なぜ朝一の勉強と早寝の学習効率はよいのか?記憶の系列位置効果(Serial Position Effect)から考える

学校の先生や塾の先生から、早朝の勉強をすすめられたことはないでしょうか?
また、夜更かしせずに早く寝たほうが、勉強したことが頭に残ると言われたことはありませんか?

今回はなぜ朝一の勉強と早寝の学習効率はよいのかを、記憶の系列位置効果(Serial Position Effect)から考えていきます。

系列位置効果とは?

系列位置効果は、心理学において記憶の現象の一つであり、特定の順序で提示された情報を覚えるときに、情報の位置(系列位置)が記憶の性質に影響を与える現象を指します。
この効果は、情報がリストや系列の中で提示される順序に応じて、記憶の精度や覚えやすさが変化することを示しています。

記憶の系列位置効果には、以下の2つの主要な効果があります。

初頭効果(Primacy Effect)

初頭効果とは、系列の初めに提示された情報が、他の情報と比較してより良く覚えられる傾向があります。
これは、初期の情報に注意が向けられ、より長期記憶に残りやすいという特徴的な現象です。

新近効果(Recency Effect)

新近効果とは系列の最後に提示された情報も、他の情報と比較して比較的良く覚えられる傾向があります。これは、最近の情報が短期記憶に保持されており、覚えやすいという現象です。

記憶のU字カーブ

上述の初頭効果と新近効果により、記憶は初めと終わりの内容が強く記憶されます。
たとえばいくつかの単語を提示し、それらを覚えられたかどうかをテストした場合、初めのほうに提示された単語と、最後のほうの単語の正解率は高く、途中の単語の正解率は低くなる傾向があります。

その結果、系列位置と成績でグラフを作成すると、U字カーブを描くようになります。

順行干渉と逆行干渉

系列の中間にあるものが記憶に残りにくい現象には、順行干渉逆行干渉も影響を与えています[1]三宮真智子『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法』北大路書房、2018年、87頁。

順行干渉とは、先に学んだことが、後続の学習を妨害するという現象を、逆行干渉とは、後から学んだことが先行する学習を妨害するという現象を指します。

順行干渉を受けないという理由から初頭効果が、逆行干渉を受けないという理由から新近効果が発生し、学習効果が高まります。
その一方で、系列の中間にあるものは、順行干渉と逆行干渉の両方を受けるため、記憶に残りにくい傾向があります。

系列位置効果を利用する

朝一の勉強と早寝で学習効率を上げる

系列位置効果は、うまく利用すると学習効率を上げることができます。
それが冒頭でも触れた朝一の勉強と早寝です。

朝一の勉強は初頭効果が発生するため、記憶に残りやすくなります。

一方、夜勉強した後に本を読んでしまったり、その他の娯楽に触れてしまったりすると、逆行干渉が発生し、勉強したことの記憶を妨害します。
そのため、夜勉強した後はすぐに寝てしまい、逆行干渉が発生しないようにすると記憶への定着が促されます。

プレゼンテーションなどへの利用

系列位置効果はプレゼンテーションなど、情報伝達でも役立ちます。
相手に覚えておいてほしい内容については、初めと終わりで話すと効果的です。

参考

  • 三宮真智子『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法』北大路書房、2018年

Webページ

  • https://en.wikipedia.org/wiki/Serial-position_effect

1三宮真智子『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法』北大路書房、2018年、87頁。