エキスパートになるための「1万時間の法則」とは何か?

2020年1月5日

1万時間の法則とは?

1万時間の法則とは、何かのエキスパートになるためには1万時間が必要だという俗説です。

1万時間の法則の発祥

1万時間の発祥地は定かではありません。
例えば Google研究本部長であり、計算機科学者であるピーター・ノーヴィグブログで紹介したり、『リーンソフトウェア開発と組織改革[1]Mary and Tom Poppendieck(著)、依田光江(訳)、依田智夫(監訳)『 リーンソフトウェア開発と組織改革 』 アスキー・メディアワークス、2010年』の中で提唱されています。

1万時間の訓練には10年かかる

毎日8時間・週5日の仕事をする中で、自身のスキルに直結するような業務にフルに時間を使えたとすると、人は仕事を通じて毎週40時間の訓練を行うことになり、1年は約52週なので、年に約2,080時間の訓練をすることになります。
このペースでいけば、約5年でエキスパートの域に達することができます。
しかし、日々自分のスキルに関係する業務ばかりを行えることはまずありません。ミーティングや社内行事、体調やモチベーションの状態によって、せいぜい勤務時間8時間の中で約半分の4時間程度しかスキルが磨かれるような業務に費やすことはできないでしょう。
そうなると、エキスパートになるためには約10年の時間が必要になるということになります。
もちろん休日にもスキルの向上のために勉強したりする場合は、もっとはやい期間でエキスパートになれるでしょう。

反復訓練だけでは成長はない

時間もさることながら、もちろん1万時間の中身も重要です。
ピーター・ノーヴィグのブログで紹介されているように、「最も効果的な学習に必要なのは、その特定の個人にとって適度に難しく、有益なフィードバックがあり、なおかつ繰り返したり、誤りを訂正したりする機会のある、明確な作業」であり、すでに体得していることを反復するだけの仕事を10年行ってもエキスパートとは言えないでしょう。

「○○日でプログラマーに!?」のアンチテーゼ

ピーター・ノーヴィグのブログでこの1万時間の法則が紹介されたきっかけは、『7日で学ぶ Java』のような短時間でプログラミング言語が学べることを謳っている本があまりにも多いことに対しての疑問です。
このように数日プログラミング言語を学んだとしても、成功体験もなければ失敗体験もない、意味あるコードも書けないと非難しています。
最近ではIT人材の需要が高まっていることから、様々なITスクールが生まれ、「○○日でプログラマーになれる!」というような広告を発信していますが、プログラミング言語を多少操作できることと、プログラミングのエキスパートとして活躍できるようになることとは分けて考えなければならないでしょう。

1Mary and Tom Poppendieck(著)、依田光江(訳)、依田智夫(監訳)『 リーンソフトウェア開発と組織改革 』 アスキー・メディアワークス、2010年