コンジョイント分析とは何か?コンジョイントカードを使った分析方法を解説

2023年1月27日

コンジョイント分析とは

コンジョイント分析は、回答者にいくつかの要素を組合せた商品全体を評価してもらい、要素ごとの購買決定への影響度を算出する分析方法です。

複数の要素を持つ商品アイデアがあった際、どの商品アイデアが一番消費者に好まれるかを調べることができるため、商品開発を考える際に使われます。

スマートフォンの機種変更を行う場合を例として考えてみましょう。あなたはスマートフォンの販売員で、機種変更を考えているお客さんに以下の4つのスマートフォンを提案しました。

提案したスマートフォン
  • 3万円でスペックが低く、ブランドもよく分からない端末
  • 8万円でスペックが高く、ブランドもよく分からない端末
  • 3万円でスペックが低く、有名ブランドが作成した端末
  • 8万円でスペックが高く、有名ブランドが作成した端末

この中でお客さんが「3万円でスペックが低く、有名ブランドが作成した端末」を選べば、お客さんは「価格」と「ブランド」を重視していると考えられます。

コンジョイント分析では、このように複数の要素を同時に比較してもらうことで、商品購入において消費者が重要視しているのが価格なのか、スペックなのか、ブランドなのかといった要素の重要度を把握することができます。

企業が自社の商品やサービスの差別化を行うためには「品質」「価格」「デザイン」「イメージ」「機能、サービス」といった全ての要素を満たせれば圧倒的な競争力を持ちますが、両立できない関係性(例えば、品質、機能を充実させるためには価格も上がってしまうなど)が発生します。
これらの要素に対して、どの要素が重要視されているかを把握する統計的手法がコンジョイント分析です。

コンジョイント分析の特徴

コンジョイント分析には次の特徴があります。

コンジョイント分析の特徴
  • 各要素の購買意欲を高める度合いを数値化することで、定量的な分析が可能
  • 少ない構成パターンの試行からより良い商品構成を推測することが可能
  • 全体評価のみを行うため、回答者への負担を下げることができ、正確な回答が期待できる

コンジョイント分析は、事前に一定のルールに沿って商品を構成していくことを前提とするため、ルールに沿って作られた商品に対して回答者から全体の評価をもらうだけで、どの要素がどのくらい重要視されて選択されているかを数値化することができます。
「機能を追加した際の新価格」や「新しい商品構成の検討」を行う際に有効であり、購入者の意図や好みを分析することを目的として、新商品の構築を行っていけるのがコンジョイント分析の強みです。

コンジョイント分析の手順

コンジョイント分析では、「コンジョイントカード(商品の各要素が記載された表)」を用いて分析を行います。それぞれの用語の定義は以下の通りです。

  • 属性:商品の要素
  • 水準:商品の要素の具体的な数値や内容
  • 効用値:購買意欲を高める度合い

1.コンジョイントカードの作成

まず初めに、スマートフォンの購入者が比較する属性を挙げていきます。今回は「価格」「スペック」「ブランド」の3つの属性を軸に分析を行います。

次に、水準を設定します。水準では、具体的に価格をいくらにするのか、スペックの基準値をどこに置くのかといった内容を決めていきます。

水準数
 価格スペックブランド
カード13万円RAM:4GB無名ブランド
カード28万円RAM:8GB無名ブランド
カード33万円RAM:4GB有名ブランド
カード48万円RAM:8GB有名ブランド
<コンジョイントカード>

水準数が2、属性数が3であるため、属性の組合せは「2³ = 8」通りです。
この組合せをカードに記載し、評価と分析を進めるのがコンジョイントカードです。

つまり、上記の例では最大8枚のカードができますが、今回は話を簡単にするために、4枚のカードを用意することにします。

2.回答者による評価

コンジョイントカードを作成したら実際に回答者に評価を行ってもらいます。評価方法にはいくつかの種類があり、よく使用される評価方法は以下の通りです。

順位評価

回答者に全てのカードを比較して順位をつけてもらいます。

得点評価

回答者に1枚1枚のカードに得点を付けてもらいます。評価点としては7点満点の7段階評価を用います。

一対比較評価

回答者に2つのカードを比較してもらい、どちらがいいかを全てのパターンで行います。このとき、「カード1よりカード2の方が良い」といった評価を行ってもらい、よい評価の方を1点、同じ場合は0点、よい評価ではない方を-1点として評価します。

参考

今回は得点評価にて回答者4人に評価してもらったという想定で、話を進めていきます。
回答者からの得点は、カードごとに平均値を求め、以下の表にまとめました。

 回答者1回答者2回答者3回答者4平均値
カード13.25
カード24.5
カード33.75
カード45.5
<得点評価による評価>

3.コンジョイント分析による分析

コンジョイント分析による計算では「数量化1類」という解析を使用します。

数量化1類

数量化1類とは、目的変数をいくつかの説明変数で予測するデータ解析の手法です。
どの要素がどのくらい影響しているのかを測ることができ、重回帰分析と同様の目的で使用されます。

説明変数が数値以外の場合に使用でき、質的なデータを「1」と「0」の数値に変換することで量的なデータとして分析が可能です。

実際の計算では回帰分析を実行することで行っていきます。
属性のパターンを直交表として「1」と「0」に変換し、回答者からの得点評価の平均得点を付け足します。

水準数
 価格スペックブランド平均得点
カード13.25
カード24.5
カード33.75
カード45.5
<コンジョイントカードの数値化>

回帰分析により回帰係数を算出し「部分効用値」を求めます。

回帰分析について、詳しくは

実際の回帰分析は専門の統計分析が可能なソフトウェアを利用する場合が多く、ケースごとに計算方法が異なるため今回は割愛します。

回帰分析について詳しくは下記の記事をご参照ください

ここからは、回帰分析の結果が以下の場合を想定し、話を進めていきます。

達成条件変数回帰係数加重平均部分効用値
価格3万000
8万00
スペックRAM:4GB-1.5-0.75-0.75
RAM:8GB00.75
ブランド無名ブランド-0.75-0.375-0.375
有名ブランド00.375

部分効用値は、その要素が商品選択にどの程度の影響力を与えているかの指標となります。
例えば、スマートフォンの購入意欲に部分効用値を用いて、各商品の魅力を評価してみましょう。

  • 価格:3万円、スペック:4G、ブランド:有名ブランド
    • 0 + (-0.75) + 0.375 = -0.375
  • 価格:8万円、スペック:8G、ブランド:無名ブランド
    • 0 + 0.75 + (-0.375) = 0.375

この評価結果では「スペック」の影響度が大きく、「価格」「ブランド」についてはさほど影響がない結果となります。これらの評価結果から、購入者にとって重要な要因となるのは「スペック」であり、高い性能に見合った価格でも満足する傾向があることがわかります。

応用情報技術者試験でも出題されたコンジョイント分析

コンジョイント分析は応用情報技術者試験にも出題されたことがあります。

コンジョイント分析の説明はどれか。

(ア)顧客ごとの売上高、利益額などを高い順に並べ、自社のビジネスの中心をなしている顧客を分析する手法
(イ)商品がもつ価格、デザイン、使いやすさなど、購入者が重視している複数の属性の組合せを分析する手法
(ウ)同一世代は年齢を重ねても、時代が変化しても、共通の行動や意識を示すことに注目した、消費者の行動を分析する手法
(エ)ブランドがもつ複数のイメージ項目を散布図にプロットし、それぞれのブランドのポジショニングを分析する手法

応用情報技術者令和4年秋期 午前問69

今回解説してきたように、コンジョイント分析は複数の属性の組合せを分析する手法であるため、答えは(イ)です。

参考