ステーシー・マトリックス(ステーシー複雑性モデル)とは何か?プロジェクトの複雑さを可視化する手法

2022年2月2日

ステーシー・マトリックスの概要

ステーシー・マトリックスは「プロジェクトの複雑さ」を理解するために利用される図で、「ステーシー複雑性モデル」とも呼ばれます。
この「複雑さ」には、「不確実項目が多い」「近い未来を確実に予測できない」などの観点が含まれます。
プロジェクトは往々にして複雑であり、「どの程度複雑なのか」を先んじてステークホルダーと認識をすり合わせておいたほうが、プロジェクトを進行する上で安全です。
また、プロジェクトの複雑さの度合いによって適した開発アプローチが異なるため、事前にプロジェクトの複雑さの認識を共有しておかねば、プロジェクトが失敗する可能性が高まってしまいます。
そのため、ステーシー・マトリックスを使ってプロジェクトの複雑さを可視化し、その結果をもとに適切な開発アプローチを選んでいくことが大切です。

ステーシー・マトリックスの特徴

ステイシー・マトリックス(ステイシー複雑性モデル)のイメージ
ステーシー・マトリックスのイメージ

ステーシー・マトリックスは縦横に以下のような軸を持つグラフです。

  • 縦軸…要求事項の不確実性(言い換えると、課題の不明確さ)
  • 横軸…技術的な不確実性、難しさ

ステーシー・マトリックスは縦横2つの軸の不確実性の度合いによって「混沌」「簡単」「複雑」「錯綜」の4つの領域に分けられます。
ここからは、これら4つの領域について解説していきます。

グラフの右上ゾーン「混沌」

要求事項の不確実性・技術の不確実性がともに高い右上の領域は「混沌」に分類される状態で、「無秩序」「カオス」とも呼ばれます。
ここに分類されるものは、プロジェクトの失敗確率が高いため、このままの状態でプロジェクトを開始するのはおすすめできません。プロジェクトに求められる要求事項の整理や、必要な技術の情報を蓄積するなど、プロジェクト前の準備をする必要があります。

グラフの左下ゾーン「簡単」

合意の難しさ・技術の不確実性がともに低い左下の領域は「簡単」に分類されます。「単純」「合理的」などとも呼ばれますが、プロジェクトの全貌が明確な状態であるため、プロジェクトの成功率がかなり高いと予想されます。
あらゆるプロジェクトはここに分類されることが理想と言えますが、実際のプロジェクトがここに分類されることはあまりありません。

グラフの左下ゾーンの周囲「複雑」

「簡単」の領域の周囲には「複雑」の領域があります。
「簡単」の領域に比べ、「複雑」の領域は要求事項の不確実性や技術的な不確実性が高まり、プロジェクトの成功率が低下します。

グラフのその他ゾーン「錯綜」

「複雑」の領域よりも、さらに要求事項の不確実性や技術の複雑性が高い領域は「錯綜」に分類されます。
さらに不確実性の高い「混沌」の領域ほどではないにせよ、注意してプロジェクトを進行しなければ、たちまちプロジェクトは座礁してしまいます。

ステーシー・マトリックスの活用法 ―各領域に適したアプローチ―

ステーシー・マトリックスを使ってプロジェクトの複雑さを可視化した後は、この情報をもとにプロジェクトの開発アプローチを決定します。
4つの領域に応じて、以下のようなアプローチを採ります。

  • 「簡単」:予測型アプローチ
  • 「複雑」「錯綜」:適応型アプローチ
  • 「混沌」:プロジェクトを実施すべきではない

「簡単」の領域に属しているプロジェクトは、ウォーターフォール・モデルに代表される予測型アプローチを採用すると、費用や労力を抑えることができます。
一方、「複雑」や「錯綜」に属しているプロジェクトは要求事項や技術の不確実性が高いため、予測型アプローチでは対応できないことが多々あります。そのため、アジャイル開発に代表される適応型アプローチが適切であると言われています。
アジャイル開発については下記の記事もご参照ください。

上述のとおり、「混沌」の領域に属しているプロジェクトは、開始するには不明瞭な点が多すぎるため、実施すべきではないものです。プロジェクトを無理に進めるのではなく、まずは要求事項や必要とする技術の情報収集をすることが肝心です。