【PMBOK第8版】リスク管理の成果チェックとは?実務で確認すべき「3つの防衛線」

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SSAITS代表・山脇弘成

山脇 弘成(SSAITS(サイツ)代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー。
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

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リスク管理が「機能している」とはどういう状態か?

これまでリスク・パフォーマンス領域のプロセス(計画、特定、分析、対応計画、実行、監視)やテーラリングについて解説してきました。
では、これらの活動がプロジェクトにおいて「成功した(うまく機能している)」と言えるのは、どのような状態になったときでしょうか。

PMBOK第8版では、単にリスク登録簿を作っただけではなく、プロジェクトの不確実性をコントロールし、回復力(レジリエンス)を高めて目標達成を確実にするという「具体的な成果(Outcomes)」に貢献した場合にのみ成功とみなされるとしています[1]> Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 … Continue reading。

今回は、この領域の総まとめとして、PMBOKが提示する7つのチェック項目を整理しつつ、実務の現場で私たちが本当に確認すべき「3つの要点」について解説します。

PMBOKが定義する7つの「成果のチェック」

PMBOK第8版(表2-11)では、リスク管理が適切に行われているかを確認するため、以下の7つの「目標成果」と「チェック方法」を提示しています。

期待される目標成果達成を確認するためのチェック方法(Check)
① プロジェクトが発生する環境を認識している。チームは、不確かさ、リスク、対応策を評価する際に、技術的・社会的・政治的・市場的・経済的な環境に関する考慮事項を取り入れている。
② 不確実性を積極的に調査し、対応する。リスク対応策は、予算、スケジュール、パフォーマンスなど、プロジェクトの制約条件に整合している。
③ 脅威や好機を予測し、因果関係を理解する能力がある。リスクを特定、査定、文書化し、対応するためのプロセスが整備され、チームによく理解されている。
④ 未知のイベントによるマイナスの影響を最小限に抑える。予備が設定されて使用されており、予定納入日に間に合い、予算パフォーマンスの差異がしきい値内にある。
⑤ パフォーマンスと成果を改善する好機が訪れる。チームは、確立された仕組みを用いて、好機を特定し、活用し、実現を追跡する。
⑥ コンティンジェンシー予備が効果的に利用される。チームは、脅威を積極的に予防するための対策を講じることで、コンティンジェンシー予備の使用を抑えている。
⑦ レジリエンスと挫折から迅速に回復する能力が育まれる。組織のビジネス継続計画書(BCP)や緊急対応計画書を認識している。未知のリスクに対応するためにマネジメント予備を利用でき、危機の際には構造とプロセスを迅速に調整して適応できる。

現場で本当に確認すべき「3つの防衛線」

現場で本当に確認すべき「3つの防衛線」

この7つの項目は、これまで解説してきたリスク管理の総まとめであり、何か新しい手法が登場しているわけではありません。

また、成果の⑤には「好機(プラスのリスク)の活用」が挙げられていますが、以前の「リスク対応の計画」の記事でも触れた通り、通常のプロジェクト(特に1年未満の短期・中期の現場)において、好機を積極的に取り入れる余裕や場面は実際にはほとんどありません。

そのため、実務においてプロジェクトマネージャーが「自分たちのリスク管理に問題がないか」を点検する際は、脅威(マイナスのリスク)に対する以下の3つの防衛線が機能しているかに絞って確認しておく必要があります。

1. 不確実性と環境認識への「予防的アプローチ」(①・②・③)

まず1つ目は、問題が起きてから騒ぐのではなく、先回りして予防できているかです。
目の前のタスク単位のリスクだけでなく、市場や技術、法規制といった外部環境(PESTLEなど)も含めて視野広くリスクを捉えられているか。そして、立てた対策が予算やスケジュールの制約から逸脱せず、チーム全員がそのルールを理解して動けているかを確認します。

2. 防衛と「予備(バッファー)」の効率的運用(④・⑥)

2つ目は、いざという時のための「予備(コンティンジェンシー予備)」の使い方です。
ここで重要なチェックポイントは、「事前の予防策をしっかり打つことで、予備(バッファー)の無駄遣いを抑えられているか」という点です。

「バッファーがあるから大丈夫だろう」と最初から当てにして何も対策を打たなければ、バッファーはあっという間に枯渇します。予防策によってダメージを最小限(軽減)に抑え、どうしても防ぎきれなかった残存リスクの吸収のためにだけ適切に予備を切り崩し、納期や予算の許容範囲(しきい値)内に収めるコントロールが求められます。

3. 組織的レジリエンス(回復力)とアジリティ(⑦)

そして最後の防衛線が、予測不可能な事態(未知の未知、ブラック・スワン)に対する「回復力(レジリエンス)」です。

どんなに優秀なチームでも、すべてのトラブルを予知することはできません。万が一、想定外の危機が発生した際、組織全体のBCP(事業継続計画)と連携できているか、マネジメント予備を迅速に引き出せるか、そして何より「チームの体制や業務プロセスを素早く組み替えて、新しい状況に適応できる柔軟性(アジリティ)があるか」を日頃から点検しておくことが大切です。

リスク管理のゴールは「しなやかな強さ」を持つこと

リスク・パフォーマンス領域の最終的なゴールは、トラブルが1件も起きない無菌室のようなプロジェクトを作ることではありません(それは不可能です)。

事前の「予防」でトラブルの確率を下げ、漏れてきたトラブルは「予備(バッファー)」というクッションで受け止め、それでも防げない大災害が起きたら「レジリエンス(回復力)」で素早く立ち直る。
この3つの防衛線が問題なく機能しているかを定期的にチェックし、どんな不確実な波が来ても折れない「しなやかな強さ」を持ったチームを作ることこそが、リスク管理の真の成果なのです。

注

注
↑1 > Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 2.7.5「結果のチェック」(101〜102ページ)および 表2-11より要約・引用。
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