資源(リソース)はプロジェクトの「血液」である
「スケジュールが遅れている」「予算が超過しそうだ」「スコープ(作業範囲)が終わらない」
プロジェクトの現場で起こるこれらの問題は、一見するとそれぞれ別の原因があるように見えます。しかし、根本をたどっていくと、ほとんどの場合が「適切なタイミングで、適切な人やモノ(資源)が手配できなかった」という一点に行き着きます。
PMBOK第8版においても、資源パフォーマンス領域はプロジェクトの特定の側面だけでなく、「他のすべてのパフォーマンス領域と直接的・間接的に相互作用している」と明記されています。
今回は、資源管理が他の領域とどのように結びついているのかを整理しつつ、実務で必ず発生する「資源の奪い合い」や「ステークホルダーとの泥臭い関係構築」の重要性について解説します[1]Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 … Continue reading。
成果パラメーター(スケジュール・コスト・スコープ)への直接的影響

プロジェクトの成果は、主に「スコープ(何を作るか)」「スケジュール(いつまでに作るか)」「コスト(いくらで作るか)」の3つのパラメーターによって定義されます。
言うまでもありませんが、適切なチームメンバーや物理的・バーチャル資源がタイムリーに提供されるかどうかが、これらすべての成果を左右します。
とくにコスト(財務パフォーマンス領域)とは完全に裏表の関係にあります。「資源の見積り」プロセスは「コストの見積り」と緊密に同調して実行されます。資源の見積もりを全体の予算や制約条件と正しく整合させることで、初めて無駄な支出を防ぎ、財務的な健全性を維持できるのです。
組織レベルで発生する「資源の奪い合い」
プロジェクト単体の中だけでなく、母体組織全体を見渡したとき、資源管理において非常に厄介な相互作用が発生します。それが「資源の競合(奪い合い)」です。
同じ時期、同じ場所で、複数のプロジェクトや定常業務が走っている場合、有識者(キーマン)や特殊な設備、限られたライセンス環境といった「希少な資源」を複数のチームで取り合う場面が必ず多発します。
PMBOKでは、この組織的な資源の競合が、プロジェクトのコスト、スケジュール、リスク、スコープ、品質、さらにはステークホルダーの満足度にいたるまで、多大な影響を及ぼす重大なリスクであると警告しています。
お金では解決しない「ステークホルダー」と「リスク」の連動

さて、ここまでPMBOKの理論を見てきましたが、ここからは実務のお話です。
不足している資源を調達する際、「予算(お金)さえ払えば解決する」と思っていると、大きな痛手を負うことになります。
たとえば、「海外から必要な資材が予定通りに運ばれてくるかどうか」というのは分かりやすいリスクですが、「仕事を依頼したい協力会社(ステークホルダー)が、快く引き受けてくれて100%のパフォーマンスを出してくれるか」というのも、プロジェクトにおける立派なリスクです。
「お金を払うのだからやって当然」という態度で接していては、いざという時の無理は聞いてもらえません。資源を獲得するためには、それを提供してくれるステークホルダーとの関係性が良好であることが大前提となります。
コミュニケーションで「資源の競合」を乗り切る
先ほど挙げた「資源の奪い合い」も、大きな視点で見ればステークホルダーとのコミュニケーションの問題です。
「このプロジェクトにはどうしてもAさん(キーマン)が必要だ」となった場合、ただ待っているだけでは他のプロジェクトに奪われてしまいます。
- 「Aさんを専属にしてもらえるよう、あらかじめ各部門長(資源マネジャー)に企画の重要性を熱心に呼びかけて交渉する」
- 「どうしても専属が無理なら、同等のスキルを持つBさんを外部から確保する許可を事前にもらっておく」
このように、社内であっても社外であっても、日頃から良好な関係を築き、いざという時のための交渉ルートを持っておくことが、資源調達のリスクを最小限に抑える最強の盾になります。
まとめ:PMに求められる「プロセス・知識・人」の統合
資源パフォーマンス領域は、単に「チームを動かす」「機材を管理する」といった局所的な作業ではありません。
財務やスケジュールとのトレードオフを調整し、組織全体でのリソース争奪戦をコミュニケーションの力で乗り切るという、極めてダイナミックな活動です。
PMBOKでは、すべてのパフォーマンス領域を統合し、プロジェクトを円滑に導く要となるのが、プロジェクトマネージャーのリーダーシップであるとしています。
プロジェクトマネージャーは、「プロセス」「知識」そして「人々(チームやステークホルダー)」を一体として統合し、プロジェクトの目的を達成する責任を負います。
「あの人がいないと進まない」「機材が足りない」と嘆く前に、まずはその資源を握っているステークホルダーとの対話から始めてみてください。資源管理の成功は、エクセルの表の中ではなく、日々の泥臭いコミュニケーションの積み重ねの中にこそあるのです。
注
| ↑1 | Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 2.6.4「他の領域との相互作用」(91ページ/297〜298ページ)より要約・引用。 |
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