試用期間中の従業員はどのように解雇されるのか?試用期間中の解雇と、一般の解雇との違いを解説

2023年3月20日

はじめに

新たに従業員を採用する際、「選考だけではどんな人物かしっかり分からなかったので、試用期間を設けて少し働いてもらってから本採用したい」と考える方も多いでしょう。
会社にとって試用期間中の従業員が合わないと感じた場合、解雇は簡単にできるのでしょうか。
この記事では、試用期間中の解雇について、一般の社員の解雇との違いを中心に解説していきます。

試用期間中も試用期間終了後も、解雇は簡単にはできない

試用期間中であっても、解雇は簡単にできない

試用期間中であっても、解雇は、会社側がいつでも自由に行えるというものではありません。
解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません(労働契約法第16条)。

試用期間後の本採用拒否も解雇にあたる

「採用後、試用期間を3カ月設けて、その後本採用とする」という形で従業員を採用するような場合、3カ月後、「やはり本採用はしないでおこう」となった場合も「解雇」にあたります。

解雇については、労働者保護の観点から細かいルールがあり、試用期間であっても、試用期間を満了したタイミングであっても、解雇の難しさは一般社員とそう大きく変わらないと言えるでしょう。

試用期間中の解雇と、一般の解雇との違い

前提ルール:解雇予告

原則、会社側が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をしなければならなりません。
30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとされています(労働基準法第20条)。

試用期間中は、14日までは解雇予告は適用除外

ただし上記の解雇予告の規程は、試用期間中で、かつ、雇用されてから14日までの者には適用しないとされています。すなわち、試用期間が始まってすぐに解雇する場合は解雇予告の手続きや解雇予告手当の支払いの必要がありません。

試用期間中の解雇における注意

一方、14日を超えて引き続き雇用されている場合は、解雇予告は必要となります。
たとえば、就業規則や雇い入れ時の契約で「入社後3カ月間は試用期間とする」と定めていたとしても、試用期間中とはいえ14日を超えた時点で、解雇予告の規程が適用されます。

解雇予告の適用除外

試用期間中の解雇以外にも、解雇予告のルールが適用除外されるケースを以下に紹介します。

  1. 日雇い労働者
    ただし、1カ月を超えて引き続き働くことになった場合は、解雇予告が必要となります。
  2. 2カ月以内の期間を定めて使用される者
  3. 季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される者

「2」「3」の場合においても、最初に定めた所定の期間を超えて引き続き働くことになった場合は、解雇予告が必要となります。
たとえば、40日間の契約をしたなら、40日を超えたらその日から、解雇予告の規程が適用されます。

解雇予告が適用除外されるケースと試用期間を併用する場合は?

たとえば、「50日間の雇用契約」を結び、かつ「最初の14日間は試用期間とする」と就業規則や契約で定めていたとしましょう。
この場合は、雇い入れから14日を経過したあとに解雇する場合であっても、所定の期間(この場合は50日間)を超えていない場合は、解雇予告又は解雇予告手当の支払いはしなくてもよいとされています。
すなわち50日間を超えて引き続き働き続ける場合から、解雇予告の手続きが必要となります。

試用期間とはいえ、スムーズに解雇が進むかどうかは別問題

ただし、ここまで紹介した試用期間中の解雇予告のルールを守ったとしても、スムーズに解雇が進むかどうかとは別問題であると言えます。

解雇は客観的に正当な理由があり、社会通念上相当と認められなければ実施できません。
解雇された従業員が「不当解雇」を訴えて裁判を起こした場合、日本の裁判では「解雇に正当な理由があった」と認めてもらうことはかなり難しい状況にあります。
試用期間においても、本採用の従業員と同様、解雇は慎重に行う必要があるといえるでしょう。

従業員の解雇については、下記の記事もご参照ください。

参考