コンカレント開発(コンカレントエンジニアリング)とは何か?アジャイル開発にも取り入れられている開発手法を解説

2021年2月11日

コンカレント開発(コンカレントエンジニアリング)の概要

コンカレント開発とは、設計、生産、調達などの各工程を同時進行で行うための手法のことです。コンカレントエンジニアリングと呼ばれることもあります。
コンカレント(concurrent)とは「同時」を意味する英単語ですが、その名の通り、コンカレント開発では作業を同時に行うことが肝となっています。
例えば開発の初期段階時に設計や購買、生産技術、品質保証といった各部門が集まり、方向性を合わせながら進めていくことで、コミュニケーションロスによるコスト増加を防ぐとともに、開発期間の短縮に繋げることができます。

コンカレント開発と従来の開発手法との違い

ウォーターフォール型開発とコンカレント開発の違い(画像はWikiより)

従来の開発工程をウォーターフォール型開発と呼びます。
ウォーターフォールとは日本語で「滝」の意味を持ち、上から下へ水が流れ落ちるように上流工程から下流工程に順番に開発を進めていく手法となります。工程ごとに順番に開発を進めるため全ての工程が完了するまで時間が掛かる場合もあります。

これに対して、コンカレント開発では、企画や設計などの上流工程と、製造、テストなどの下流工程を同時並行で実施し、開発プロセスを短縮化する手法となります。
元々は1980年代の自動車製造業での研究によって提唱された概念ですが、近年では様々な産業でも有効な手法として活用されています。

例えば、ソフトウェア開発で重要性が叫ばれているリーンソフトウェア開発アジャイル開発は、このコンカレント開発の思想が取り入れられています。

コンカレント化に必要なもの

コンカレント開発を取り入れるためには、各タスクのコンカレント化、つまり並列作業化を行う必要があります。
コンカレント化を行うためには、部門間の共有だけでなく、開発プロセスやプロジェクトの運用ルールを整備する必要があります。また、機能間のコミュニケーションを行っていくためのIT支援ツールの導入も重要です。
ここからはコンカレント化に使われるIT支援ツールをいくつか紹介していきます。

CAD(Computer Aided Design)

従来、人の手で作成されていた設計図をコンピューターで作図できるようにしたソフトウェアのことです。設計期間の短縮や、品質の向上により設計費の削減を行うことができます。

CAM(Computer Aided Manufacturing)

直訳すると「コンピューター支援製造」という意味となり、CADなどで作成した設計図から工作機械を制御するためのプログラムを作成します。

CAE(Computer Aided Engineering)

CADなどで作成した設計図を読み込み、コンピューター上で製品モデルの構造や動作の分析、解析を行うソフトウェアのことです。

PDM(Product Data Management)

設計や構成に関する情報を一元管理するソフトウェアのことです。集約したデータを設計部門内や製造、購買といった後工程の各部門にも共有することができます。これにより各工程のコンカレント化をスムーズに行うことが可能となります。

コンカレント開発の注意点

コンカレントエンジニアリングではコスト削減や開発期間の短縮において効果が見込めますが、関係部署とのコミュニケーションや情報連携が不足していると、うまく連携ができず、かえってコミュニケーション・コストがかかってしまい、プロジェクト全体に影響がでてしまいます。
そのため、コンカレント開発を導入するには、大前提として各部門間の意思疎通を行いやすい環境作りが重要です。

また、コンカレント開発を実現できるようなIT支援ツールの存在も重要です。
先ほど紹介したCAD、CAM、CAEを取り入れれば、1つのデータを様々な開発プロセスで使用することができます。
しかし、こうしたIT支援ツールがなければ、コンカレント化を実現することは難しくなります。
様々なプロセスでコンカレント化を実現できるようなIT支援ツールは開発が難しく、業務にあったツールの有無がコンカレント開発を導入できるかどうかを左右します。

参考