【今さら聞けない】半導体のキホンをわかりやすく解説 ~どのように作られているのか?そしてどこが作っているのか?~

2022年12月21日

動画でも解説しています

今回の内容については動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。

半導体とは何か?

半導体とは、もともとシリコンなどの「半ば電気を通す導体」を指す言葉です。
しかし今日、「半導体」と言った場合、集積回路などの半導体を使った部品や素子を指すようになってきました。

この記事では導体としての半導体を「半導体素材」、それを使った部品や素子を「半導体部品」として、半導体を解説していきます。

半導体は何に使われているのか?

素材としての半導体

電気信号でコンピュータ世界の2進数を表現するイメージ画像

物質には金属のように電気を通す「導体(伝導体)」とゴムのように電気を通さない「絶縁体」が存在します。
半導体とはその名のとおり「半ば電気を通す導体」で、導体と絶縁体の間に位置しています。

「半ば電気を通す」という半導体の性質を使うことで「電気を通す/通さない」を切り替え、電気信号を送る仕組みに用いられます。
これはコンピュータの世界が「0」「1」の2進数でできていることを利用しています。
半導体を使って電気を通せば「1」を、通さない場合は「0」というように半導体部品を作ることで、コンピュータを動かすことができます。

半導体素材として代表的なのが「シリコン」です。

美容整形のシリコンとは違う
美容整形で使われるシリコンのイメージ画像
美容整形で使われるシリコンは樹脂状の化合物

「シリコン」という名前を聞くと、人によっては美容整形などで使われるシリコンを思い浮かべるかもしれません。
しかし半導体素材のシリコンと美容整形で使われるシリコンは全く異なります。

英語にすると半導体素材のシリコンは"silicon"であり、美容整形のシリコンは"silicone"です。最後の"e"があるかないかという違いですが、大きな違いがあります。

部品としての半導体

半導体部品の一例のイメージ

シリコンなどの上にトランジスタやコンデンサなどを設置したものが集積回路(IC)などの半導体部品です。

半導体部品は今日のコンピュータには欠かせない部品で、パソコンやスマートフォン、ゲーム機器など、ありとあらゆる機器に使われています。

たとえばコンピュータやスマートフォンの頭脳の役割を果たす「CPU」や、情報を保存する「メモリ」、センサーなどの機器も半導体部品です。

こうしたことから以前より「半導体は産業のコメ」という表現がなされてきましたが、スマート家電やEV車の登場により、ますます半導体の需要は高まっています。

半導体はどのようにして作られるのか?

半導体素材 ~シリコンを例に~

代表的な半導体素材であるシリコンは、ガラスや陶磁器の主成分になっているぐらいありふれた存在です。
しかし、自然界にあるシリコンは酸化しており、半導体部品に使うような純粋なシリコンは人間が精製しなければ手に入りません。
ここからはシリコンの精製の流れを見ていきましょう。

まず、原料となる酸化したシリコンを1400℃以上まで上げて溶かし、液体化させます。

その後、液体化したシリコンを結晶化させ、シリコンの塊であるインゴットを作ります。

このインゴットを輪切りにし、薄い板状にしたものは「ウェハー」と呼ばれます。

シリコンのインゴットの写真
シリコンのインゴット(画像はWikipediaより)

半導体部品ができるまで

ウェハーにトランジスタやコンデンサなどを組み込むことで半導体部品が作られます。

半導体部品の生産は「設計」「製造」の2つの工程に分けられます。
設計の工程では、ウェハーの上にどのようなパーツを組み込むのかを考えていきます。
そして設計した内容に沿って、実際に半導体部品を形にするのが製造の工程です。

製造の工程はさらに「前工程」「後工程」に分けられます。

前工程

製造の前工程はウェハー上に回路を形成し、問題がないか検査するまでの工程を指します。

後工程

後工程は、ウェハー上のチップを切り取り、製品の形にしていくまでの工程です。

ファブレスとファウンドリ

半導体部品の生産は一社で設計から製造まで行われるとは限りません。
設計だけを担うファブレス、製造の前工程を行うファウンドリ、後工程を担当するOSAT(Outsourced semiconductor assembly and test)が存在します。

ファブレス企業として有名なのがアメリカのクアルコムやブロードコム、エヌビディアです。
また、ファウンドリとして有名な企業は台湾の台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子です。
とくにTSMCの技術力は群を抜いており、アメリカや日本などで工場の誘致が図られています。

世界の中の半導体

半導体の生産は多くの国が関係しています。
たとえばシリコンを精製するために必要な酸化シリコンは中国やノルウェーで産出されますが、ウェハーにするのは日本や韓国、台湾です。

ウェハーを用いて半導体部品にするまでにも様々な材料が必要になりますが、たとえばレアメタルはロシアで、加工のために使うレーザーに使うネオンはウクライナで産出されます。

参考

  • 太田泰彦『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』日本経済新聞出版、2021年
  • 竹内淳『高校数学でわかる半導体の原理―電子の動きを知って理解しよう』講談社、2007年
  • 高乗正行『ビジネス教養としての半導体』幻冬舎、2022年