WBS辞書とは何か?PMBOKに登場するWBSのクオリティが上がる手法を紹介
WBSとは
WBSとは、Work Breakdown Structureの略で「作業分解構成図」と訳されることが多いです。作業をより小さな作業へと分解していくことを繰り返し、作業の実行順序も含めて階層構造化するプロジェクト計画の手法です。
たとえば、ある企業がWebサイトを作ろうとした場合、表1のようなWBSが作成されます。
タスク | サブタスク | ワークパッケージ(※) | 担当 |
---|---|---|---|
000:Webサイト制作 | 010:ナビゲーションを作る | 011:トップページへのリンクを作る | 鈴木 |
012:会社概要ページへのリンクを作る | 鈴木 | ||
013:採用情報ページへのリンクを作る | 鈴木 | ||
014:お問い合わせフォームへのリンクを作る | 鈴木 | ||
020:トップページを作る | 021:トップページの画像を選ぶ | 佐藤 | |
022:トップページの文章を書く | 佐藤 | ||
030:会社概要ページを作る | 031:会社概要ページの画像を選ぶ | 田中 | |
032:会社概要ページの文章を書く | 田中 | ||
040:採用情報ページを作る | 041:採用情報ページの画像を選ぶ | 佐藤 | |
042:採用情報ページの文章を書く | 佐藤 | ||
050:お問い合わせフォームを作る | 051:お問い合わせフォームの画像を選ぶ | 鈴木 | |
052:お問い合わせフォームを設置する | 鈴木 |
WBSの目的は、プロジェクト遂行においてやるべき作業を漏れなく洗い出すことです。WBSを作成することで、全体の作業を把握することができ、見積や作業分担、スケジュール策定を行うことが可能になります。
このWBSについては、下記の記事で解説していますので、よろしければご参照ください。
WBS辞書とは
WBS辞書とは、WBSの各要素について詳細に記述したドキュメントのことです。
WBSに比べて聞きなじみのない用語かもしれませんが、PMBOKでは、プロジェクトの概要を適宜確認する資料として、しばしば名前があがります。
このWBS辞書の内容はWBSの各要素に紐づき、主に以下のような項目で構成されます。
- コードまたはアカウント識別子:WBSの各要素を一意に識別するコード。表1の000、011に当たります。
- 作業の説明:WBSの各要素の説明。
- 仮定と制約:他の作業やチームメンバーのバッティングなど、考慮すべき前提条件と制約。
- 担当組織:作業を担当する組織または責任者。
- スケジュール・マイルストーン:作業開始日、作業終了日やマイルストーン(中間目標点)。
- 関連するスケジュールアクティビティ:WBS要素に関連する親要素や先行要素、後続要素など。
- 必要なリソース:WBS要素に必要なツールや機器など。
- コスト見積:WBS要素を完了するために必要な時間。
- 品質要件:ISOや業界固有の標準化団体、またはプロジェクト独自の品質基準。
- 受入基準:WBS要素が許容範囲内で完了したと判断するための基準。
- テクニカルリファレンス:技術的に参照したガイドライン、マニュアルなど。
- 契約情報:契約についての詳細情報。
なぜWBS辞書が必要なのか
WBSには、プロジェクト全体の作業を俯瞰して見ることができるというメリットがあります。そのため各要素名は簡潔な方が好ましいです。各要素名だけでは多くの情報を伝えられないので、二次情報を伝達するための手段としてWBS辞書が必要となります。
特に複雑なプロジェクトになるほど、WBSは大きくなっていき要素の数はかなり多くなっていきます。場合によっては、何百もの要素がWBSに詰め込まれます。もしWBS辞書がなかったとしたら、各WBS要素の作業内容やスケジュール、品質要件があいまいとなります。メンバー間でも共通認識を持てず、プロジェクト進行に混乱をきたすでしょう。
どのようにWBS辞書を使うのか
WBS辞書には規定の形式はありません。テキストやスプレッドシートで管理する手法もあります。その場合は、コードまたはアカウント識別子で両者を関連付けます。
WBS要素とWBS辞書は連動しているため、WBS要素の内容に変更があれば、WBS辞書も修正されなければいけません。手動で変更、修正を加えるのは大変な手間であり、ミスが発生する可能性もあります。プロジェクト管理ソフトを使えば、WBS要素とWBS辞書をリンクさせることができるため変更、修正が容易かつ正確に行えるでしょう。