【スクラム開発の体制】プロダクト・オーナー、スクラム・マスター、スクラム・チームを解説

2021年3月11日

スクラム開発の体制の概要

スクラムの体制のイメージ画像

アジャイル開発で用いられる手法の1つであるスクラム開発を進めていくには、以下の体制を整えておく必要があります。

  • プロダクトバックログを管理する「プロダクト・オーナー」
  • 開発するメンバーを集めた、3~9名程度の「スクラム・チーム」
  • 開発がうまくいくように支援する「スクラム・マスター」

今回は、このスクラム開発の体制について解説していきます。

プロダクト・オーナー

プロダクト・オーナーはプロダクトに責任を持ち、折衝力も必要となる役割です。

プロダクト・オーナーは、プロジェクト立ち上げの段階からスクラム開発の多くに関わります。
立ち上げの時期にはプロジェクトの目標や事業部門、顧客との合意を行います。スプリント期間の設定や開発メンバーやスクラム・マスターを選定し任命することも、重要な役割の1つです。

開発が始まった後も、プロダクト・オーナーは以下のような様々な役割をこなすことが求められます。

  • 顧客からの要求項目である「プロダクトバックログ」を管理する
  • 顧客や社内の他部門に対して、機能のヒアリングや交渉、調整を行う
  • プロダクトバックログの見積もりや優先度をつけた並び替えを、開発チームと共同で行う
  • スプリントごとに実現する機能を決定し、計画を立てる
  • 開発した機能をリリースするかどうか決定する
  • 顧客に対して、開発したシステムのデモを行う

プロダクト・オーナーは、単に机上でプロダクトバックログを管理していればよいものではありません。
責任を果たすためには、上記に挙げた多種多様な役割を担う必要があります。
折衝力やネゴシエーションも求められる職務といえるでしょう。

一方で開発の進め方や個々の開発メンバーの役割を決める、デイリースクラムを主導的に開催するといった職務は担当しません。これらは開発チームが主導して行います。またスプリントの期間中に出た課題の洗い出しは、開発チームとスクラム・マスターが主体となって担当します。

スクラム・マスター

スクラム・マスターは、開発チームを支援する役割を担います。

スクラム・マスターは以下の特徴を持っています。

  • プロダクトバックログを効果的に管理し、調整する方法を支援する
  • 自ら質の高いシステムを開発できるように、開発チームを支援する
  • 割り込むタスクやスプリント途中での開発項目の変更から、開発チームを守る。外部と折衝を行う場合もある
  • 開発チーム内、またプロダクト・オーナーと開発チーム間で円滑なコミュニケーションが行われるようサポートする
  • メンバーの相談に乗り、サポートする
  • 開発の障害となる、さまざまな課題を解決する
  • 開発手法や進め方に関する決定は行わない(開発チームで決める)

あれこれ細かく指示を出すのではなく、自律的に行動できるようサポートすることがスクラム・マスターの重要な役割です。プロダクト・オーナーや開発チームを、さまざまな形で支援する業務といえるでしょう。

周囲のサポートをしていくリーダーはサーバント・リーダーと呼ばれますが、スクラム・マスターはサーバント・リーダーであることが求められます。
このサーバント・リーダーについては、下記の記事でも解説していますのでご参照ください。

スクラム・チーム

スクラム・チームは、プロダクト・オーナー、スクラム・マスター、開発チームの3者で組まれるチームです。

スクラム開発にはプロダクト・オーナーやスクラム・マスターと別に、実際にシステムを開発する「開発チーム」もあります。この3者を合わせたチームのことを、「スクラム・チーム」と呼びます。

スクラム・チームは、以下に挙げる4つの特徴を持っています。

  • ベストな開発の進め方を自力で選択し、実行する
  • プロダクトを繰り返し提供し、進化させる
  • 柔軟性や創造性、生産性を発揮し、顧客が求めるシステムを提供する
  • 構成人数は数名から多くても10名程度。大規模開発のように多人数とならない

このうちプロダクトリーダーとスクラム・マスターは、1人で兼任しないことが推奨されています。
それは両者において、以下の事情があるためです。

  • プロダクト・オーナーは顧客との折衝があるため、顧客の立場を優先してしまい、開発チームに無理な要求をする可能性がある
  • スクラム・マスターは開発チームと密にコミュニケーションを取っているため、開発チームの事情を優先する可能性がある

スクラム・チームがうまく機能することにより、各メンバーは仕事に対する満足感と充実感を得られます。また顧客は優先して使いたい機能を早く使えるようになるとともに、開発が進むごとにシステムが進化する喜びを感じることができます。

参考