Web3.0とは?Web1.0・Web2.0の歴史を振り返りながら、Web3.0の特徴とメリット・デメリットを解説

2022年7月1日

Web3.0の概要

ギャビン・ジェームズ・ウッド(Gavin James Wood)の写真
ギャビン・ジェームズ・ウッド(画像はWhttps://en.wikipedia.org/wiki/Gavin_Woodikiより)

Web3.0はパブリック型、つまり参加者を制限しないブロックチェーン技術を利用した分散型インターネットの概念で、ユーザーが自分でデータを共有し、管理しながら運用することができる新しいインターネットの形です。このWeb3.0はブロックチェーンを利用する金融業界や、機械学習、人工知能(AI)などの分野での活用が期待されています。

Web3.0という言葉自体はブロックチェーン・プラットフォームであるイーサリアム(Ethereum)の共同経営者のギャビン・ジェームズ・ウッド(Gavin James Wood)が2014年に作ったもので、2020年から2021年に大型IT企業やベンチャーキャピタルから注目を集めました。

Web1.0・Web2.0との違い

Web3.0の内容を詳しく見ていく前に、Web1.0Web2.0について簡単にまとめていきましょう。

Web1.0

Web1.0のイメージ

Web1.0は、1989年にWorld Wide Webをイギリスの計算機科学者であるティモシー・"ティム"・ジョン・バーナーズ=リー(Timothy “Tim" John Berners-Lee)が考案してから2000年代初頭までのウェブ構造のことを指します。
Web1.0の時代、ユーザーができることはWebサイトに掲載されている文章や画像をただ見ることだけでした。

Web2.0

Web2.0のイメージ

Web2.0は2000年代からのウェブ構造で、ADSLや光回線の普及によって回線速度や安定性が向上した時代です。Web2.0の特徴はユーザーが情報を受け取るだけでなく、投稿や書き込みができることです。
これはFacebookやTwitterなどのSNSや、YouTube等の動画投稿サイトを思い浮かべるとよいでしょう。YouTubeでは、誰でも動画を視聴することができるだけでなく、自分も動画を投稿することができ、その動画を他のユーザーが視聴します。こうしたユーザーとWebサイトの双方向のやり取りを「インタラクティブ」と呼びますが、インタラクティブであることがWeb2.0の特徴だと言えます。

Web3.0の特徴 ~Web2.0との違い~

Web3.0のイメージ

Web3.0はまだ確たる定義はなく、未知の領域でもあります。そのため、人によって語られるWeb3.0のイメージは異なりますが、概ね以下の特徴をWeb3.0は兼ね備えています。

  • 分散化とブロックチェーンの利用
  • 暗号通貨に対応
  • 人工知能の利用

Web2.0とWeb3.0を比較した時に、最も顕著な違いが分散化とブロックチェーンの利用です。
Web2.0までのWebサイトはある特定のサーバーにデータが格納されていました。しかし、Web3.0では、複数のサーバーに情報を分散させて保存します。そして、分散したデータをつなげるためにブロックチェーンの技術が使われます。

この他、Web3.0のネットの世界では、暗号通貨が使われるようになったり、人工知能の利用によってより快適なサービスが提供されたりすると言われています。

Web3.0のメリット

ここからはWeb3.0の特徴を踏まえ、Web3.0がどのようなメリットを持っているかを解説していきます。

セキュリティレベルの向上

Web3.0が実現すると特定の企業やサーバーに個人情報が集約されるわけではないので、セキュリティレベルが上がると言われています。
Web2.0では個人情報が集められたサーバーが攻撃されたり、ハッキングされたりすると、一度に大量の個人情報が流出してしまいます。しかし、Web3.0では情報が分散化されているため、特定のサーバーが攻撃されただけでは被害は拡大せず、さらにブロックチェーン技術で情報が暗号化されるため、情報流出のリスクが低くなります。

より自由なインターネット

Web3.0では国境の制限なくサービス利用ができるため、「グレート・ファイアウォール」と呼ばれる中国の検閲システムも関係なく、誰でも希望するサービスへアクセスが可能です。そのため、中国でアクセスが禁止されているGoogleやTwitter、YouTubeへも自由にアクセスができるようになります。

情報の一極集中の排除

Web2.0の時代には、スマートフォンが普及したことで人々の生活が便利になりましたが、GoogleやAmazon、Facebook、Appleなどの巨大テクノロジー企業に個人情報が集中してしまったことが問題になりました。
しかしWeb3.0では特定のサーバーに頼らない非中央集権型のウェブ構造のため、Web2.0のように個人情報を集積する巨大テクノロジー企業は誕生しないと予想されています。

個人情報の管理

Web2.0の今日では、ネット上の個人情報や行動履歴のデータを企業が収集しています。代表的な例として、Googleは無料で検索機能を提供する代わりに、検索履歴や行動履歴をデータとして収集しています。こうしたデータをもとに、企業はサービスの改善をしているのですが、了承なしにデータを取得することが問題視されるようにもなってきました。
EUではGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)が施行され、個人データの収集が厳しくなったことは記憶に新しいニュースです。

こうした情勢の中、Web3.0では個人情報が細かく管理され、個人情報の保護も強まると考えられています。行動履歴などのデータは様々な場所に分散して保存され、その内容もブロックチェーンの技術で暗号化されています。これらの技術に支えられ、ユーザーは細かく個人情報を管理することができるだけでなく、企業はデータの収集が難しくなるため、データ提供によって対価をもらうことができるようになると言われています。

ユーザー同士の直接取引の活性化

Web3.0の世界では、ピア・ツー・ピア(P2P)取引と呼ばれるユーザー同士の直接取引が活性化すると予想されています。日本でもUberやメルカリのように、P2P取引は浸透してきました。しかし、Uberであれメルカリであれ、間には仲介業者が存在します。
Web3.0では、分散化の技術によって仲介業者を挟まないP2P取引が実現すると言われています。
P2P取引はリスクが高いとされていますが、Web3.0ではブロックチェーン技術を組み合わせるため、情報が暗号化されることにより、不正が発生しにくいと考えられています。

P2P取引は、消費者と企業にも拡大するとされています。企業と直接取引ができるため仲介組織に対する手数料が不要となります。金融業界などは銀行がお金を管理するために手数料を得ていましたが、Web3.0では中央管理者が必要ないため、銀行が不要となります。例えばDeFiという金融仲介アプリケーションを使えば、取引記録がブロックチェーンに記録されるので信頼性の高い安全な金融サービスを利用できます。このようなサービスがWeb3.0で増えることで、支払っていた手数料が不要になります。

Web3.0のデメリット

ここまではWeb3.0のメリットを紹介してきました。Web3.0はこれからの技術であるため、紹介したメリットは予想の範囲を超えませんが、よりよいネットの未来が期待されます。
しかし、Web3.0の分散化というメリットは大きなデメリットにもつながる可能性があります。
Web3.0は分散化によって特定の組織の管理下に置かれないことが特徴ですが、それは何かトラブルがあった時に管理できる存在がいないということでもあります。
誤った情報の拡散やサイバー犯罪が拡大した際に、これらを取り締まれる組織がいないという危険性がWeb3.0には含まれています。また、取り締まれたとしても、どこの国の法律で裁くのかという問題も浮上します。
Web3.0を活用していくには、これらのデメリットにも向き合っていかなければなりません。

参考