インセンティブ・フィー付き定額契約(FPIF)とは何か?フィーの計算方法も含めて解説
インセンティブ・フィー付き定額契約(FPIF)の概要
インセンティブ・フィー付き定額契約(FPIF:Fixed Price Incentive Fee Contract)とは、購入者が納入者へ決められた額を支払い、納入者が所定のパフォーマンス基準を満たした場合に、納入者が追加の報酬を受け取る契約形態です。
インセンティブ・フィー付き定額契約では、合意した評価尺度の達成に対する金銭的インセンティブが関連付けられており、パフォーマンスの変動を許容するという点で、納入者と購入者にいくらかの柔軟性がある契約です。
インセンティブとしては、納入者のコスト、スケジュール、技術的パフォーマンスなどが関連付けられます。
目標を達成した場合には報酬が与えられる一方で、インセンティブ・フィー付き定額契約では、価格の上限が定められ、上限を超えたすべてのコストは、納入者の責任となります。
フィーの計算方法
このインセンティブ・フィー付き定額契約は、プロジェクトマネジメントの資格であるPMPで出題される可能性の高いテーマです。PMPの取得を目指しているのであれば、実際にこの契約を結んだことがなくても、インセンティブ・フィー付き定額契約の概要とフィー(料金)の計算方法を覚えておく必要があります。
ここからは、『PMP試験合格虎の巻 第6版対応』の問題を参考に、フィーの計算方法を解説していきます[1]吉沢正文、落合和雄、庄司敏浩『PMP試験合格虎の巻 第6版対応』アイテック、2018年、177頁及び441頁を参考に作成。。
インセンティブ・フィー付き定額契約では、目標コストと実コストの差額を共有率によって配分してフィーに加減します。
つまり、もともと目標としていたコストと実際に使われたコストを比較し、安く済ませられていればフィーを増額し、目標としていたコストを超えてしまっていれば、その分フィーを減額しようというものです。
良い結果であれ悪い結果であれ、その結果は購入者(依頼者)だけ、納入者(受託者)だけの責任ではありません。そのため、共有率を設定し、責任の配分を決めています。
あるインセンティブ・フィー付き定額契約の契約内容と実績が以下のとおりであったとします。
- 目標コスト:200万円
- 目標フィー:30万円
- 購入者と納入者の共有率:70:30
- 上限価格:280万円
- 実際のコスト260万円
この例では、目標コストに比べ、実際のコストが超過してしまっています。その差額は実際のコストの260万円から目標コストの200万円を引いた60万円です。
ただし、上述のとおり、これは納入者だけの責任ではありません。購入者と納入者の責任の配分(共有率)は70:30で設定されているため、購入者の責任によるコスト超過が42万円(60万円 × 0.7)、納入者によるものが18万円(60万円 × 0.3)と計算できます。
納入者はもともと目標フィーとして30万円を受け取る予定でしたが、納入者側の責任であるコスト超過の18万円を減額した12万円が受け取る予定のフィーになります。
しかし、最後に注意しなければならないのは、このフィーを支払った後のコストが、上限価格を超えていないかどうかです。
プロジェクトの最終的なコストは、実際のコストに納入者へのフィーを加えたものになります。そして、その上限価格が今回は280万円と設定されています。
今回のプロジェクトの最終的なコストは、実際のコストの260万円に納入者へのフィーである18万円を加えた278万円になります。この金額は上限価格の280万円を超えていないので、当初の目標フィーからはやや減額されたものの、納入者は18万円を受け取ることができます。
もし、最終的なコストが上限価格を超えてしまっていれば、上限価格から実際のコストを引いた金額を納入者はフィーとして受け取ることになります。
注
↑1 | 吉沢正文、落合和雄、庄司敏浩『PMP試験合格虎の巻 第6版対応』アイテック、2018年、177頁及び441頁を参考に作成。 |
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