パテントプールとは何か?メリット・デメリット・事例をわかりやすく解説
パテントプールの概要

パテントプール(patent pool)とは、特許を保有する者を含んだ複数者間において、何らかの組織を通じて包括的に取り決めた、特許のライセンスやその対価の授受についての契約関係の束のことです。
パテント(patent)は「特許」を意味する言葉なので、パテントプールは直訳すると「特許のプール」ということになりますが、その名の通り、複数の個人や企業で特許を使えるような貯水池をつくることが目的です。
アメリカと日本での違い
パテントプールの定義はアメリカと日本と若干異なっており、以下のような差異があります[1]パテントプール – 特許庁。
米国特許商標庁 | 日本国公正取引委員会 |
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2またはそれ以上の特許保有者間における、1またはそれ以上の特許を、相互にまたは第三者に対してライセンスする合意 | 特許等の複数の権利者が、それぞれの所有する特許等又は特許等のライセンスをする権利を一定の企業体や組織体(その組織の形態には様々なものがあり得る。) に集中し、当該企業体や組織体を通じてパテントプールの構成員等が必要なライセンスを受けるものをいう |
両者の定義の違いは大きくはないですが、日本が特許・特許等のライセンスに関する権利を特定の企業・組織に集中させることを前提にしているのに対して、アメリカはかならずしも集中することを前提にしていないという点に違いがあります。
パテントプールの事例
パテントプールの事例は様々あり、MPEG2やMPEG4、RFID、LTEなどがあります[2]パテントプール – Wikipedia。
こうした技術は様々な企業の技術が結集しているため、これらのパテントプールがなければ、技術を提供している各企業に対して特許の許諾や使用料の交渉をしていかなければなりません。
しかし、パテントプールがあれば、MPEG4などの技術を使いたい企業はパテントプールの組織に相談をすればよいので、やりとりが簡素化されます。
パテントプールのメリット
パテントプールのメリットは以下の通りです[3]パテントプール – 特許庁 。
- ライセンス関連業務の簡素化
- 紛争回避
- 市場拡大
- ロイヤルティ金額の低減
「パテントプールの事例」で紹介したように、パテントプールが設立されれば、技術を使いたい企業はパテントプールの組織に相談をすればよいので、ライセンス関連業務のやりとりが簡素化されます。それにともなって、ライセンス交渉にまつわる紛争が回避され、技術を使用する企業が増えることにより、市場拡大も期待することができます。
また、特許を保有している個々の企業と交渉し、ロイヤリティを支払っていけば、多くの場合、莫大な資金が必要になってしまいます。しかし、パテントプールが設立されていると、一般的に技術のロイヤリティは合理的な金額に抑えられるため、使用者側としてはコストを抑えられるというメリットもあります。
パテントプールのデメリット
パテントプールを設立するデメリットは、メリットと表裏一体となっています。
つまり、もともと特許をもっている企業としては、パテントプールを設けると、市場は拡大するものの、技術を独占することができなくなり、ロイヤリティの決定も特許の管理組織が行ってしまうと、思ったような金額を得られなくなる可能性もあります。