発注先選定分析・発注先選定基準とは何か?ベンダー選定の手法を解説

2020年6月23日

発注先選定分析・発注先選定基準の概要

発注先選定分析の画像
発注先選定分析の例

発注先選定分析とは、入札書を受領した後や提案を受けた後、発注先選定基準と照らし合わせて納入者を選定する手法をいいます。
定常業務やプロジェクトに必要な物資やサービスの調達を行う際は、様々な納入者の中から、最適な業者を選択しなければなりません。しかし、選定方法が主観的であったり、一面的であったりすると、状況にふさわしくない納入者を選んでしまうことも少なくありません。
そのため、発注先選定分析を行うことによって、主観的ではなく客観的に、そして多面的に複数の業者を項目別に評価していき、比較していき、現在の状況に最適な納入者を選んでいく必要があります。
この分析の際に使用する基準が発注先選定基準です。発注先選定基準とは、入札に参加した納入候補者をどのような基準で選ぶのかを定めたものです。
例えば納期であったり、納入候補者の経験であったり、会社の業績であったりと、様々な軸で評価していきます。
発注先選定基準はRFPに盛り込んでしまうことも多く、提案を募集するのと同時に、選定基準も明らかにするのが一般的な流れです。

発注先選定分析の必要性

客観的で多面的に発注先を選ぶことができる

調達を行うために納入者を募ると、予想に反して多数の業者が提案に来ることがあります。
この際に選定基準があいまいであると、「営業の人の対応がよかった」という主観的な評価や「今回のプロジェクトと類似した実績が多かった」という一面的な評価で業者を選んでしまうことになりがちです。
複数の業者を見極めるためにも、発注先選定基準を策定し、それに基づいて客観的に評価すれば、よい納入者を選ぶことができます。
衝動的な契約をして後悔しないためにも、発注先選定分析を行うことが大切です。

次の発注に活かすことができる

発注先選定基準で決めた発注先に依頼した結果(効果)を省みることで、次に発注する際の教訓となります。
つまり、発注先選定基準が納入者選定における計画のPDCAの役割を果たしてくれます。
例えば、選定した時には「すばらしい業者」と感じた納入者が、いざ製品を受け取ったり、サービスを受けると「今一つだった」「あまりよい業者ではなかった」ということがあります。そのような時に発注先選定分析の資料が残されていれば、「何を見落としていたか」「次はどのような基準を設ければよいのか」を組織内で議論することができます。
このように、PDCAサイクルを回すことで、次のプロジェクトでは、どのような発注先に依頼すればよいのかを明確にすることができます。

納入者の責任を明確にすることができる

契約書に署名・押印する前に発注先選定分析基準や発注先選定分析の結果を納入者に見せることで、責任と権限、適用条件と法規、技術上のマネジメントの仕組み、契約に伴う資金および購入価格などを改めて確認し合うことができます。
この際、発注先選定分析の中で評価のよくない項目があれば、納入者にその事実を伝え、対応策を講じることも大切です。
例えば、「技術的には申し分ないが資本力に不安がある。2年間のプロジェクトを全うできるか」「ビジネスの規模がこれまでと異なるが、本当に問題がないか」など、懸念材料を契約の前に確認し、対応策が用意されてから契約を行うことで、トラブルの少ない調達活動が実現できます。

発注先選定分析の進め方

実際に発注先選定分析は、どのように行うのでしょうか?
ここからは発注先選定分析の流れを見ていきましょう。

発注先選定基準の策定

発注先選定分析を行うためには、発注先選定基準をあらかじめ策定しておく必要があります。
発注先選定基準では、例えば以下のような項目を評価基準にしていきます。

  1. 価格:見積金額を取得する(どのような作業が含まれているかの内訳も確認する)
  2. ニーズの理解:発注者側の要求の把握ができているか、提案書や質疑・応答から確認する
  3. 作業内容の理解:追加料金が発生しないように、提示金額の作業範囲を明確にする
  4. リスク:作業上のリスクを説明してくれる
  5. マネジメントの仕組み:マネジメントに対する取り組みを確認する
  6. 技術的な取り組み:実績や提案から推し量る
  7. 保証:瑕疵担保の期間やトラブル発生時の対応を確認する
  8. 資本力:安心して取引できるか資本力を確認する
  9. 生産能力と意欲:熱意を持って取り組んでくれる業者かを見極める
  10. ビジネス規模:会社のビジネス規模を確認する
  11. 過去の実績:過去の実績を確認する
  12. 知的財産権・所有権:モノであれば確認は簡単。ソフトウェアの場合は契約書でルールを明確にしなければいけない

これらの内容は一例にすぎません。最近では環境への配慮や働き方改革にどのように取り組んでいるのかも基準にすることがあります。
業務内容やプロジェクトの内容に応じて、適切な項目を選ぶ必要があります。
この発注先選定基準はRFPなど、納入者を募る際に告知し、選定基準を明示しておくのが一般的です。

評価の方法を定義

次に、策定した発注先選定基準に対し、どのような評価を行っていくのかを考えていきます。
例えば「すべて1~5点で評価する」「1~5の項目は10点満点で評価し、残りの項目は5点満点で評価する」など、評価の方法を定義していきます。
評価については、一人が採点をするのではなく、複数人で評価を行い、その平均値を使用するのが一般的です。
また、必要があれば「どれか1つでも2以下の点数があれば納入者として選ばない」などという基準を用意しておいてもよいかもしれません。

納入者の選定

発注先選定分析の画像
参考画像1

発注先選定基準と評価の方法が決まれば、参考画像1のように、発注先選定基準の各項目と提案をした業者でマトリックス図を作成し、発注先選定分析を行います。
各業者について発注先選定基準の項目を採点し、総合得点を比較し、総合得点の最も多い業者を納入者として選びます。
このようにマトリックス図を作成し、各業者を比較してみると、客観的に業者を見ることができ、適切な納入者選びを実現することができます。