アンコンシャス・バイアスとは何か?原因と弊害、その対処法を事例を交えて解説
アンコンシャス・バイアスとは?
アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)とは、それぞれの人が無意識に持っている決めつけや思い込みのことを指します。
本記事では、アンコンシャス・バイアスの事例や対処法をご紹介します。
アンコンシャス・バイアスの事例
アンコンシャス・バイアスは身近なところに潜んでいます。
- 血液型を聞いて、相手の性格を想像してしまう
- 出身地を聞いて、お酒が強い人かどうかを想像してしまう
- 「男のくせに」「女のくせに」と思うことがある
- 「たたき上げの営業部長」と聞いて、男性を想像する
- きめ細やかな気配りを必要とする仕事は女性向きだと思う
悪意なく無意識に行われる決めつけや押し付けがアンコンシャス・バイアスです。
アンコンシャス・バイアスはなぜ起きる?原因と弊害
アンコンシャス・バイアスは誰しもが持っているものですが、注意しておかないと人間関係やビジネスの場においてネガティブな働きをすることがあります。
アンコンシャス・バイアスの原因と、弊害について解説します。
アンコンシャス・バイアスが起きる原因
アンコンシャス・バイアスは自己防衛本能によって生み出されています。
自己防衛本能により人間は「できるだけ安全なところに身を置きたい」と感じます。
また、未知のことや自分にとって不都合な事実は「危険」と判断しています。
そのため、未知や不都合な事実に対して自分に都合の良い解釈をつけることでストレスを回避しようとします。これがアンコンシャス・バイアスです。
自分にアンコンシャス・バイアスがある場合の弊害
アンコンシャス・バイアスが自分に向かうことで、自分の能力を過小/過大に評価するなど自己認知に問題が起きます。
また、悲観・批判的な発言が増えて健全な人間関係構築に支障をきたします。
他者にアンコンシャス・バイアスがある場合の弊害
他者へのアンコンシャス・バイアスは、ハラスメントに直結する危険があります。
アンコンシャス・バイアスは性別や個人の家庭環境に関するものも多く、良かれと思ってした配慮が逆に相手にとっては不快な押し付けになってしまうことがあるためです。
アンコンシャス・バイアスへの対処法
アンコンシャス・バイアスへの対処法は、大きく分けて3つのステップに分かれています。
STEP1:アンコンシャス・バイアスの存在を知る
まずは「アンコンシャス・バイアス」の存在に気付くことです。
アンコンシャス・バイアスは、当たり前と感じているものの中にこそ潜んでいます。
STEP2:自分の中のアンコンシャス・バイアスに気付く
アンコンシャス・バイアスは個人によって傾向が異なります。
性別に関するバイアスが強い傾向を持つ人や、年齢や地域へのバイアスが強い傾向にある人もいます。
また、自分自身を過小に評価する傾向が強い人や、逆に過大に評価する傾向を持つ人もいます。
これらは良い悪いということではなく、人生の中で培われてきた思考の癖のようなものです。
自分が持っているバイアスの性質を理解し、それらがどのように表面化しているかを自覚しましょう。
STEP3:意識的にイメージを上書きする
アンコンシャス・バイアスは、過去の経験や知識によって無意識的に作られていくものです。
逆に言えば、これからの経験や知識によって書き換えていくことができます。
自分が持っているバイアスに気がついた時は、あえて全く逆の情報をインプットすることで、偏ったバイアスを持ちにくくなります。
苦手だと思っていたことにチャレンジしたり、バイアスを持っていると感じたジャンルの情報をより詳しく調べてみることで視野が広がり、偏りが徐々に補正されていきます。
注意したいアンコンシャス・バイアス5つ
アンコンシャス・バイアスは200以上あると言われていますが、その中でも特に重要と思われる5つをご紹介します。
確証バイアス
自分が持っている先入観や信念を支持する情報ばかりを集めてしまうアンコンシャス・バイアスです。
事例
- 事実を自分の都合の良いように解釈してしまう
- 自分の考えを裏付けるデータを探し、1つでもみつかると「やっぱり!」と思ってしまう
- 自分の考えと合わない事例を例外と決めつけてしまう
起こりうる問題点
自分の考えとは逆の事実を示す情報が出てきた場合でも、自分の意見を変えることができなくなってしまいます。
そのため、他人の意見を根拠なく跳ね除けたり、自分が正しいと信じるあまりに話し合いの場で相手との意見のすり合わせができなくなってしまいます。
ステレオタイプ
人が持つ属性や特徴に対する先入観で、相手に対する決めつけを行ってしまうアンコンシャス・バイアスです。
事例
- 出身校や学歴で、その人の能力を判断してしまう
- 「理系(文系)の人は〇〇だ」と決めつけてしまう
- 家事や育児は女性がするべきだと思う
起こりうる問題点
学歴が下と分かった途端に相手を下に見たり、女性に重要な役割を任せないなど、ハラスメントとも思える行動をとってしまうケースがあります。
たとえ良かれと思って行った気遣いであっても、前提にステレオタイプによる決めつけがある場合にはすれ違いになってしまうため注意が必要です。
権威バイアス
専門家や権威のある人の言うことであれば間違いないと思い込み、自分自身の意見を持たなくなってしまうアンコンシャス・バイアスです。
事例
- 「専門家がそういうならば間違いはない」と思い込む
- 決断を行う前に権威のある人の意見を聞いてから考えようと思う
- 上司のお墨付きがないと不安になる
起こりうる問題点
権威バイアスの傾向が強い人は、上司からの指示やお墨付きがないと仕事を進められないようになってしまいます。
また、専門家の言うことをなんでも鵜呑みにしてしまうので間違った情報に左右されやすく、占いなどにものめり込みやすいという傾向もあります。
自己奉仕バイアス
成功は自分の手柄であり、失敗はどうしようもない例外のせいだと思い込むアンコンシャス・バイアスです。
事例
- 自分だけが頑張っていると思うことがある
- 人より頑張っているはずなのに周囲からの評価が伴っていないと感じる
起こりうる問題点
自己奉仕バイアスが強いと自分の手柄をアピールしたくなるという衝動が強くなります。
そのため、成果を横取りしてしまったり、他者の成果を軽んじるような行動をとってしまい人間関係の悪化を招きます。
また、失敗を自分の責任として捉えないのである時点から成長しなくなるというのも特徴です。
ダニング・クルーガー効果
自分の能力を実際よりも過大評価してしまうアンコンシャス・バイアスです。
事例
- 周囲に対して強がった発言をする
- 欠点を指摘されると反発したくなってしまう
- 周囲からできる人だと思われたくて「できる人」を演じる
起こりうる問題点
実力が伴っていないにもかかわらず、自身が優れているかのような言動をするため周囲からの信頼を損ねてしまいます。
また、自分を過大評価するあまりに他者からのフィードバックや意見を軽視してしまう傾向があります。
ダニング・クルーガー効果は、能力の低い人ほど起きやすいという性質があります。
参考
書籍
・守屋 智敬 『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント最高のリーダーは自分を信じない』かんき出版、2019年
Webページ
- https://www.qualia.vc/unconscious-bias/about/(2023年4月17日確認)
- https://www.unconsciousbias-lab.org/unconscious-bias(2023年4月17日確認)