品質コストとは何か?予防コスト・評価コスト・不良コストについて解説

2020年3月12日

品質コストの概要

品質コストと構成の画像

品質コスト(COQ:Cost Of Quality)とは、プロジェクトの品質マネジメントの中で分析される成果物の品質を保つために支払うコストのことです。予防コストと評価コストの適合関連コストと内部不具合コストと外部不具合コストの不適合関連コストから成り立っています。
品質コストは「予防コスト」「評価コスト」「内部不具合コスト」「外部不具合コスト」の4種類に分類され、それぞれの項目を細分化して記載したチェックシートなどを活用して、製品の品質をチェックしていきます。
PMBOKでも使用される言葉ですが、品質コストの自体は、国際標準化機構(ISO)で定義されている用語です。

品質コストの定義と用語

PMBOKでの定義

ここからは品質コストの具体的な中身について見ていきます。
少し長いですが、PMBOKでの品質コストの定義を引用し、内容を確認していきましょう。

プロダクトのライフサイクルを通して、要求事項への不適合を予防すること、要求事項への適合のためにプロダクトやサービスを評価すること、および要求事項を満たさない不良のために、投資するすべてのコスト[1]PMBOK第6版、725頁。

ここから、品質コストが3つのコストから成り立っていることがわかります。

  • 要求事項への不適合を予防するためのコスト(予防コスト
  • 要求事項への適合のためにプロダクトやサービスを評価するためのコスト(評価コスト
  • 要求事項を満たさない不良のためのコスト(不良コスト

各コストは( )内に記述した名称で呼ばれます。

品質コストの種類

品質コストの内容をまとめると以下のようになります。

適合関連コスト予防コスト品質問題が発生しないように対策するコスト
例:品質計画・工程管理・品質保証・品質管理システムの設計・実施など
評価コスト品質基準を満たしているかを確認するために必要なコスト
例:検査・点検の作業・品質監査など
不適合関連コスト
(不良コスト)
内部不具合コスト品質基準を満たさない製品に対して発生するコスト
例:品質基準を満たさない製品の製造原価・廃棄コストなど
外部不具合コスト品質基準を満たさない製品を出荷してしまった際に発生するコスト
例:顧客からのクレーム対応・リコール・機会損失など

ここからは、これら予防コスト・評価コスト・不良コストについて詳しく見ていきます。

予防コスト

予防コストとは、プロジェクトによってできた成果物やプロダクト、サービスの品質不良を防止するために投資するコストのことです。
スタッフへのトレーニングは、予防コストの良い例です。
この他、マニュアル化で文書プロセスを整備したり、エラーがおこったら次の作業ができないような仕組み(フールプルーフ)を取り入れたツールを導入するなど、品質不良を未然に防ぐためのコストが予防コストとして計上されます。

評価コスト

評価コストとはプロジェクトの成果物やプロダクト、サービスが品質不良にならないために評価・テストするためのコストです。
例えば、開発したITシステムを第三者機関にセキュリティ・テストをしてもらう費用が評価コストとなります。
さらにテストをした際のロスも評価コストに含まれます。
先ほどのセキュリティ・テストの場合であれば、実際にITシステムに攻撃を加えることがあります。その結果、開発したITシステムが破壊されてしまう可能性も考えられます。
破壊されたITシステムの復旧が容易ではない場合は、復旧のための費用も評価コストとして計上されます。

不良コスト

不良コストとは、プロジェクトの成果物やプロダクト、サービスの品質が不良であった際に発生するコストのことです。
この不良コストは、プロジェクト中に発見された場合の内部不具合コストと、実際にプロダクトやサービスをリリースしてから顧客や利用者によって発見された場合の外部不具合コストに分けられます。

内部不具合コスト

内部不具合コストはプロジェクトの最中にプロジェクト・チームのメンバーに発見された品質不良のために費やすコストのことです。
ITプロジェクトでは成果物のテストをしている中で発見されたバグを修正するためのコストが例として挙げられます。

外部不具合コスト

外部不具合コストは、プロジェクトが終了し、そのプロジェクトでプロダクトやサービスを世に出した後に、顧客やユーザーなどによって発見された品質不良です。
例えば損害賠償などの金額や法的責任、それに対応する労力などが外部不具合コストに計上されます。

