スコープの定義とは何か?PMPに出てくるPMBOKの用語を解説
スコープの定義とは
スコープの定義とは、このプロジェクトで何をして何をしないのかを明らかにしていくプロセスです。
PMBOKでは「プロジェクトおよびプロダクトに関する詳細な記述書を作成するプロセス[1]PMBOK第6版、715頁。」と定義しています。
スコープの定義のアウトプット
ここからはスコープの定義の流れを確認していきます。
まずはスコープの定義のゴール、すなわちアウトプットを確認していきましょう。
スコープの定義のプロセスでは、以下の成果物が得られます[2]PMBOK第6版、154~155頁。。
- プロジェクト・スコープ記述書
- プロジェクト文書更新版
- 前提条件ログ
- 要求事項文書
- 要求事項トレーサビリティ・マトリックス
- ステークホルダー登録簿
この中で最も重要なのがプロジェクト・スコープ記述書です。
プロジェクト・スコープ記述書はこの後の ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー(WBS)やスコープ・ベースラインを作成していく際の重要なインプットとなるため、大切なアウトプットとなります。
このプロジェクト・スコープ記述書については、以下のWebページもご参照ください。
この他、プロジェクト文書更新版として、前提条件ログ、要求事項文書、要求事項トレーサビリティ・マトリックス、ステークホルダー登録簿などの文書を更新していきます。
これらのプロジェクト文書はすでにこれまでのプロセスで作成されている文書ですが、スコープの定義によって、プロジェクトの作業範囲が詳細化することにより変更がでるのであれば、これを更新していきます。
スコープの定義のインプット
次にスコープの定義のインプット、すなわちアウトプットを作るための材料をみていきましょう。
スコープの定義のインプットは以下の通りです。
- プロジェクト憲章
- プロジェクトマネジメント計画書
- プロジェクト文書
- 前提条件ログ
- 要求事項文書
- リスク登録簿
- 組織体の環境要因
- 組織のプロセス資産
この中で注意しなければならないのは、要求事項文書の存在です。
要求事項文書とは、このプロジェクトで作られるプロダクトに対しての要求事項をまとめたものです。プロジェクト憲章やプロジェクトマネジメント計画書でも、プロジェクトの大きなゴールは提示されていますが、そのゴールを達成するためにどのような事柄を満たさねばならないのかをまとめたのが要求事項文書です。

“Tree Swing Cartoon(木のブランコの漫画)"として知られるように、要求事項をしっかりと定義しておかなければ「木にブランコを設置する」という要求一つであれ、人によって解釈が異なってしまい、設計者がイメージした完成図と大工がイメージしたブランコ、実際にリリースされたブランコ、そしてユーザーが本当に求めていたブランコが異なってしまいます。
スコープの定義のツール・技法
スコープの定義では以下のようなツールと技法を使って、インプットからアウトプットを形作っていきます[3]PMBOK第6版、153頁。。
- 専門家の判断
- データ分析
- 代替案分析
- 意思決定
- 人間関係とチームに関するスキル
- プロダクト分析
- プロダクト・ブレークダウン
- 要求事項分析
- システム分析
- システムズ・エンジニアリング
- 価値分析
- 価値工学
スコープの定義では、専門家やプロジェクト・チームと話し合ってプロジェクトで何をして、何をしないのかを定めていきます。
そのため、専門家の判断や意思決定、人間関係とチームに関するスキルが、スコープの定義のツールと技法としてPMBOKで紹介されています。
他方、データ分析としては代替案分析、プロダクト分析としては要求事項分析や価値分析が紹介されていますが、これらの手法については項を改めてお話ししていきます。