学生症候群とは何か?スケジュール遅延の原因と解消法

2019年11月10日

学生症候群とは

学生症候群とは、いくら時間的に余裕があっても締め切りギリギリにならないと着手しないという人間の性質のことを指します。
どれだけ時間があっても終わらせられない夏休みの宿題や、卒業がかかっていても学期末にしか進まない卒業論文に見られる現象のことです。
社会人になっても、期日ギリギリになるまでタスクに着手しない人はこの学生症候群にかかっているのかもしれません。
今回はこの学生症候群の内容と解消法を解説していきます。

プロジェクトを遅延させる学生症候群

学生症候群の例
学生症候群の例。工程Bは5日の余裕があると思われたが……。

プロジェクトを遅延させる原因は多々あるものの、この学生症候群が主因となることも少なくありません。
例えば完了まで10日かかるという工程Aと5日で終わる工程Bで構成されるCというシステムを開発するITプロジェクトがあるとします。
このプロジェクト・マネジャーは工程Bのプログラマーに「期限は工程Aが完了する10日後」である旨を伝えていたとしましょう。
工程Aが10日かかるため、 「自分が担当する工程Bは工程Aに比べて5日の余裕があるんだな……」と工程Bのプログラマーは考え、 実際に工程Aがスタートしてから、5日後に工程Bに着手したとします。

学生症候群の例02
工程Bに問題が発生し、結局7日かけて完了させた。工程Aと工程Bがそろうまで、12日かかってしまい、Cの完成は2日遅れた。

当初は順調に進んでいた工程Bでしたが、開始から3日目に問題が発生し、結局完了までに7日かかってしまい、工程Aと工程Bの両方の完成を必要とするシステム・Cの完成は2日遅れてしまいました。
工程Bのプログラマーが前もって着手していればトラブルが発生してもCの完成は遅れませんでしたが、ギリギリになってから着手した結果、スケジュール遅延が発生してしまいました。
このような(あるいはよりひどい)学生症候群がプロジェクトで発生することはよくあり、スケジュールを遅らせる原因となっています。

学生症候群の解消法

このようなプロジェクトで発生する学生症候群にはどのようにして対応していかなければならないのでしょうか。
学生症候群の解消法としては、各作業ステップや工程ごとに細かく期限を設定することを止めるという手法があります[1]エリヤフ・ゴールドラット(著)、三本木 亮 … Continue reading
普通に考えると、細かく期限を区切った方が、人は期日を気にして作業を進めるような気がします。しかし、多くの場合「あと10日余裕がある」という都合のいい部分だけが作業者の頭に残り、結果として学生症候群に囚われてしまいます。
そのため、期限を細かく設定するのではなく、作業ができる状態ならすぐに作業を進めていくという手法を採る方が学生症候群を予防することができるというものです。
例えば上記の例であると、プロジェクト・マネジャーは工程Bのプログラマーに対して「期限は工程Aが完了する10日後」と伝えていましたが、このようにスケジュールを伝えるのではなく、工程Bの担当プログラマーが今他の作業で動けないなら着手せず、動けるようになったら着手してもらうよう、プロジェクト・マネジャーが差配することで、学生症候群を解消することができるでしょう。

1エリヤフ・ゴールドラット(著)、三本木 亮 (訳)『クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?』ダイヤモンド社、2003年、249頁。