【詐欺の手口!】ローボール・テクニックを解説(『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』より)

2023年7月7日

一貫性とコミットメントを使う際のポイント「ローボール・テクニック」

ローボール・テクニックとは、商品やサービスを提供する際に、最初に魅力的な条件提示をしておきながら、後から条件を追加したり、変更したりする手法です。
最初に受け入れてしまうと、後から条件が変わっても、結局受け入れてしまう傾向があります。

たとえば、ある車の販売店では、とてもお買い得な値段(他店よりも400ドル安い)を最初に提示して、後でそれを撤回して正規の値段で購入してもらう手法が使われました。
彼らの目的は、最初に安い値段を提示した時点で、「車を買う決心をさせる」ことです。
決心をさせた上で、何枚もの契約書にサインさせ、試乗をすすめます。そして本契約の段階になって、販売員の上司がやってきて値段のミスを指摘します。

客は「400ドル出せば車が買える」「他店とも同じ値段だ」と言われ、最後には「お客様が選んだのですから」などと言われます。もうこの段階では、最初の決定を覆しづらくなっています。
この手法はコミットメント一貫性の原理に基づいており、最初のコミットメントを取り消すことに抵抗を感じる心理を利用しています。
コミットメント、一貫性の原理については、下記の記事もご参照ください。

ローボール・テクニックが効果的に作用するメカニズム

ローボール・テクニックには、状況が変わって、交渉がたとえ自分に不利になったとしても、以下の過程を経ることで、その取引に固執してしまう効果があります。

取引に固執する過程

報酬によりコミットさせられる

自己イメージが変わる

コミットメントを正当化する

この過程で最初に伝えられた報酬を取り除いてしまったとしても、一旦コミットしてしまうと自己イメージが変わり、自分でそのイメージに合った言動をしようとします。
その結果、コミットメントを正当化することとなり、報酬がなくなってもコミットメントが残ることがわかっています。

参考

  • ロバート・B・チャルディーニ(著)、社会行動研究会(翻訳)『影響力の武器[第三版]―なぜ、人は動かされるのか』誠信書房、2014年