【初心者向け】IOWN(アイオン)とは何か?光電融合が変える未来の通信基盤(APN/DTC/CF)

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IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)構想は、日本電信電話株式会社(NTT)が主導する、次世代の情報通信および情報処理基盤構想です。
これは、従来のモバイル通信技術(5Gやその先の6Gなど)の単なる延長線上にあるものではなく、ネットワークからコンピューティング、さらには半導体チップ内部に至るまで、情報処理のあり方を根本から「光(フォトニクス)」ベースで再設計しようとする革新的な取り組みです[1]https://en.wikipedia.org/wiki/IOWN_Global_Forum 2025年10月28日確認

この構想は日本発祥ですが、その技術標準の策定とグローバルなエコシステムの構築は、国際的な標準化団体「IOWN Global Forum」によって推進されています。
同フォーラムは2020年、NTT(日本)、Intel(米国)、そしてSony(日本)の3社を創設メンバーとして設立されました。
この設立時の顔ぶれからもわかるとおり、IOWNは広範な技術基盤を目指しています。

今回は、ニュースなどで目にするようになった、この「IOWN」について解説していきます。

目次

IOWNが目指すもの

IOWN構想が目指すのは、現代のICT(情報通信技術)インフラが直面する根本的な課題、すなわち「電力の壁」の打破です。

[画像:従来の方法のイメージ]

AIの高度化、IoTデバイスの爆発的普及、メタバースのようなリッチコンテンツの常態化により、世界で処理・伝送されるデータ量は指数関数的に増加しています。

半導体を理解しよう

この電力消費量の問題を理解するには、半導体を知ることが大切です。
半導体については、下記の記事もご参照ください。

それに伴い、データセンターやネットワーク機器が消費する電力も飛躍的に増大しており、このままではICTインフラの維持自体が持続可能性の危機に直面すると指摘されています[2]https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/2053692.html 2025年10月28日確認

[画像:従来の方法とIOWN構想の違い]

この電力消費の根本原因は、従来のインフラが情報を「電気」で処理することにあります。
特に、プロセッサ内部や機器間でのデータ伝送速度を上げようとすると、電気抵抗による発熱と消費電力が指数関数的に増大します。
IOWNの技術的使命は、この「電気」による処理・伝送を、可能な限り「光」に置き換える(光電融合)ことで、電力効率を飛躍的に高めることにあります。

IOWNを支える技術

「電力の壁の打破」を実現するために、IOWN構想は以下の三位一体の技術要素によって構成されています[3]https://www.akkodis.com/ja/trends/insights/what-is-iown 2025年10月28日確認

IOWNを構成する技術
  1. APN (All-Photonics Network): ネットワークの全区間(エンド・ツー・エンド)を光で構成し、超低遅延・大容量・低消費電力を実現する通信基盤。   
  2. DTC (Digital Twin Computing): 現実世界の「モノ」や「ヒト」のデジタルツインをサイバー空間上に構築・再現し、それらを自在に掛け合わせることで、大規模な未来予測や社会シミュレーションを行うコンピューティング基盤。   
  3. CF (Cognitive Foundation): 上記のAPNやDTCを含む、あらゆるICTリソース(クラウド、ネットワーク、端末など)の配備・構成・運用を、一元的かつ自律的に最適化する管理基盤。   

まとめ:IOWNが切り拓く「光」の未来

今回は、NTTが提唱する次世代情報通信基盤構想「IOWN」について、その核心的な考え方と主要な技術要素を解説しました。

  • IOWN (Innovative Optical and Wireless Network): 従来の電気ベースの情報処理・通信の限界(特に電力消費)を打破するため、光(フォトニクス)技術を全面的に導入する構想。
  • 目指すもの: 超低消費電力、超大容量、超低遅延な情報通信インフラの実現。
  • 主要技術:
    • APN (All-Photonics Network): ネットワーク全体を光で繋ぐ。
    • DTC (Digital Twin Computing): 現実世界をデジタル空間で高度に再現・予測する。
    • CF (Cognitive Foundation): これらを含むICTリソース全体を最適に管理・運用する。

AIやIoTが社会に浸透し、データ量が爆発的に増加し続ける現代において、「電力の壁」は避けて通れない課題です。IOWNは、その根本的な解決策として「光電融合」を推進し、より豊かで持続可能な社会を実現するための鍵となる可能性を秘めています。

この革新的な構想は、今後の情報通信技術のトレンドを理解する上で、そして情報処理技術者試験においても、ますます重要度を増していくでしょう。

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