応用情報技術者試験の IoT 分野を学習していると、「LPWA」という言葉によく出会います。
「LoRaWAN とか Sigfox とか、色々種類があるみたいだけど…」 「Wi-Fi や Bluetooth と何が違うの?」
と、その特徴が掴みにくいと感じている方もいるかもしれません。
この記事では、そんな LPWA の本質を、「超省エネな長距離ランナー」にたとえて、誰にでも分かりやすく解説します。
LPWA とは「超省エネな長距離ランナー」である
まず、LPWA とは何の略でしょう? LPWA = Low Power Wide Area つまり、「低消費電力」で「広範囲」をカバーする無線通信技術の総称です。
これを、マラソンランナーにたとえてみましょう。
- Wi-Fi や Bluetooth: 短距離を猛スピードで走るスプリンター。たくさんのエネルギー(電力)を消費しますが、大量の情報(データ)を高速に運べます。しかし、遠くまでは走れません(通信距離が短い)。
- LPWA: 最小限のエネルギー(低消費電力)で、非常に長い距離(広範囲)をゆっくりと走る長距離ランナー。一度に運べる荷物(データ)は少ないですが、何キロも先の目的地まで確実に届けることができます。しかも、エネルギー消費が少ないので、途中で補給(バッテリー交換)なしに、非常に長い時間走り続けられます(バッテリーが長持ち)。
なぜ LPWA が IoT に必要なのか?
IoT(モノのインターネット)の世界では、街灯、メーター、農場のセンサー、自動販売機など、電源を確保しにくい場所に設置された大量のデバイスが、インターネットに接続されます。
これらのデバイスに求められるのは、
- バッテリーが何年も持つこと (低消費電力)
- 基地局から遠く離れた場所でも通信できること (広範囲)
- たまに少量のデータ(温度、メーターの数値、位置情報など)を送れれば良いこと (低データレート)
という特徴です。 スプリンターである Wi-Fi や Bluetooth では、バッテリーがすぐに切れてしまったり、通信距離が足りなかったりします。そこで、「超省エネな長距離ランナー」である LPWA が脚光を浴びているのです。
- Low Power (低消費電力): バッテリー駆動で数年単位の動作が可能。
- Wide Area (広範囲): 通信距離が数km〜数十kmに及ぶ。
- Low Data Rate (低速): 多くの場合、通信速度は遅い(数bps〜数百kbps程度)。動画のような大容量データには不向き。
- 多数接続: 一つの基地局で多くのデバイスを接続できる場合がある。
過去問に挑戦!
それでは、この「省エネ長距離ランナー」のイメージを持って、添付の過去問を見てみましょう。
令和7年度 応用情報技術者試験 秋期 午前 問73より
IoT で活用されている LPWA の特徴として,適切なものはどれか。
ア GHz 帯を使う近距離無線通信であり,4K,8K の映像などの大容量のデータを高速伝送することに適している。
イ 電力線を通信に使う有線通信技術であり,スマートメーターの自動検針などに適している。
ウ 一つの基地局で広範囲をカバーできる低消費電力の無線通信技術であり,複数の機器がつながるネットワークに適している。
エ 有線のシリアル通信であり,同じ基板上の回路及び LSI 間の通信に適している。
解答と解説
正解は ウ です。
各選択肢を LPWA の特徴と照らし合わせてみましょう。
- ア: 「近距離」「高速伝送」「大容量データ」は、スプリンター(Wi-Fi など)の特徴です。LPWA は「広範囲」「低速」「少量データ」なので誤りです。
- イ: 「電力線」「有線通信」とあるので、これは電力線通信 (PLC) の説明です。LPWA は無線なので誤りです。
- ウ: 「広範囲をカバー」「低消費電力」「無線通信技術」「複数の機器がつながる」。まさに LPWA(省エネ長距離ランナー)の特徴を完璧に捉えています。これが正解です。
- エ: 「有線」「同じ基板上」とあるので、これは I2C や SPI といった基板内通信の説明です。LPWA は無線で広範囲を対象とするため誤りです。
まとめ
- LPWA は「Low Power Wide Area」の略。
- 「超省エネな長距離ランナー」と覚える。
- 低消費電力でバッテリー長持ち、広範囲の通信が可能。
- その代わり通信速度は遅いことが多い。
- 電源確保が難しい場所にある IoT デバイスに最適。
試験で LPWA が出てきたら、「省エネ長距離ランナー」を思い出せば、その核心的な特徴(低消費電力、広範囲)から正解を導き出せるはずです。