SECIモデルとは何か?知識変換の4つのモードを事例を踏まえてわかりやすく解説

2020年9月17日

動画でも解説しています

今回のSECIモデルについては動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。

SECIモデルの概要

SECIモデルのイメージ画像

SECIモデルとは、個人が持つ知識や経験がどのように組織で共有されていくのかを体系化したものです。
SECIモデルは個人の知識や経験を組織で共有して経営に活かすための経営管理手法、ナレッジマネジメントの基礎理論として、1990年代に野中郁次郎(一橋大学名誉教授)と竹内弘高(ハーバード大学経営大学院教授、一橋大学名誉教授)によって提唱されました。両氏の著書である『知識創造企業』では「知識変換の四つのモード」として登場しましたが、その後SECIモデルという名称で定着しました。
SECIモデルの登場以前にも、それまでにも個人が持つ知識を経営に活かすという論調はありました。
しかし、単に知識を処理するのではなく、経営に活かす、つまり知識を創造に繋げる重要性を指摘して体系化したのは、野中郁次郎らが初でした。

暗黙知と形式知とは

SECIモデルを紐解くキーワードは「暗黙知」「形式知」です。
個人が持つ知識や経験を暗黙知と呼び、組織で共有できる形になった知識や経験を形式知と呼びます。
SECIモデルでは、暗黙知が形式知に変換されることで、個人の知識や経験が組織で共有できるようになると考えます。
ここからは、これら2つのキーワード、暗黙知と形式知について説明していきます。

暗黙知とは

暗黙知とは、個人が持つ知識や経験、そこから得た独自のノウハウやコツのことです。
例として、職人の技を想像するとわかりやすいでしょう。
名工と呼ばれるような人物には、その人が経験の中で培ってきた独自のノウハウやコツがあるはずです。
しかし、このようなノウハウやコツは、言葉や文章では表現できないものが多いと思います。
別の例として、優れた成績を上げている営業マンにも何らかの販売のコツがあるはずですが、いざそのコツを説明しろと言われても、言い表せないことも多いでしょう。
こうした言葉や文章にできない情報が、暗黙知です。

形式知とは

暗黙知の逆で、言葉で言い表せたり、明文化できる情報が、形式知です。
形式知は言葉で表せるので、マニュアル化することができます。
例として、プラモデルの組立を想像するとわかりやすいでしょう。
プラモデルには組立説明書が用意されているので、それを参照すれば、誰でも人に教えられなくとも組み立てられます。
別の例として、企業のクレーム処理も、たいていは対処マニュアルが用意されています。
社内の誰が顧客からクレームを受け付けても、同じ流れで対処できるようになっているはずです。

ちなみに、プラモデルの組立にしてもクレーム処理にしても、同じマニュアルを参照しているのに人よりも上手くできる人がいます。
これは、その人独自のノウハウやコツ、つまり暗黙知が活かされています。

SECIモデルの4つのプロセス

SECIモデルのイメージ画像

SECIモデルでは、暗黙知が形式知に変換されて経営に活かされるためには、以下の4つのプロセスを順にたどると考えます。

  1. 共同化(S)
  2. 表出化(E)
  3. 連結化(C)
  4. 内面化(I)

SECIモデルの名称は、これら4つの英語の頭文字を並べたものです。
ここからは、これら4つのプロセスの中身を見ていきましょう。

共同化

共同化とは、個人から個人へ暗黙知が移転するプロセスのことです。
暗黙知は言葉で表せないので、経験を共有して伝えられます。
経験の共有には、以下の事例が挙げられます。

  • トップ営業マンと営業回りをする
  • 上司の指導を受けながら顧客対応をする
  • 優れたプログラマーとペアでプログラミングを行う

共同化では、同じ組織のメンバーと一緒に経験することで、個人が持つ言葉にできない知識や経験、ノウハウやコツを身体で覚えていきます。

表出化

表出化は暗黙知を言語化して形式知に転換するプロセスです。
個人から個人へ暗黙知を移転できたとしても、体得した暗黙知を言葉にできなければ、組織として知識を共有することは不可能です。そこで、表出化のプロセスでは暗黙知を言語や図表として形式知に転換し、他の社員と共有します。
例として、以下の方法があります。

  • 得られた知識を文章化して、ミーティングで報告する
  • グループ演習で知識のアウトプットを行う
  • 手法や手順を詳細に分析し、フローチャート化する

連結化

連結化は言語化された形式知を組織の形式知に変換するプロセスです。
グループウェアや共有ファイルサーバーを利用し、言語化された形式知を組織として利用できるように展開します。
そして、展開された複数の形式知を組み合わせ、新たな形式知を創り出します。
連結化には以下の事例が挙げられます。

  • 成功した企画アイデアに基づき、新たな企画書を作成する
  • 社内のデータを組み合わせ、改めて整理する
  • 複数のコンセプトを結び付け、大きなモデルとして体系化する

内面化

内面化は組織の形式知を個人の暗黙知に転換するプロセスです。
内面化のプロセスでは、新たに創り出された形式知を個人が実行し、組織の形式知を個人レベルの暗黙知として獲得します。
暗黙知の獲得には、以下の事例があります。

  • マニュアル化された作業を覚え、マニュアルを参照しなくても作業できるようになる
  • 新たに体系化された手法を業務に取り入れ、問題なく業務をこなせるようになる
  • 実際の成功体験に基づいた物語を作成し、個人が読めるようにする

最後の物語の事例は、他2つの事例と比べて異質に感じるかもしれません。
これは、成功体験を追体験することを意味しています。
形式知を暗黙知として自分のものにするためには、必ずしも経験する必要はありません。
臨場感あふれる文章で物語を書けば、それを読んだ個人は、あたかも自分が経験しているかのように成功体験をたどることができます。
そして、そのような物語は組織の形式知として蓄えられ、物語を読んだ個人の暗黙知に転換されていきます。

4つのプロセスの循環

以上、SECIモデルの中の4つのプロセスを見てきました。
重要なことは、共同化、表出化、連結化、内面化の4つのプロセスは、一巡して終了ではないことです。
内面化された個人の暗黙知が新たなスタート地点となり、再びSECIモデルが始まります。
SECIモデルは、螺旋を描くようにグルグルと回り続けることでどんどん知識を進化させていき、絶え間ない創造を生み出していきます。

SECIモデルのまとめ

SECIモデルは、個人の暗黙知を組織のものとして活用するものです。
つまり、個人が持つ知識や経験は、組織にとって重要な財産というわけです。
それにもかかわらず、現実には個人の暗黙知のままとなっている場合は多いと思います。
どのような組織にも、必ず暗黙知は眠っているはずです。
貴重な暗黙知を探し出し、SECIモデルを通じて経営に活かすことができれば、組織に大きな利益を生み出せるでしょう。

参考文献

  • 大西幹弘「暗黙知とは何か(2)」名城大学『日本ナレッジマネジメント学会東海部会季報』 2007年10月、2008年1月、1~8頁。
  • 城川俊一「知の創造プロセスとSECIモデル-オープン・イノベーションによる知識創造の視点から-」東洋大学『経済論集』33巻2号、2008年3月、27~37頁。
  • 野中 郁次郎(著)、竹内弘高(著)、梅本勝博 (訳)『知識創造企業』東洋経済新報社、1996年。