プルシステムとは何か?リーンソフトウェア開発で使われる思考ツールをカンバンシステムとともに解説

プルシステムの概要

新しいソフトウェア開発のアイデアであるリーンソフトウェア開発では、22の思考ツールがあります。
その1つにプルシステムというものがありますが、これはどういうものなのでしょうか。
簡単に言えば、プルシステムは「カンバンシステム」のことです。

カンバンシステムとは、平準化生産を基礎として「かんばん」と呼ばれる伝票を使い、後工程から前工程に対して在庫量や運搬の時期を指示する工程管理手法のことです。トヨタ自動車が考案し、ジャストインタイム生産方式(必要なものを必要なときに必要なだけ生産する方式)の一要素として活用されています。

カンバンシステムの仕組み

カンバンシステムでは、後工程で部品を使用した際、少なくなった在庫量分が記された「かんばん」を前工程へ送ります。前工程は、後工程から送られた「かんばん」を生産指示として受け取り、後工程で使用する部品を生産します。この一連の流れを繰り返すことで、各工程の生産量や生産開始時期を使用量や使用時期によって調整できる仕組みとなっています。

生産管理手法の一つでもあるMRP(Material Requirements Planning)が予め計画していた生産計画によって生産を行う「プッシュ型(押出型)」と呼ばれるのに対し、カンバンシステムでは後工程が部品を使うことをトリガーとして生産指示を行うため「プルシステム(引張型)」とも呼ばれています。

プロジェクト管理でのカンバンシステムの活用例

カンバンシステムは元々製造業で使われている手法となりますが、プロジェクト管理としても幅広く活用することができます。
チームでプロジェクトを進めていく場合、メンバーごとのタスクに分け、チーム内の全てのタスクが完了すればプロジェクトが完了できます。

1つのボードに「未着手」「作業中」「作業完了」などの仕切りを用意し、個人のタスク(カンバン)を付箋などに書き、作業の進捗状況に合わせてボードに貼っていきます。

最近ではTrelloなど、かんばんの機能をオンラインで再現するWebサービスが多く存在するため、気軽にカンバンシステムを取り入れることができます。

このカンバンシステムを活用することで、このプロジェクトで何をするべきなのか、今何が行われているのか、何が完了したのかの見える化を行え、プロジェクトの状況を関係者間で共有することができます。

カンバンシステムのメリットとデメリット

カンバンシステムのメリットとしては、プロジェクトメンバー間のコミュニケーションが取りやすくなります。「かんばん」によって他のメンバーの作業状況を共有できるため、進捗の遅れや今後の作業などを把握しやすくなります。

デメリットとしては、プロジェクトの進め方が固定化されてしまうため、計画が大きく変更となった場合に対応しきれない場合があります。また、各タスクの重要度までは管理することができないため、遅れているタスクの影響度の把握が遅くなることで問題が深刻化する可能性もあります。

参考