クラッシングとファスト・トラッキングの違いとは?スケジュール遅延時の対策について解説

2021年4月1日

スケジュール遅延が発生しそうなとき、対処方法としてクラッシングファスト・トラッキングが挙げられます。
では、両者の違いは何なのでしょうか?
今回はクラッシングとファスト・トラッキングの違いについて解説していきます。

クラッシングとは

プロジェクトにおいてスケジュールに遅れが生じた場合、納期に間に合わなくなる可能性があります。そのため、スケジュール遅延をリカバリするための策が必要になります。その1つがクラッシングです。

クラッシングとは、リソースを新たに投入してスケジュール遅延を回避する方法です。新規メンバーを参画させたり、既存メンバーへの稼働率を上げたりすることがクラッシングにあたります。また、人的なリソースだけではなく、生産性向上を目的としたツールの導入なども同じくクラッシングといえるでしょう。新たにリソースを投入するということは、もちろんそれだけコストもかかります。

クラッシングの注意点

クラッシングは単純にリソースを増やせばいいというわけではありません。新規にメンバーを増員すれば教育のコストが必要になります、また生産性向上のツールを導入したとしても、ツールを使いこなすまでに時間がかかります。新規メンバーの増員よりは、既存メンバーの稼働率を上げる方が現実的といえるでしょう。

クラッシングはクリティカルパス上で行わなければあまり効果を得られません。クリティカルパスとは、プロジェクトの完了までにかかる最長の工程です。言い換えると、クリティカルパス上で遅延が発生してしまうと納期までにプロジェクトが完了しないことになります。そのため、クラッシングを行う際にはクリティカルパス上に位置するタスクで行う必要があります。

ファスト・トラッキングとは

スケジュール遅延のリカバリ策として、ファスト・トラッキングという手法もあります。

本来、先行タスクが完了してから後続タスクを開始するべきですが、ファスト・トラッキングでは先行タスクの終了を待たずに後続タスクを開始することで、スケジュールの遅延を取り戻そうとします。
製造工程が100%完了していないうちからテストを開始するケースなどが当てはまります。リソースを投入する必要がないため、コストは抑えられます。
しかし、テストの先行着手中に製造工程で修正が入った場合は、テストをやり直さなければならないなど、若干のリスクを抱えることになります。

ファスト・トラッキングの注意点

ファスト・トラッキングを行うと、タスクの前後関係を変更するためタスク管理が複雑になります。きちんとタスク管理できていないとスケジュールが破綻してしまうため、タスク担当者の精神的負担に気を配る必要があるでしょう。また、プロジェクトマネージャのスケジュール管理の負担も増える原因となりえます。

ファスト・トラッキングでは大幅な手戻りが発生する可能性も念頭に置かなければなりません。例えば、ある機能Aのスケジュールが遅れたため、結合テストでは機能Aの代わりにスタブ・ドライバを用いたとします。機能Aの完成を待って、機能Aと他機能との結合箇所だけ再テストを行います。しかし、スタブ・ドライバを用いたときと同じような結果が得られず、大量の不具合が発生してしまうということもあります。

クラッシングとファスト・トラッキングをどう使い分けるべきか

クラッシングを導入する場合はコストがかかります。コストが捻出できそうなのであれば、クラッシングの方がファスト・トラッキングよりもリスクが少ないでしょう。ただし、追加するコストに見合った効果が得られるのかはしっかりと検討する必要があります。

ファスト・トラッキングでは手戻りのリスクを負うことになります。しかし、クラッシングを行うだけの予算がないなど、やむを得ない場合もあるかもしれません。ファスト・トラッキングを使う場合は、タスクを綿密に整理し、細分化しましょう。その上で並行作業が可能なタスクがあれば、ファスト・トラッキングを使うようにしましょう。

クラッシングとファスト・トラッキングのどちらを使うとしても、それぞれデメリットがあります。プロジェクトの状況に応じて適切に使い分けましょう。