状況を確認し、当期の戦術を考えることが目的になりますし、アナリストであれば財務分析をすることが目的になります。
このようにユーザーの所属や立場によってユーザーの目的や、ダッシュボードを見て行う判断は変わってきます。
まずはユーザーの目的を正確に把握することが、有効なダッシュボードを開発する第一歩になります。

ユーザーのほしい情報は何か

ユーザーの目的を把握したら、その目的に必要な情報が何かを考えていきます。
先ほど述べたように、マネジャーであれば会社全体の財務状況が一目でわかるようなデータが求められますし、会計情報を入力するスタッフであれば、運用に関する情報が求められます。

逆にユーザーにとって何が不要な情報なのか?

多くのデータや機能があると、かえって使いにくいダッシュボードになってしまう

「ユーザーにとってほしい情報は何か?」を考えていくと、いくらでもアイデアがでてきてしまい、収拾がつかないことになってしまうことがあります。
そのため、併せて「ユーザーにとって不要な情報は何か?」「どの情報は重要度・緊急度が高くないか?」を考えていくことが大切です。
冒頭で述べたように、ダッシュボード画面を考えるのは、飛行機のコックピットを考えるようなものです。
飛行機のコックピットにあまりにも情報が詰め込まれていたら、どこを見ればよいのかを瞬時に判断することができません。
そのため、可能な限り表示する内容は削り、厳選した情報や機能だけをダッシュボードに掲載するほうがよいでしょう。

いかにすばやく、必要な情報を取り出せるか?

ユーザーの分析が終われば、ダッシュボードを見たユーザーが「いかにすばやく、必要な情報を取り出せるか?」を考えていきます。
「すばやく情報を取り出す」という言葉には以下の3つの意味が込められています。

  • 画面がデータを表示するまでの時間はどれくらいか?
  • 画面がデータを表示してからユーザーが必要な情報を探すまでの時間はどれくらいか?
  • 表示されたデータを見て、ユーザーが何らかの判断を下すまでの時間はどれくらいか?

「画面がデータを表示するまでの時間」については、アプリケーションを動かすサーバーやPCのスペックなどによるところも大きいのですが、一般的に表示させるデータが少なくなれば、それだけ表示時間は早くなります。
そのため、ここでも「どのデータが必要で、どのデータが必要でないのか?」を考えていくことが大切になります。

シンプルで見やすい画面か?

「画面がデータを表示してからユーザーが必要な情報を探すまでの時間」は以下の3点が影響します。

  • レイアウト
  • 余白
  • 書体

レイアウト、つまり画面設計は言わずもがなですが、ダッシュボード画面では余白や書体などにも注意していきます。
ダッシュボード画面では余白を十分にとり、表示された各データが見やすくなるようにします。
また、書体も奇抜なものは使用せず、一般的に使われている書体を使っていきます。例えば日本語であればゴシック体やメイリオを使っていきます。

適切なデータ表現・グラフは何か?

「表示されたデータを見て、ユーザーが何らかの判断を下すまでの時間」については、適切なデータ表現やグラフが関係してきます。
一目で見て、どのような状況かが瞬時に把握できるデータ表現やグラフは限られており、例えば以下のようなものが挙げられます。

マトリックス図
円グラフ
折れ線グラフ
棒グラフ
レーダーチャート

一方で、バブルチャートや散布図はそのグラフを見ても「どのような状況なのか」を考えなければならず、ダッシュボードには適さないと言えるかもしれません。
一目見ただけで内容が把握でき、意思決定が瞬時に行えるような表現方法を模索していきましょう

参考