シックス・シグマとは何か?品質管理の手法をやさしく解説

2021年10月26日

シックス・シグマの概要

シックス・シグマ(Six Sigma)は、1980年代に米モトローラが開発した「品質管理のためのフレームワーク」であり、顧客満足の向上を目的に、製品やサービスのばらつきを抑えるための業務プロセス改善に使われます。

主に製造業が中心ではありますが、製造業の製造部門に留まらず、営業や企画部門といった間接業務への適用、更にはサービス業などの非製造業への適用も多くあります。業務プロセスを改善し、製品やサービスの品質のばらつきを抑えるために、統計学を用いた定量的な分析を行いながら進めていくのが特徴で、顧客の声を起点として経営層からのトップダウンで進めていきます。

シックス・シグマは「6シグマ」にも置き換えられ、100万回のオペレーションのうち、欠陥が起こる可能性が3.4回以内(99.99966%)であることを示します。99.99966%がどのようなものであるかを身近な例で例えると、以下の形となります。

[電気]

  • 99.0%の場合
    毎日どこかで15分程停電が起こる
  • 99.99966%の場合
    7か月のうち、どこかで1分程停電が起こる

[電化製品](毎日1本、録画予約を行う)

  • 99.0%の場合
    3、4か月に1回、録画が行われないときがある
  • 99.99966%の場合
    約8年に1回、録画が行われないときがある

このように、99.99966%の品質だとしても、利用者側からすればクレームの元になってしまいます。不良品、不具合の発生が起きてしまうことはありますが、99.99966%という目標に対して、決して高すぎる目標ではないということが分かります。

シックス・シグマの背景と歴史

シックス・シグマが提唱された背景として、米モトローラは日本の製造業で活発に行われている「QCサークル活動」を参考にしたといわれています。ボトムアップかつ、各個人の経験と勘で進められていた日本のQCサークル活動を参考に、トップダウンかつ、統計学を基にした定量的評価を中心とした手法として開発されました。米モトローラで考案されたシックス・シグマでは、ゼネラル・エレクトリック(GE)で伝説の経営者と呼ばれたジャック・ウェルチの推進により経営全体のプロセス改革に適用して発展され、1990年代後半には日本の数々の企業にて導入、改良が行われています。

QCサークル活動とは

ここでQCサークル活動についてみてみましょう。
企業内で自発的に行われる活動の総称のことで、PDCAサイクルを軸に組織全体や製造現場における品質管理上の問題点を洗い出し、継続的に生産性の向上を行う活動を指します。安全性を確保しながら生産性を高められる方法として、主に日本の製造業にて日常的に行われていた活動を体系化したものともいわれています。

シックス・シグマの特徴

シックス・シグマの特徴として「汎用性」「データドリブン」「人材育成」の3点が挙げられます。

汎用性

製造業だけではなく、様々な業種で活用することができます。シックス・シグマは、見つけ出した根本原因についてそれぞれの手順の中で個別に解決策を検討する進め方となり、企業それぞれの業務上の課題を論理的かつ定量的なプロセスを踏むことで解決することから業種や規模の大小問わず、汎用的に導入・活用を行うことが可能です。

データドリブン

シックス・シグマを活用した改善プロセスの導入にて、最も重要視されるのが「客観的なデータ」となります。客観的なデータを活用することで、本当の課題とその根本原因を探り出し、対策の効果も客観的、定量的に評価していくことがシックス・シグマの考え方となります。このため、「影響力の大きなメンバーの意見に左右されて誤った対応をした」などの誰かの主観を重視してしまうことや、事前の解決策ありきで進めてしまうことによる失敗を防ぐことができます。
また、データドリブンにより「事実」や「合理性」に基づいた検討が行われていくことから、多くのステークホルダーがいる中でも合意形成を実現しやすくなる利点もあります。

人材育成

シックス・シグマによる業務改善プロセスを経験させることで、自社のリーダーシップ開発や、業務意識の向上を図ることができます。客観的なデータを基に優先順位を決定するなど、経営者観点として身に付けておかなければならないスキルについて、プロジェクトを通して取得できるようになります。また、シックス・シグマは、プロセスを重視した方法論であることから、個人の発想力といった要素に左右されることがなく、検討されたプロセスは社内の誰もが使えるノウハウとして共有、蓄積されやすいという利点もあります。

シックス・シグマの5つのプロセス

シックス・シグマのプロジェクト活動サイクルとして、既存プロセスの改善となる「DMAIC(ディーマイク)」があります。DMAICでは以下の5つの活動の頭文字で構成されています。

  1. Define(定義)
  2. Measure(測定)
  3. Analyze(分析)
  4. Improve(改善)
  5. Control(管理)

Define(定義)

まず初めに改善すべき課題の抽出を行っていきます。顧客の声(VOC)を起点とし、顧客が不満を感じている点を製品やサービスの欠陥として定義し、具体的な数値目標を設定します。
また、課題の重要性やゴール、期限の明確化等によりプロジェクトメンバーのベクトルを合わせることで、取り組みに対するモチベーションを高める効果も期待できます。

Measure(測定)

現状の正確な把握を行っていきます。思い込みや主観による実際の状況と異なるケースでの把握とならないように、主観を排除して客観的な判断を行うための十分なデータ収集に努めるとともに、現状の業務プロセスを「見える化」することで本質的な問題を抽出していきます。

Analyze(分析)

問題に対する根本的な原因を特定していきます。Measure(測定)にて抽出したデータを統計的に分析し、問題がなぜ起きているかを明らかにしていきます。分析にはMSA(Measurement System Analysis)、SPC(Statistical Process Control)といった手法が使われることが多く、ツールを活用しながら問題と要因を特定していきます。

Improve(改善)

問題の根本的な原因を特定した後に改善策の検討を行います。複数の案を出していき、Measure(測定)やAnalyze(分析)で得られたデータや分析結果を基に、どの案が優れているかを検討します。また、改善案を取り入れたプロセスを試験的に導入し、その効果を検証することで、本当に問題が解決できるのかを確かめます。

Control(管理)

改善したプロセスの効果を継続していくための管理を行います。定期的に指標を測定し、測定結果が基準値を下回った場合に改善を行っていくといった管理プロセスを導入し、Define(定義)で課題としていたことが解決できたか確認します。プロジェクトが解散した後も、実際にそのプロセスを行っている業務チームに引継ぎ、継続的に測定、課題が多くなれば再びDMAICを行い業務の改善に努めます。

シックス・シグマの関連ワード

シックス・シグマを実践するにあたり、重要となる関連キーワードを紹介します。

VOC(Voice Of the Customer)

「顧客の声(VOC)」のことです。シックス・シグマで最も重要視するべきものとなり、顧客の声を基準として課題の定義、改善プロセスを進めていきます。

CTQ(Critical To Quality)

顧客の声(VOC)を分析した結果として導かれる、自社の経営成果に大きな影響を及ぼす要因のことです。

参考

文献

  • ピーター・S・パンディ、ロバート・P・ノイマン、ローランド・R・カバナー『シックスシグマ・ウエイ―全社的経営革新の全ノウハウ』日本経済新聞出版、2000年。

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