【PMBOK第8版】チームのリードとは?「人間関係の泥臭さ」をマネジメントする技術

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山脇 弘成(SSAITS(サイツ)代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

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なぜプロジェクトマネージャーは「うんざり」するのか?

プロジェクトマネージャー(PM)を任されると、多くの人が「うんざり」したり、プロジェクトマネジメントそのものを嫌がったりします。その最大の理由は、スケジュールや予算の計算が難しいからではなく、「人間関係の調整(人のマネジメント)」が極めて困難でストレスフルだからではないでしょうか。

「プロジェクトの理想に向かって、全員で一丸となって頑張ろう!」というのが美しい理想ですが、現実はそう甘くありません。
PMBOK第8版の「チームのリード(Lead the Team)」は、まさにこの「人」に焦点を当て、対立(コンフリクト)を解消し、パフォーマンスを最適化するためのプロセスです。

今回は、PMBOKの理論を整理しつつ、フレームワークを杓子定規に当てはめるだけでは解決しない「現場の泥臭いマネジメント」について解説します[1]Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 … Continue reading

「チームのリード」プロセスの基本概念

「チームのリード」とは、コンピテンシー(能力)やメンバー間の相互作用、チーム環境全体を改善することで、チームをマネジメントし、導くプロセスです。プロジェクトの開始から完了まで、継続的に実行されます。

このプロセスには、大きく2つの異なる視点からの働きかけが含まれます。

  1. マネジメント活動: 目標達成のための「手段(プロセス、計画、作業の監視など)」に焦点を当てる。
  2. リーダーシップ活動: 目標達成のために動く「人(影響を与える、動機付け、傾聴、支援など)」に焦点を当てる。

プロセスのITTO(インプット・ツール・アウトプット)完全網羅

チームを導くために、PMBOKでは以下のような多様な要素(ITTO)が定義されています。特に「ツールと技法」には、人間関係を構築するための様々なアプローチが詰まっています。

インプット(前提となる情報)

  • プロジェクトマネジメント計画書(資源マネジメント計画書)
  • プロジェクト文書(課題ログ、教訓登録簿、プロジェクト・スケジュール、資源カレンダー、チーム憲章、作業パフォーマンス報告書、プロジェクト・チームの任命)
  • チームのパフォーマンス評価(現状の習熟度や強み・弱みのアセスメント)
  • 組織体の環境要因(EEF) / 組織のプロセス資産(OPA)

ツールと技法(チームを導くための手段)

  • 配置と協働環境: コロケーション(同室配置)、バーチャル・チーム / バーチャル・コラボレーション・ツール、コミュニケーション技術
  • 人間関係とチームに関するスキル
  • 思考・問題解決と振り返り: 問題解決(シックス・シンキング・ハッツ®など)、レトロスペクティブ(振り返り)
  • 評価・認知と対人知能: 表彰と報奨、個人とチームのアセスメント、感情的知性(EQ)、組織の文化的知能
  • リーダーシップ・モデル: 分散型マネジメント(自己組織化等)、集権型マネジメント(トップダウン型)、サーバント・リーダーシップ(支援型)、タックマンの成長段階(形成期・嵐動期・統一期・遂行期・解散期)
  • プロジェクトマネジメント情報システム(PMIS) / データ分析(SWOT分析等) / 会議

アウトプット(導いた結果生まれるもの)

  • チームのパフォーマンス評価(チーム全体の有効性や成長度を評価したレポート)
  • 変更要求(チーム構造の変更やトレーニング追加の申請)
  • プロジェクトマネジメント計画書更新版 / プロジェクト文書更新版(課題ログ、チーム憲章等の見直し)
  • EEF更新版 / OPA更新版

PMBOKが定義する「高パフォーマンスなチーム」とは

PMBOKでは、パフォーマンスが高いプロジェクト・チームの条件として、心理的安全性が確保された「オープンなコミュニケーション」、目的を共感している「理解の共有」、そして貢献を適切に認める「表彰(Recognition)」を挙げています。

また、これを実現するために、「サーバント・リーダーシップ」でメンバーの障害を取り除いたり、「タックマンの成長段階」に合わせて指導型から支援型へとアプローチを変えたりする柔軟なリーダーシップが推奨されています。

現場のリアル:参加者は「何を求めているか」

現場のリアル:参加者は「何を求めているか」

さて、ここまでPMBOKが提示する様々な素晴らしいツールやモデルを紹介してきましたが、実務において最も大切なことは、これらのフレームワークを綺麗に当てはめることではありません(そもそも、権限的にプロマネが表彰できるということも少ないと思います)。

プロジェクトマネージャーが最優先ですべきことは、「参加者(メンバー)が、このプロジェクトに何を求めているのか?」を泥臭く把握することです。

たとえば、同じプロジェクトにアサインされたメンバーでも、思惑は全く異なります。

  • Aさん: 「今回の難易度の高いプロジェクトを成功させて、社内で名を上げたい(出世したい)!」
  • Bさん: 「言われた仕事は手伝うけれども、プライベートを重視したいから負担は少ない方がいい」

Aさんには「やりがい」や「裁量を与えること(サーバント・リーダーシップ)」がモチベーションになりますが、Bさんに同じアプローチをすると「丸投げされて負担が増えた」と不満に繋がります。Bさんには「明確なタスクの切り出し(集権型マネジメント)」が必要です。

まとめ:理想が通らないときの「次善策」を持とう

「チーム一丸となって理想に向かって頑張ろう!」というのは、あくまで最良のシナリオにすぎません。
現実は、様々な本音やモチベーションを持った人間が入り乱れる泥臭い環境です。だからこそ、「全員がやる気を出してくれなかった場合、どうやって最低限の品質とスケジュールを守るか」という次善策(プランB)を常に考えておくことが、PMの心を守る盾になります。

かっこいいリーダーシップ理論を振りかざす前に、まずはキックオフや1on1の場で「あなたはこのプロジェクトでどんな恩恵を受けたいですか?」「何が一番嫌(我慢できない)ですか?」と、腹を割って本音をすり合わせる時間を作ってみてください。その泥臭い対話こそが、本当の意味で「チームをリードする」第一歩になるはずです。

1 Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 2.6.2.4「チームのリード」(84〜86ページ)、第5章(296〜338ページ)より要約・引用。
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