記憶のための動機付け(MTR)とは何か?スクーター・リビー効果もあわせて解説
記憶のための動機付け(MTR)の概要
「記憶のための動機付け(the motivation to remember)」とは、個人が情報を覚える動機や理由を指し、MTRと略されます。
人は物事を記憶する時、「記憶したい」という動機を持っていた情報を強く残します。
一方で、後から重要になったと判明しても、記憶した時に重要だと思っていなかった情報は、うまく思い出せません。
記憶は頭の中の情報を検索するよりも、情報にインプットする時の動機の強さのほうが大切だということを理解しなければ、記憶に関して誤った判断をすることになります。その代表例が後述する「スクーター・リビー効果」です。
スクーター・リビー効果
スクーター・リビー効果の概要

スクーター・リビー効果とは、重要になった情報をあたかも以前から重要であったかのように他の人が覚えていると誤って期待する現象のことです。
この効果は、ジョージ・W・ブッシュ政権時代に副大統領ディック・チェイニーの首席補佐官を務めていたアーヴィン・ルイス・“スクーター”リビーの情報漏えい事件(プレイム事件)に由来します。
プレイム事件
プレイム事件は、アメリカの元外交官ジョゼフ・チャールズ・ウィルソンの妻であるヴァレリー・プレイムが、実は米中央情報局(CIA)のエージェントであることがマスコミに漏洩、暴露された事件です。アーヴィンはプレイムの身元をレポーターに漏らしたとして起訴され、2007年の裁判で彼はその記憶はないと主張したものの、陪審員はこれを信じませんでした。
陪審員は「そのような重要なことを覚えていないということはありえない」と考えたのですが、心理学者であるカリム・カッサムはMTRのタイミング、つまり記憶された時のモチベーションによって、アーヴィンのような状況は起こりうると考え、「スクーター・リビー効果」という論文を発表しました。
記憶をする時のモチベーションが肝心
アーヴィンが本当に情報を漏らしたことを覚えていないのかどうか、真偽のほどは定かではありませんが、カリムが論じたように、記憶をする時のモチベーションに気を付けなければ、判断を誤る原因になってしまいます。
重要な情報が漏れた時、その原因を調査する際には、漏えいした情報が記憶、保存された時に重要なものと認知されていたかどうかに気を配らなければなりません。
参考
書籍
- マリア・コニコヴァ(著)、日暮雅通(訳)『シャーロック・ホームズの思考術』早川書房、2016年
Webページ
- https://psycnet.apa.org/record/2009-06873-007(2023年10月10日確認)
- https://dtg.sites.fas.harvard.edu/KASSAM%20GILBERT%20SWENCONIS%20WILSON%20%282009%29.pdf(2023年10月10日確認)
- https://www.semanticscholar.org/paper/Misconceptions-of-Memory-The-Scooter-Libby-Effect-Kassam-Gilbert/0451c2b0ef26827c0faa216530778162aab7aace(2023年10月10日確認)
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%93%E3%83%BC(2023年10月10日確認)
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A0%E4%BA%8B%E4%BB%B6(2023年10月10日確認)