適合コストと不適合関連コスト

これまで見てきた品質コストは、プロジェクトの要求事項を満たすための適合関連コストと、満たせなかったために発生した不適合関連コストの2種類に分類することができます。
不適合関連コストと不良コストは同じ内容を指しています。

品質コストの必要性

ここからは品質コストを考えることがなぜ必要なのかを解説していきます。

品質を一定に保つことができる

日本でも品質不正の問題が発生しています。品質不正が発生すると企業の信用を大きく揺るがす事態に発展するため注意しなければいけません。一度でも、品質問題が起きてしまうと、その企業が生み出す製品を見る世間の目は厳しくなります。問題発覚以降は、業績が上がらず撤退しなくてはいけないかもしれません。
このような事態を防ぐためにも、品質を一定に保つ必要があります。品質コストで確認していけば、このような問題を防止できるので、必ず品質コストを活用して品質チェックしましょう。

内部・外部不具合コストを削減できる

予防コストに費用をかけることで、不良コストを減らすことができます。品質計画・工程管理・品質保証・品質管理システムの設計・実施にお金をかけておけば、必然的に製品の品質を向上させられます。その結果、廃棄コストやリコールなどの不良コストを削減することができます。

品質の費用対効果を考えることができる

天秤の画像

上記のように、予防コストの増加は不良コストの減少につながることが多いのですが、品質マネジメントの上では適合関連コストと不適合関連コスト(不良コスト)のバランスを考えることが大切です。
基本的には予想される不適合関連コストを解消するために必要な適合関連コストが小さければ、適合関連コストを支払って予防や評価を行うべきです。
例えばオンラインの学習サービスのためのITシステムを開発したとして、ヒューマンエラーやITシステムの欠陥により情報流出がおこってしまえば、何千万円、何億円という損害賠償とそれに対応する労力がかかってしまいます。こうした不適合関連コストが1億円と見積もられた場合、社員のトレーニングやシステムのテストに数百万円のコストがかかったとしても実施すべきと考えられます。
一方で、不適合関連コストよりも適合関連コストが上回ってしまう場合は考え物です。
例えば先ほどの学習サービスの適合関連コストが10億円だった場合、判断は難しいところです。倫理的には実施したほうがよい気がしますが、10億円の適合関連コストを支払った場合、そのコストの回収に長い期間がかかってしまうと、そもそもビジネスになりません。
このように適合関連コストが不適合関連コストを上回ってしまった場合の判断が品質マネジメントの難しいところです。品質マネジメントをする中ではこうした適合関連コストと不適合関連コストのバランス、すなわち品質を担保するための費用対効果を考えて対応内容を検討していく必要があります。

現場の意識を高めることができる

製品の品質チェックを行うことが分かっていれば、現場で働くメンバーにも緊張感を与えることができます。良い意味で現場の意識を高めることができ、経営陣と現場が一丸となれて、品質の高い製品を製造していくことができます。

品質コストの活用例

実際に、品質コスト(QCD)を活用しているトヨタ自動車での活用事例をご紹介します。

自動車業界ではムダを省くことが必要

自動車の場合は、軽自動車や大型車、高級車などの種類があり、価格もそれぞれ異なります。このような製品の価値を判断するときに必要なものが、QCDの品質(Quality)・価格(Cost)・量(Delivery)です。
どの自動車が購入されるかは消費者が決めるため、利益を最大化するためには、原価を最小化する必要があります。そこで活かされるのが、在庫・生産不良・生産停止・人員のムダを省き、QCDの水準を向上させるトヨタ生産方式です。

トヨタ生産方式・JIT(ジャスト・イン・タイム)とは

トヨタ自動車では世界から注目される様々な生産管理手法が考案されていますが、そのなかでも品質コストに関連しているのがJIT(Just in time)です。
JITとは「必要なものを、必要な時に、必要な数だけ生産する」という生産ラインの基本的な流れを指します。このJITのアイデアを徹底するため、トヨタ自動車では段取り替えの短縮、かんばん方式、平準化生産などが考案されていき、協力企業にも、この仕組みは採用されました。

自動化の試み

トヨタ自動車ではコスト削減のための自動化の仕組みも考案されました。例えば、機械の異常や不良の発生時に自ら止まる仕組みを取り入れ、作業の効率化を実現しています。
このようにトヨタ自動車では仕組みだけでなく、設備にもお金をかけ、適合関連コストを引き上げることで、不良品が流通するのを未然に防ぐ取り組みをしています。

1PMBOK第6版、725頁。