コンテキスト・ダイアグラムとは何か?プロダクト・スコープの図解表現を解説
コンテキスト・ダイアグラムの概要
コンテキスト・ダイアグラムとは、ビジネスのプロセスや使われる装置、コンピュータ・システムなどのビジネス・システムに対して、ユーザーやその他のシステムがどのように相互作用しているのかを表した図解表現のことです。
このコンテキスト・ダイアグラムを使うことによって、プロダクト・スコープを視覚的に表現することができます。
表現するインターフェイスには次のものが挙げられます。
- ビジネス体系へのインプット
- インプットを提供するアクター
- ビジネス体系からのアウトプット
- アウトプットを受け取るアクター
コンテキスト・ダイアグラムを作成していく際には、内容を詳細にするために段階的に下層のDFD(データフロー図)を作成します。
コンテキスト・ダイアグラムのメリット
コンテキスト・ダイアグラム(Context diagrams)を使うメリットは以下の通りです[1]What is a Context Diagram – Explain with Examples をもとに作成。。
- コンテキスト・ダイアグラムを理解するのに技術的なスキルや知識が必要ない
- ブレインストーミングを促進し、それらの分析を助ける
- 抜けていた事業計画やプロジェクトの要件の気づきを助ける
- プロジェクトのスコープの骨組みを簡単かつ直接的に作成する
- 外部コンポーネント、プロジェクトプロセスへの入力と出力、初期サブプロセス要件など、プロジェクト全体のプロセスを開始する高度なイベントの発見と確認を強化する
- 簡単に修正できる
- 長方形、楕円形、棒グラフ、または画像を使用して、システムの全体像をすばやく示すことができる
- 開発チームがどのユーザーグループを顧客と見なすかを明確にするのに役立つ
このように、コンテキスト・ダイアグラムはビジネス・システム全体の把握を助け、議論を促進していきます。
コンテキスト・ダイアグラムはレベル0のデータフロー図と呼ばれるように、データや行動の流れを大きく把握することに役に立ちます。
コンテキスト・ダイアグラムの作成方法
コンテキスト・ダイアグラムの作成方法は自由ですが、一般的に以下のように作成されていきます。
- テーマのビジネス・システムを中心に描く
- その周囲にユーザーや情報を配置し、関連性を記述する
このように、コンテキスト・ダイアグラムの作成には、厳密なルールはありません。
これから立ち上げていこうとしているビジネス・システムに対し、 ブレインストーミングのようにどのようなユーザーがいて、どのような情報があるのかを書きだし、アイデアを生み出していきます。
コンテキスト・ダイアグラムの必要性
コンテキスト・ダイアグラムは、PMBOKの中でも「要求事項の収集」で扱われる項目です。
要求事項の収集は、プロジェクト目標を達成するためにステークホルダーのニーズや要求事項を定義・決定・文書化し、マネジメントするプロセスです。
コンテキスト・ダイアグラムでは、ステークホルダーやプロジェクト・メンバー間で対象システムに対する認識の違いが発生しないよう、理解しやすい図や実際に試作品を作っていきます。
実際に、コンテキスト・ダイアグラムを作成しないでプロジェクトを進めてしまった場合、以下のような認識齟齬が生まれる事例もあります。
- ビジネス・システム名が一致していない
- ビジネス・システムの目的がわからない
- 外部システム・アクターの見落とし
- 外部システム・アクターの認識がバラバラ
上記のような状況で議論を行っても話は噛み合わず、良い結果が生まれるわけがありません。
このように、ビジネス・システム全体の理解と議論の促進を図っていく点で必要になります。
また、ソフトウェア開発をはじめとするITプロジェクトでは、要求事項を収集した後に作成される「要求事項文書」や「要求定義書」を活用することで開発の見積りが行われます。
そのため、要求事項の収集はシステム設計はもちろん、コスト管理の面でも重要になる要素です。
コンテキスト・ダイアグラムはどのような時に使われる
コンテキスト・ダイアグラムは、要求事項の収集のツールと技法として用いられます。
要求事項の収集は、PMBOKの5つのプロセス群の中では計画段階にあたるため、プロジェクトの初期段階で使うものです。
要求事項の収集のインプットには以下のものが挙げられ、これらを元にアウトプットへと繋げます。
- プロジェクト憲章
- プロジェクトマネジメント計画書
- プロジェクト文書
- ビジネス文書
- 合憲書
- 組織体の環境要因
- 組織のプロセス資産
要求事項の収集で用いられるツールと技法には、コンテキスト・ダイアグラムの他に、ノミナル・グループ技法、観察と対話、ファシリテーション、プロトタイプなどがあります。
ノミナル・グループ技法、観察と対話、ファシリテーションは、ステークホルダーから意見を汲み取るために使われる技法です。
一方、コンテキスト・ダイアグラムとプロトタイプは、ビジネス・システムを明確化するために使われる技法といったように分類しています。
また、コンテキスト・ダイアグラムなどを元に、アウトプットでは、「要求事項文書」「要求事項トレーサビリティ・マトリックス」が生成されます。