事業所開業時のネットワーク構築で注意するポイントを解説

2022年10月19日

事業所内のPC、サーバー、プリンターなどのオフィス機器を相互に接続可能とするものが社内ネットワークです。社内ネットワークを構築することで、社員同士でデータの共有や、セキュリティを担保した機器接続が可能になります。
事業所を開業する場合、社内ネットワークの構築は欠かせません。
社内ネットワークは、事業所の規模によって構築手法が異なります。自社に合ったネットワークを構築するために、どんな点に注意すべきか気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では、新規で事業所のネットワークを構築する際の手順や、注意するポイントを解説します。

ネットワーク構築の前に決めること

ネットワークを構築する前に、まず下記の内容を決める必要があります。

  • LANの規格
  • WANの規格
  • ネットワーク構成
  • IPアドレス体系
  • 使用するネットワーク機器

以下でそれぞれ詳しく解説します。

LAN(拠点内)の規格を決める

まずは、事業所内で利用するLANの規格を選定します。
LANは、Local Area Networkの略で、オフィスなど限定された範囲で利用できるネットワークです。
LANの規格は、有線と無線に分けられます。LANの規格を選定する上では、事業所の規模や、利用用途によって選定することが必要です。

有線と無線の特徴は以下の通りです。

有線LAN

PCの台数が多く、通信量が多い場合採用されるのが有線LANです。
無線に比べて通信速度が安定するメリットがあります。しかし、有線の場合は、PCを使用するデスクまでLANケーブルを配線する必要があり、用意するケーブルやハブなどのネットワーク機器などが多くなることから、コストがかかってしまうデメリットもあります。

LAN規格に有線を選択した場合は、使用するケーブルの種類や長さを選定します。ケーブルの種類は、光ケーブル、イーサネット(10Mbps)、ファスト・イーサネット(100Mbps)、ギガビット・イーサネット(1Gbps)などがあり、必要な伝送速度などを考慮して選定します。
減衰なしで利用できるケーブル長が規格ごとに異なるため、ケーブル選定の際は注意が必要です。

無線LAN

無線の場合は、LANケーブルを複数配線する必要がないため、有線LANと比べて低コストで構築できます。
また、無線LANを採用することにより、社員が固定的なデスクを持たない働き方である「フリーアドレス」も実現できます。在宅勤務の推進やフリーアドレス化が進む中で、無線と有線両方を採用する企業も増えています。

無線を利用する場合は、使用する周波数や暗号化方式などの設定を決めます。
ひとつのアクセスポイントで接続できる端末数が決まっているため、使用する端末数に適したアクセスポイントの設置台数を検討します。また、障害物などの影響も受けるため、事業所のレイアウトも考慮した上で、事前にサイトサーベイなどを行い、無線LAN環境を構築する必要があります。

サイトサーベイについては、下記の記事もご参照ください。

WAN(拠点間)の規格を決める

WANは、Wide Area Networkの略で、距離が離れたネットワーク同士をつなぐネットワークです。簡単に言うと、LAN同士を接続するのがWANです。本社と支店をつなげたり、社内からインターネットに接続したりする際に使われます。

WANは専用線や電気通信事業者が提供するWAN回線(IP-VPN、インターネットVPNなど)を利用して構築します。
WAN回線に障害が発生すると、社内ネットワーク全体に影響を及ぼします。そのため、大きな企業では、障害時に備えて複数回線を契約し、冗長化するのが一般的です。回線を冗長化する場合は、NTTとKDDIなど異なる通信事業者を選定することがポイントです。

また、社内に設置したファイルサーバーに外部からアクセスしたいといった要件がある場合は、VPNの導入も検討します。
VPNは仮想社内ネットワークのようなもので、外部からの接続の際に、セキュリティを確保できるため、リモートワークなどで使われています。

WAN回線の代表的なものは以下の通りです。

専用線

専用線は、自社専用に回線を借りて、1対1の拠点間通信ができる回線です。セキュリティが保証されている半面、コストが高いというデメリットがあります。

広域イーサネット

広域イーサネットは、離れた場所にある拠点をイーサネットで接続する回線です。IP-VPNと比較して通信度が速く、プロトコル変更や拠点追加などにも柔軟に対応できるメリットがあります。

IP-VPN

IP-VPNは、インターネット上でデータを暗号化する回線サービスです。専用回線のように特定のユーザーのみが利用できるため、セキュリティが担保されているのが特徴です。インターネット上でデータを暗号化するため、費用が高くなるデメリットがあります。

