PMBOKに沿った予算の設定とは何か?プロジェクトの予算を見積る方法を解説
予算の設定の概要
予算とは、一般的には収入や支出の計画、または一会計年度における歳入・歳出の計画を意味しますが[1]予算 – Wikipedia、プロジェクトにおいてはプロジェクトのために承認された見積りを意味します[2]PMBOK第6版、736頁。。
PMBOKのプロセスの1つである予算の設定では、プロジェクトで使われるコストの基準であるコスト・ベースラインを作成し、認可を得るために、個々のアクティビティやワーク・パッケージのコスト見積りを集約していきます。
つまり、PMBOKにおいては、「予算≒コスト・ベースライン」であり、プロジェクトのコストを監視するための基準となります。
予算の設定のアウトプット
まずは予算の設定のアウトプットを確認し、このプロセスのゴールを明確にしておきましょう。
予算の設定の主なアウトプットは以下の通りです。
- コスト・ベースライン
- プロジェクト資金要求事項
- プロジェクト文書更新版
- コスト見積り
- プロジェクト・スケジュール
- リスク登録簿
ここからは、上記のアウトプットについて解説していきます。
コスト・ベースライン
上述の通り、コスト・ベースラインとはプロジェクトで使われるコストの基準です。
プロジェクト資金要求事項
プロジェクト資金要求事項とは、コスト・ベースラインから導き出された総資金の必要量のことです。
プロジェクト文書更新版
予算の設定のプロセスを経ることにより、プロジェクト文書が更新されることがあります。
例えば、予算の設定の際に再度金額を見積った結果、これまでに作成したコスト見積りが更新されることがあります。
また、資金限度額による調整によって、スケジュールに変更が出た場合は、プロジェクト・スケジュールを更新する必要がでてきます。
また、予算の設定のプロセスの中で新たなリスクが発見された場合は、リスク登録簿に追加されます。
予算の設定のインプット
予算の設定の主なインプットは以下の通りです。
- プロジェクトマネジメント計画書
- プロジェクト文書
- 見積りの根拠
- コスト見積り
- プロジェクト・スケジュール
- リスク登録簿
- ビジネス文書
- 合意書
- 組織体の環境要因
- 組織のプロセス資産
ここからは、これらのインプットから、予算の設定のプロセスを進めるためにどのような点を確認していけばよいのかを解説していきます。
プロジェクトの目標と利益
予算はプロジェクトの成否を左右します。それだけでなく、当初の想定以上にコストがかかるということが分かった場合は、プロジェクトの中止も検討しなければなりません。
この判断はプロジェクトの目標や予想される利益から相談しなければなりません。
プロジェクトの目標や予想される利益については、ベネフィット・マネジメント計画書から確認することができます。
また、ビジネス・ケースからは、プロジェクトにとっての重要成功要因を特定することができます。
コスト・マネジメントと資源マネジメントの方針
予算の設定はコスト・マネジメントと資源マネジメントの両方に関わるプロセスです。
そのため、コスト・マネジメントと資源マネジメントがどのような方針で進められているのかを確認する必要があります。
これらの情報を得るために、コスト・マネジメント計画書と資源マネジメント計画書を確認していきます。
予算に組み込むべき項目
プロジェクトの予算を申請するために、どのような項目を組み込むのかをコストの見積りのプロセスで作成したコスト見積りを中心に確認していきます。コスト見積りの根拠を知るためには見積りの根拠を確認していきます。さらにコスト見積りがどのように作られたのかを知りたい場合は、スコープ・ベースラインやプロジェクト・スケジュール、リスク登録簿、組織体の環境要因を確認します。
ノウハウ
予算の設定を行う際には、組織のプロセス資産などから予算申請の手続きやガイドライン、報告方法などのノウハウを確認し、採り入れていきます。
予算の設定のツールと技法
予算の設定のツールと技法は以下の通りです。
- 専門家の判断
- コスト集約
- データ分析
- 過去の情報レビュー
- 資金限度額による調整
- 資金調達
ここからは、上記の予算の設定の各ツールと技法について見ていきましょう。
専門家の判断
予算の設定で求められる専門家とは、過去の類似するプロジェクトの経験があったり、その業界の情報を持っていたりする人物です[3]PMBOK第6版、252頁。。
コスト集約
プロジェクトのコストはWBSの形に従って見積もられるのが一般的です。
WBSを構成している要素ごとに金額を見積り、最終的にそのコストを集約していく必要がありますが、この作業がコスト集約です。
データ分析
予算の設定のデータ分析では、プロジェクトのマネジメント予備を確立する予備設定分析が使用されます。
マネジメント予備とは、全く予想がつかない「未知の未知」のリスクに対して備える金額のことです。
過去の情報レビュー
過去の情報をレビューすることで、パラメトリック見積りや類推見積りの作成に役立てることができます。
パラメトリック見積りと類推見積りは、ともに過去のデータから、見積りを行う手法です。
資金限度額による調整
プロジェクトの予算が見積もられても、その金額が必ず承認されるという訳ではありません。
その組織の財政状況にあわせて資金限度額が設けられるのが一般的であり、予算がその資金限度額を超えていた場合は、予算を調整する必要があります。
例えば、調達を予定している資源が調達する時期によって金額が変わる場合、その時期を変更することで金額を下げられることがあります。
このように、スケジュールなどを調整していきながら、予算を調整していきます。
資金調達
予算の設定のプロセスでは、資金調達を行わなければなりません。
組織の資金の一部をプロジェクトの予算に充てることが一般的ですが、プロジェクトによっては外部の組織から資金を融資してもらい、プロジェクトの予算にすることもあります。