メンター制度とは何か?日本での取り組みと事例を解説

2022年12月14日

メンター制度とは

メンター制度とは、新入社員や若手社員に対して個別に任命された先輩社員が指導にあたったり相談に乗ったりする人材育成支援制度です。
指導・相談役となる社員のことをメンター(mentor)、指導や助言を受ける社員のことをメンティ(mentee)と呼びます。

斜め上からの支援のイメージ

メンタリング(mentoring)と呼ばれる定期的な面談を通して、メンターはメンティの抱える仕事上の悩みや課題、キャリア形成などの相談に応じ、メンティの意思決定をサポートします。
メンターにはメンティの直属の上司や先輩ではなく、他部署で年齢の近い社員が選ばれます。
メンティが自身の評価を気にすることなく仕事に関する話をできるようにするためです。
階層型組織図で示した場合には、メンティから見てメンターは斜め上に位置することから、メンター制度は「斜め上からの支援」とも呼ばれています。

メンター概念の起源

メンターという言葉の起源は、紀元前の古代ギリシアにさかのぼります。
ホメーロスの長編叙述詩「オデュッセイア」の登場人物であるメントール(Mentor)が由来です。
オデュッセウス王が出征する際に息子テレマコスを託されたメントールがテレマコスを次期の王にふさわしい人物になるよう育てたことから、メンターは「良き指導者」という意味をもつようになりました。
1970 年代以降、ビジネスにおける指導者の役割の重要性が認識されるようになり、職場でメンタリングが使用されるようになりました。
メンター制度が人材育成制度として確立されたのは、1980年代のアメリカといわれています。
現代のアメリカではメンター制度は広く浸透しており、ダイバーシティやコミュニケーションといった分野ごとに1人ずつメンターがいるのも当たり前となっています。

日本でのメンター制度の推進

厚生労働省はメンター制度の導入を推進しています。
2012年には「メンター制度導入・ ロールモデル普及マニュアル」を作成しました。
これは出産後も働き続ける女性の増加に対して管理職を務める女性が限られていたという背景から女性のキャリア開発を促進する目的でしたが、現在は新入社員の支援体制にも活用されています。
このマニュアルは厚生労働省のサイトから確認することができます。

2018年度からはメンター制度を導入した企業には助成金を支払う「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」を設立しました(令和4年4月1日より整備計画の受付を休止中)。

メンター制度の導入企業

メンター制度を導入している企業の具体例を紹介します。

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エーのメンター制度は、新入社員の研修期間中にも活用されているのが特徴です。
メンターは研修期間中から配置され、ペアをローテーションで変えながら1on1ミーティングを繰り返していきます。
部署や配属後の担当メンターを決める際に1on1ミーティングでのやりとりも参考にするためです。
新入社員にとっても自分の強みや目標に合った配属先が決定されることから、これから始まる業務へのモチベーションが上がったりミスマッチによる離職を防いだりすることができます。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車には「面倒見」と呼ばれる上司・部下のコミュニケーションに関する独自の概念があり、それがメンター制度にも活かされています。
トヨタ自動車のメンター制度は「職場先輩制度」で、配属3年目までは担当の先輩社員(指導職以上)がついて面倒見を行います。
また、若手社員の悩みに寄り添うことができるよう、直属のつながりだけでなく同じような経験をしたことのある入社年次の近い先輩を紹介し、若手社員に複数のコミュニケーションチャネルを提供しています。

株式会社資生堂

資生堂では若手社員ではなく上司を対象としたリバースメンター制度が用意されています。
対象となるのは社長も含めた課長級以上の幹部社員で、1年間他部門の若手社員とペアを組みます。
2000年は200人程の幹部社員が参加しました。
会社側としては、ITやSNSの操作を若手から教わることで社内のDXを促すというねらいもあります。

参考