プロジェクト・ベネフィット・マネジメント計画書とは何か?その作成方法と主要要素を解説

2020年2月1日

プロジェクト・ベネフィット・マネジメント計画書とは

プロジェクト・ベネフィット・マネジメント計画書とは、プロジェクト・ビジネス・ケースと並び、PMBOKの中でプロジェクト・ビジネス文書とされるもので、プロジェクトから得られる利益を創出し、最大化し、接続するためのプロセスを定義した記述書のことです。
PMBOKの中では「ベネフィット・マネジメント計画書」と略記されるため、このページでもベネフィット・マネジメント計画書という表記で統一していきます。

なぜベネフィット・マネジメント計画書は必要なのか?

ベネフィット・マネジメント計画書は、プロジェクトメンバー間で使用するというよりも、スポンサー組織などのステークホルダーに対しての提出書類として作成されます。
プロジェクトで作成されるプロジェクト憲章プロジェクトマネジメント計画書はプロジェクトの円滑な進行のために作成されるものであり、この「プロジェクトによって何が得られるのか?どのようにして実現していくのか?」については、詳しく語られません。
プロジェクトから得られる利益・便益・恩恵(プロジェクト・ベネフィット)がどのようにして発生し、どのように実現するかをステークホルダーに明示するため、ベネフィット・マネジメント計画書は必要となります。

ベネフィット・マネジメント計画書に書くべき内容

繰り返しになりますが、ベネフィット・マネジメント計画書では、プロジェクトから得られる利益・便益がどのようなものであるのか、そしてどのように実現していくのかを記述していきます。
PMBOKでは以下の項目を記述することを推奨していますが、必要に応じて他の項目も追加していく必要があります[1]PMBOK第6版、33頁。

  • 目標ベネフィット
  • 戦略の整合性
  • ベネフィット実現の時間枠
  • ベネフィット・オーナー
  • 評価尺度
  • 前提条件
  • リスク

以下、これらの項目を詳しく見ていきましょう。

目標ベネフィット

ベネフィット・マネジメント計画書では、開始したプロジェクトがどのような利益や恩恵を生むのかを明確に定義していきます。この目標が「目標ベネフィット」です。
例えば「○○システムによる△△業務の時間を毎日30分削減する」「Webサイトに予約システムを導入することにより、利用者を毎月30人増加させる」などです。
後に述べる「評価尺度」にも言えることですが、目標は数値で表せるものにしておいたほうがよいでしょう。
「○○システムにより、お客様に感動を与える」「ブランド力を向上させる」というような定性的な目標ではなく、それらを裏付けるような定量的な目標を立てていきましょう。

戦略の整合性

ベネフィット・マネジメント計画書に記載する「戦略の整合性」とは、これから進めていくプロジェクトが、その組織の全体的な戦略の中でどのような役割を担っているのかを示すものです。
先ほど「目標ベネフィット」の例として、 「○○システムによる△△業務の時間を毎日30分削減する」 という目標を掲載しましたが、例えばその組織の戦略が「業務効率化による残業時間の削減」であれば整合していますが、「ブランド力の向上と認知度のアップ」であれば整合性は取れていません。
組織の戦略との整合性がとれていないプロジェクトをいくら成功させても、その組織は目指した方向に向かって成長はしません。
プロジェクトとは、事業戦略で考えるポートフォリオの構成要素の一つであるという意識をもっていなければならないということでしょう。

ベネフィット実現の時間枠

「ベネフィット実現の時間枠」とは、プロジェクトがどのタイミングでどのような利益・便益を発生させるのかをまとめたものです。
プロジェクト完了後、1年以内に得られるような短期的なベネフィットは何か?、それ以降に得られる長期的・継続的なベネフィットは何か?ということを考えていきます。
例えばオリンピックを誘致すると、短期的には旅行客の増加や建設ラッシュによる経済効果が見込まれ、オリンピック終了後にはオリンピックの記念地になるという観光力のアップが期待されます。
こうして、プロジェクトが短期的・長期的・継続的にどのようなベネフィットを与えるのかをベネフィット実現の時間枠では記載していきます。

ベネフィット・オーナー

ベネフィット・オーナーとは、このプロジェクトで得られるベネフィットを監視、記録、および報告する責任者のことです。
プロジェクトマネジャーやプロジェクトメンバーは原則プロジェクトが完了すれば、その任を解かれます。そのため、プロジェクトの進行と関わらず、このプロジェクトから得られる利益・便益を監視し、報告するメンバーを定めておこうというものです。

評価尺度

ベネフィット・マネジメント計画書に記載する「評価尺度」とは、ベネフィットを示すために使用される指標のことです。
単純に「売上」「時間」などの数値を評価尺度にすることもありますが、何かしら数式に当てはめて出力された数値を評価尺度にすることもあるでしょう。

前提条件

前提条件とはその名の通り、前提条件を示すものです。

リスク

ベネフィット・マネジメント計画書に記載するリスクとは、期待しているベネフィットを実現させる際に発生することが懸念されるリスクについてまとめられたものです。
リスクについては、プロジェクトマネジメント計画書等の作成の際に考えていくリスク管理と同等のものと捉えて大過ないでしょう。

1PMBOK第6版、33頁。