どのような時なら解雇ができる?従業員の解雇を考える際のポイントについて解説

2023年2月3日

はじめに

「チームに問題があるメンバーがいるんだけど、解雇ってどういう時にできるんだろう?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
近年では、イーロンマスク氏がtwitterを買収し、大量の社員を解雇したことが大きなニュースになりました。
日本支社の社員も解雇され、「日本でも突然解雇されることってあるんだ」「自分の会社は大丈夫だろうか?」と感じた方も多いかと思います。
この記事では「日本ではどのような時に解雇が可能なのか?」という視点で、解雇について解説していきます。

解雇の種類とそれぞれの特徴

まずは「解雇」そのものについて、確認していきましょう。

解雇とは使用者(会社側)の一方的意思表示による労働契約の解除をいいます。
解雇には、以下に挙げるような種類があります。

解雇の種類
  • 普通解雇
  • 整理解雇
  • 懲戒解雇

ここからは、これらの解雇について、補足説明をしていきます。

普通解雇

普通解雇とは、従業員の能力不足や、パワハラなど勤務態度に問題がある、業務命令に違反するなど、従業員側の落ち度を理由とする解雇です。

整理解雇

整理解雇は、世間一般では「リストラ」と呼ばれる、余剰人員を削減する解雇です。普通解雇とは違い、整理解雇は従業員に落ち度がなく、会社側の事情による解雇です。

懲戒解雇

懲戒解雇は、業務上横領などの不正行為や、無断欠勤などのルール違反に対する制裁として行われる解雇です。
懲戒解雇は、会社が定めた「就業規則」に記載されている「懲戒事由」に該当する場合にしかできません。

解雇は裁判沙汰になることがある

解雇は、会社側がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません(労働契約法第16条)。

解雇された従業員が「不当解雇」を訴えて、会社相手に裁判を起こすケースは多くあります。
この場合、実際には日本の裁判所では、「解雇に正当な理由があった」と認めてもらうことはかなり難しい状態です。

普通解雇の場合、ある従業員に能力不足や規律違反を理由に解雇を言い渡したが、裁判所で正当な理由として認められず、不当解雇と判断されたケースは多々あります。
また、懲戒解雇の場合でも、従業員の問題行動が、あらかじめ定められていた就業規則の懲戒解雇事由に該当していても、「問題行動の程度に対して懲戒解雇は重すぎる」として不当解雇と判断されたケースも複数あります。

会社側が裁判に負けるとどうなる?

会社側が裁判で負けて、不当解雇として判断された場合は、「解雇時点までさかのぼった賃金の支払い」と「解雇した従業員の復職」を命じられます

裁判は2年ほどかかることもあり、そのため命じられる支払いの額は1,000万円を超えることも少なくありません。
解雇は会社にとってはリスクの高い最後の手段といえます。

トラブルを避けるためのポイント

専門家に相談し、証拠を集める

会社に顧問の社会保険労務士や弁護士がいれば、「正当な解雇とするにはどのような証拠が必要か?」を相談しておくことがよいでしょう。
正当な解雇として認められるには、従業員に解雇を言い渡すより以前に解雇事由となる「証拠集め」をしておくことが重要です。

普通解雇の場合

普通解雇の場合、
「会社がいつ、どういった指導をしたが、どんな問題点が改善されなかったか?」
「会社側は事態の改善を目指して配置転換を行ったが、どこに異動しても問題が解消されなかった」
などといった具体的な証拠を集める必要があります。

整理解雇の場合

整理解雇の場合は、
「経営上、人員削減が必要であること」
「解雇以外の経費削減手段はすでに実施済みであること」
「整理解雇の対象者を決める基準は客観的、合理的で、その運用も公正であること」
などを具体的に証明できる資料を準備しておく必要があります。

退職勧奨も視野に入れる

従業員との雇用関係を終了させる方法として、解雇とは別に「退職勧奨」という方法があります。
退職勧奨は、会社から従業員に退職するように説得することです。従業員に退職について同意してもらい、退職届を提出してもらって退職という流れになります。
解雇よりも退職勧奨の方が円満に雇用契約を終了することができます。

従業員側からすると、退職勧奨による退職は自己都合退職にはならず、「会社都合による退職」となります。
そのため、退職後に雇用保険による失業給付を受ける場合、給付制限期間なしで失業給付金を受け取ることができます

補足①:給付制限期間とは?

給付制限期間とはどのようなものなのでしょうか?
簡単に言うと「失業給付」がもらえるまでの期間のことです。失業給付とは、一般的に「失業保険」と呼ばれるものです。

自己都合退職の場合は、会社を辞めて、離職票が発行され、ハローワークで手続きをしたのち、待機期間7日間+給付制限期間2ヶ月を経過したあとでないと失業給付は支給されません。そのため、約2ヶ月間は収入を得ることはできません。

それに対して、会社都合による退職は、給付制限期間なし、つまり7日間の待機期間を経れば、失業給付がもらえるようになります。

補足②:失業給付について

失業給付の金額は人によりますが、60歳未満の方なら、賃金を日額換算した額の50%~80%を、失業している日につきもらうことができます。
解雇にしても退職勧奨にしても、従業員側からすると、会社を辞めたからといってすぐに生活に困るということはないはずです。
ただし失業給付をもらうには一定の条件(原則、過去2年間に通算して12ヶ月以上、会社を通して雇用保険に入っていること)が必要です。

まとめ

「辞めさせたい」と思う従業員がいたり、会社経営が傾いていて「誰かに辞めてもらうしかない」という状態になったりしても、すぐに解雇を考えると、トラブルや裁判沙汰になるケースがよくあります。
日本における労働関係の法律は基本的に「労働者保護」の立場で作られているため、会社側の立場は弱いと思っておいた方がよいでしょう。

解雇をしたい場合は、まずは専門家に相談し、解雇ではなく「退職勧奨」も視野に入れることが円満に解決するポイントです。

また、法律上、労働者側に非があっても解雇できないケースがあります。これに関してはこちらの記事をご確認ください。

参考