ステークホルダーの変化には要注意!関係部署のトップ(部長)へのプロジェクト認知活動が甘く、システム立ち上げ後に反発を受けた失敗談

2022年3月10日

ステークホルダーの関与がプロジェクトの成否を分ける

プロジェクトはさまざまなステークホルダーが関係しているため、ステークホルダーの関与がプロジェクトの成否を分けると言っても過言ではありません。
そのため、プロジェクト・マネジャーはステークホルダーと良好な関係を築くようにプロジェクトを運営していかなければならず、プロジェクトマネジメントのガイドラインであるPMBOKでも、さまざまツールや手法が紹介されています。

このステークホルダーはプロジェクト期間中に固定であるとは限らず、その変化に注意しなければ思わぬトラブルが発生することもあります。

今回はステークホルダーの変化への対応が十分ではなかったために発生したトラブルの失敗談を紹介し、その教訓を考えていきます。

失敗談

私は産業ロボットメーカーに勤務しており、手配システム(営業が受注した製品を、社内の生産管理部へ手配するためのシステム)刷新のプロジェクトマネージャーを担当しています。
今回は関係部署のトップ(部長)へのプロジェクト認知活動が甘く、システム立ち上げ後に反発を受けたという失敗談をお話しします。

このプロジェクトは全国の営業・アシスタントメンバー計40名ほどが使用するシステムを開発するというもので、営業メンバー10名、生産管理メンバー5名でプロジェクトを運営していました。

もともと社長からのトップダウンでプロジェクトが発足したこともあり、全社的に認知度が高いプロジェクトでした。
私はステークホルダーとのコミュニケーションにも注意し、要件定義・詳細設計・ユーザテストが完了するごとに、営業役員・上司といったプロジェクトのステークホルダーに状況報告を実施していました。
プロジェクトも終盤になり、このプロジェクトは役員会議の承認も受け、ようやくシステムをリリースすることができました。

ここまでは、プロジェクト企画当時に作成したマイルストーンに沿って、順調に活動を進めていたつもりでした。ところが、プロジェクトにおいて「ある重要人物ひとり」に対しての認知活動が甘かった(漏れていた)のです。その重要人物とは、実際に新システムを使うロボット営業の本部長でした。

もともと、プロジェクト立ち上げ初期は別の人が本部長を担当しており、その人にはプロジェクト概要を説明する場を設けるなど、認知活動を実施していました。
しかし、今回の新本部長はプロジェクト真っ最中に異動してきたこともあり、プロジェクト事務局はその人に認知活動を実施していなかったのです。

しかも運悪く、その新本部長は自己主張がかなり強い性格で、歯に衣着せぬ発言を会議中に頻繁に行う人でした。

システム立ち上げ後の初期流動管理中にさまざまなトラブルがあったこともあり、現場の人から新本部長に悪い噂が流れたのでしょう。さらに、プロジェクトの存在自体を新本部長があまり知らなかったこともあり、後日に主要プロジェクトメンバーは新本部長からお叱りを受けました。それだけでなく「リリースしたシステムを中止して、元のシステムに戻そう」という話にまで発展してしまいました。
最終的には、起きてしまったトラブルへのリカバリーを事務局で迅速に行い、現場の大きな不満も解消したことから、新本部長も新システムを継続することに納得してもらえました。

不運が重なった出来事ではありますが、プロジェクト進行中もステークホルダーの変更には気を遣うべきだったと反省しています。また、私の勤務する会社は人の異動や組織変更が頻繁に起こるため、今後は注意したいと思います。

ステークホルダーの状況は適宜更新し、対応方法を考える

今回の失敗談は、主要なステークホルダーである営業本部長が変わったものの、その対応が十分ではなかったというものです。
冒頭でお話ししたとおり、ステークホルダーはプロジェクト期間中に固定であるとは限らず、ステークホルダーの増減・変化が発生することがあります。

ステークホルダー・関与度評価マトリックスの例

PMBOKでは「どのようなステークホルダーが存在するのか?」を把握するためのステークホルダー登録簿や、ステークホルダーのプロジェクトに対する姿勢を可視化するステークホルダー関与度評価マトリックスを紹介しています。プロジェクト期間中はこれらの資料をもとに、ステークホルダーの構成に変化がないか、そしてプロジェクトに対する関与に問題がないかを適宜確認し、変化に対応していくことが大切です。
新しいステークホルダーはプロジェクトの理解が十分でないため、プロジェクトに無関心であったり、極端に反発したりすることが少なくありません。そのため、新しいステークホルダーに対してプロジェクトの説明をし、適切な関与を促す必要があります。

ステークホルダー登録簿やステークホルダー関与度評価マトリックスについては、下記のページで解説しているため、あわせてご確認ください。