インターネットVPN

IP-VPNと同様、インターネット上でデータを暗号化して通信を行うサービスがインターネットVPNです。パブリックな回線を使用するため、IP-VPNと比較して安全性が劣るものの、低コストで導入できるのが特徴です。

ネットワーク構成を決める

LANとWANの規格を選定したら、具体的にLAN内のネットワーク構成を決めます。
ネットワークの構成は企業の規模によって異なります。トラブル時に迅速に対応するため、できる限り簡素な設計がおすすめです。

社内ネットワークで利用される構成として代表的なものは以下の2つです。

スター型

スター型は、ネットワーク機器を中心に放射状にPCなどをつなぐ構成です。機器やケーブルの増設が比較的簡単で、社内ネットワークの構成として主流となっています。

バス型

バス型は、同軸ケーブルで機器をつなぐ構成です。ハブなどの中継器が必要ないため、低コストで構築できますが、同軸ケーブルが断線すると全ての通信が遮断されてしまうデメリットがあります。バス型は、データ伝送の信頼性が高いため、幹線LANとして、構内の縦配線に使われることの多い構成です。

IPアドレス体系を検討する

接続するネットワーク機器、PCの台数によって、IPアドレス体系を決めます。
IPアドレス体系は、IPアドレスを使用する機器の台数によって、以下の3つのクラスから選定します。

  • 最大1,600万台(大規模):クラスA
  • 最大65,000台(中規模):クラスB
  • 最大254台(小規模):クラスC

小規模な事業所の場合は、クラスCの利用が向いています。
必要なIPアドレス数を計算する際は、PCだけでなくサーバーやプリンター、ルーターにもIPアドレスが必要であることも考慮することが必要です。

使用するネットワーク機器を選定する

LANの規格によって、必要な機器が異なります。事業所の規模や用途に合ったネットワーク機器を選定する必要があります。

機器の選定の際に注意すべきはネットワーク機器の通信速度です。
ネットワークの通信速度は、通信経路の中で一番遅い通信速度で決まります。WAN回線が1Gbpsであっても、途中に存在するルーターの速度が100Mbpsの場合、PCからインターネット間の通信速度は100Mbpsとなります。
ネットワーク内に1台通信速度の低い機器があることで、ネットワーク全体の通信速度が低下する原因にもなるため、ネットワーク機器を選定する場合は注意が必要です。

以下では、事業所のネットワークを構築する際に必要な機器を紹介します。

ルーター

ルーターは、社内のPCや機器とインターネットをつなぐために必要な機器です。

スイッチ

スイッチは、ルーターとPCを中継する機器です。スイッチは、ネットワーク内のPCの台数によって必要な台数が異なります。VLAN機能を持ったスイッチであれば、VLANを利用して社内ネットワークを分割できます。

ハブ

ハブは、ネットワークに接続する機器の台数を増やすために用いられる機器です。基本的にデータを中継するだけの役割を持ちます。PCの接続台数を増やしたい場合などに使用します。

サーバー

サーバーは、ファイルなどデータを管理する役割を持つ機器です。代表的なものに、WEBサーバー、メールサーバー、ファイルサーバーなどがあります。

ファイアウォール

ファイアウォールは、ネットワークの外部から内部への不正な通信を遮断し、ネットワークを保護することを目的とした機器です。外部からの不正アクセスから社内ネットワークを守る役割があります。

無線アクセスポイント

LANで無線を利用する場合は、有線LANと無線LANを相互変換するために無線アクセスポイントが必要です。

ネットワークの構築手順

ここまではネットワーク構築の前に確認すべき事項を紹介してきました。必要な情報が集まったら、あとは実際にネットワークの構築に入っていきます。
ネットワークの構築は大きく分けて以下の3つのフェーズがあります。

フェーズ1:要件定義

最初に行うのが要件定義です。要件定義では、業務内容や、利用するサービス、PCの台数など必要なものを洗い出します。
たとえば、大量のデータを扱う業務がある場合は、大容量のデータ管理を前提としたネットワークを構築する必要があります。事業拡大や、従業員の増加などを見越した上で、ネットワーク要件を検討することが大切です。

フェーズ2:ネットワークの設計

要件定義で洗い出した内容をもとに、具体的なネットワーク設計を検討します。構成が複雑になるほど、障害時の復旧が難しくなるため、できる限り簡素な構成にすることも大切です。

フェーズ3:運用のマニュアル化

ネットワーク構築と並行して、運用のマニュアルを作成します。ネットワーク構成図、設定、運用ルールなどをまとめておくことで、障害発生時に備えます。

これらの作業は専門の業者と話し合いながら進めていくことになりますが、あらかじめ流れを把握しておきましょう。

参考