フレーミング効果とは何か?表現によって選択が変わる認知バイアスを解説

フレーミング効果とは

ダニエル・カーネマン
ダニエル・カーネマン
(画像はWikipediaより)

フレーミング効果(Framing effect)とは、選択肢が肯定的または否定的な意味合いで提示されているかどうかにもとづいて、人々が選択肢を決定するという認知バイアスのことです。
言い換えれば、フレーミング効果は同じ状況であっても、表現の違いによって印象が異なるという現象です。

この効果は1980年代に心理学者であるダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)エイモス・トベルスキー(Amos Tversky)が、「助かる人命・助からない人命」のアンケートを取り、実証しました。

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの実験

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーはアンケート調査として「伝染病で600人の命が危険にさらされていると仮定した場合、対策1と対策2のどちらかを選択しなければならないとしたらどちらを選ぶか」という質問をしました。

質問1

対策1:200人が助かる
対策2:600人全員が助かる確率が3分の1、全員が死亡する確率が3分の2

この質問1では、過半数以上の人が、200人の命が確実に助かる「対策1」を選んだと言われています。

しかし、以下の質問2のように、少し表現を変えると違う結果になりました。

質問2

対策1:400人が死亡する
対策2:600人全員が死亡する確率が3分の2、1人も死なない確率が3分の1

この質問になると、ほとんどの人が「対策2」を選択します。
この質問1と質問2は、意味する内容は同じです。たとえば、質問1の対策1は「600人中200人が助かる」ということなので、「600人中400人が死亡する」という質問2の対策1と同じ意味になります。
しかし、質問2では「死亡する」というネガティブな印象が強いため、対策1は選ばれず、対策2が選ばれるようになります。

このように、表現を変えただけで回答が変わってしまうというのが、フレーミング効果です。

フレーミング効果の活用

身近なところにも、フレーミング効果は使われています。
たとえば、花粉に悩まされている人が、花粉対策のマスクの購入を検討しているとして、どちらを買いたいと思うか考えてみましょう。
「95%花粉カット」と書かれている商品Aと、「入ってくる花粉は5%のみ」と書かれている商品Bがあります。この場合、商品Aのマスクを買いたいと思う人が多い傾向があります。
このように広告や宣伝にも、フレーミング効果は使われています。

プロスペクト理論とフレーミング効果の関係

ダニエル・カーネマンらは、「プロスペクト理論」という考えも提唱しています。
プロスペクト理論は、有利な場合は安定志向で、不利な場合はリスク志向になるという人間の性質を表しています。利益を得られる場合は確実な選択肢を選び、損失を考える場合は不確実な選択肢を選ぶという傾向です。
フレーミング効果はこのプロスペクト理論とも関係しています。

つまり、人間は利益を考える場合は、確実なものを選びたがるため、上述の質問1のような選択肢であれば、対策1を選択します。
一方で、損失を考える場合はリスク志向になるため、質問2のようにネガティブな印象を受ける場合は、選択肢2を選ぶようになります。

誰かの思惑が介在している

今回はフレーミング効果について解説してきました。
広告や宣伝だけではなく、どんな情報にもフレーミング(枠組み)は、用いられています。
テレビ番組もそうです。表現を少し変えれば、印象が180度変わってしまうこともあります。情報は、「こういう印象付けをしたい」と誰かが考えて、表現が決定されています。
だからこそ、どのようなフレーミングの中で描かれている情報なのか見極めて、情報を判断することが大切です。

参考

書籍

  • ロルフ・ドベリ(著)、中村智子(翻訳)『なぜ、間違えたのか? 』サンマーク出版、2013年
  • ダニエル・カーネマン(著)、友野典男(監訳)、山内 あゆ子(訳)『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』楽工社、2011年

Webページ

  • https://en.wikipedia.org/wiki/Framing_effect_(psychology)(2023年3月20日確認)