ネットワークの冗長化とは何か?冗長化の方法をOSI参照モデルのレイヤー別に解説
ネットワークの冗長化の概要
ネットワークの冗長化とは、同じ役割を持つ機能を複数用意しておき、障害が発生した際の代用になるように待機させておくことです。
ネットワークの冗長化は、ネットワークの一部に障害が起こった際に、ネットワークを停止することなく使用するために必要です。銀行や病院、ライフラインなどはもちろんのこと、企業もネットワークが使えなくなることで、業務がストップしてしまったり、大きな損失につながることがあります。これを避けるための対策が、ネットワークの冗長化です。
ネットワーク冗長化の種類
冗長化には2つ種類があります。
- ホットスタンバイ
- コールドスタンバイ
ネットワークの構成や、状況によりどちらかの方法で冗長化を行います。
以下で詳しく説明します。
ホットスタンバイ
ホットスタンバイとは、運用機器と同様に、待機している機器もネットワークにつなぐ冗長化の方法です。待機機器にも常に電源が入っていることから、ホットスタンバイと呼ばれます。
ホットスタンバイでは、異常時に運用機器と待機機器の切り替えが自動的に行われます。運用機器と、待機機器は、お互いに死活監視を行っています。運用機器に異常が発生した場合は、即座に待機機器に切り替わります。
異常を検知して自動で待機機器に入れ替わるため、切り替わり時間が短いことが特徴です。
ホットスタンバイでは、冗長化を実現できる機能が備わった機器を用意する必要があります。
また、ネットワーク構成が複雑となるデメリットもあります。構築前に、障害時に設計通りネットワークが切り替わるか、検証が必要です。
コールドスタンバイ
コールドスタンバイとは、待機機器をネットワークにつながず、異常が発生した際に待機機器をネットワークに接続する冗長化の方法です。待機機器に電源が入っていないことから、コールドスタンバイと呼ばれます。
コールドスタンバイでは、異常時の切り替えは、手動で行います。故障した運用機器をネットワークから切り離し、待機機器を置き換えます。待機機器は設定を入れた状態で、電源を落とし異常時にすぐネットワークに接続できるように保管しておきます。
常時電源を入れた状態でネットワークに接続する必要がないため、コストが削減できます。また、ホットスタンバイと比較して、シンプルなネットワーク構成になるため、構築や運用のコストが抑えられます。一方、手動で作業が必要なため、準備に時間がかかるデメリットがあります。
ネットワーク冗長化の方法
ネットワークの冗長化は、OSI参照モデルのレイヤー別に行います。OSI参照モデルとは、コンピューターネットワークに求められる通信機能を7階層に分類し定義したもので、国際的に標準化されています。
以下では、ネットワークエンジニアが扱うことの多い、第1層から第4層で使われる主な冗長化技術を紹介します。
レイヤ1 物理層
電源冗長
ネットワーク機器には、電源を複数搭載できる機器もあります。ひとつの電源が故障した際でも、もうひとつの電源で機器を動かせるため、機器の電源断によるネットワークの停止を防ぐことができます。
レイヤ2 データリンク層
リンクアグリゲーション
リンクアグリゲーションとは、機器の物理リンクを束ねて、ひとつの仮想リンクを作る機能です。チーミング、イーサチャネル、ボンディングとも呼ばれます。スイッチポートを冗長化することで、ひとつのポートに異常が起きても、残っているポートで通信を継続できます。
データ送信時の負荷分散のためにも利用される機能です。
スパニングツリー
スパニングツリーとは、複数の経路を持つネットワークで、ループが発生しないようにする機能です。通常時は、ループが発生しないように、一部の経路をブロックします。異常が発生した際は、ブロックした経路を開放することで通信を継続できます。
スタック
スタックとは、複数のスイッチをまとめて、ひとつの仮想スイッチ作る機能です。スイッチ1台が故障しても、故障していない他のスイッチで通信を継続できます。
バーチャルシャーシ
バーチャルシャーシもスタックと同様に、複数のスイッチを仮想的にひとつのスイッチにまとめる機能です。バーチャルシャーシは、シャーシ型のスイッチで使われます。
レイヤ3 ネットワーク層
VRRP
VRRPとは、2台のルーターをひとつにまとめ、論理的に1台に見せることで、デフォルトルートを冗長化する機能です。通常は、マスタールーターで通信しますが、障害発生時は、バックアップルーターに経路が切り替わります。Cisco独自のプロトコルであるHSRPも同様の機能があります。
レイヤ4 トランスポート層
HA
HAは、ファイヤーウォールで使用される機能です。フェールオーバーとも呼ばれます。2台のファイヤーウォールをひとつにまとめ、稼働機器と待機機器とします。稼働機器に障害が発生した場合には、待機機器に全ての機能が引き継がれます。切り替わり時間が早いことが特徴です。