スキーマの呪縛とは何か?認知負荷を下げるスキーマのメリットとデメリットを解説

スキーマの呪縛の概要

スキーマの呪縛は、認知心理学や認知科学の文脈で使われる用語で、スキーマ(認知スキーマ、認知フレームワーク)が思考や判断に対して過度に制約をもたらす現象を指します。
具体的には、個人が特定のスキーマに囚われ、新しい情報やアイデアを柔軟に受け入れたり、新しい方法で問題を解決したりすることが難しくなる状態を指します。

スキーマとは何か?

スキーマの概要

そもそもスキーマとは何なのでしょうか。スキーマにはさまざまな意味がありますが、認知心理学や認知科学においてスキーマは、個々の知識や情報の組織的なフレームワークや概念的な構造を指します。

スキーマは、人が情報を受け入れ、理解し、記憶する方法を説明するための枠組みです。スキーマは、我々が新しい情報を処理する際に、既存の知識や経験に基づいて情報を整理し、理解するのに役立ちます。

電車を例にしてスキーマのメリットを考える

電車の利用を例にして考えてみましょう。
初めて電車を使う場合は「どこで切符を買うのか?」「料金はいくらか?」「どのホームで電車を待てばよいのか?」など、さまざまな疑問にぶつかります。
しかし、これらの経験をした後は、情報が記憶され、次回以降は別の場所に電車で移動する場合でも、初めて電車を利用した時ほど苦労はしなくなります。

スキーマという暗黙のルール

このように、スキーマは、情報のカテゴリ化、意味付け、予測などのプロセスを助け、効率的な認知を可能にします。
先ほどの電車の例のほか、飲食店での注文や病院での診察など、私たちは知らぬ間にスキーマを使いながら生活を送っています。

アメリカの心理学者であるウィリアム・ジェームズ(William James)はスキーマのない人生は「とてつもなくうるさい混乱」になると考えています[1]植原亮『思考力改善ドリル: 批判的思考から科学的思考へ』勁草書房、2020年、4頁。
つまり、人間はスキーマという暗黙のルールの中で生活をしているため、そのスキーマがなければ人間社会に混乱をきたしてしまうということです。

スキーマの呪縛の特徴

スキーマは、ものごとを理解しようとする時の負荷(認知負荷)を下げるというメリットがありますが、デメリットも存在します。スキーマのデメリットは「スキーマの呪縛」とも呼ばれます。
スキーマの呪縛は、以下のような特徴を持つことがあります。

新しい情報への抵抗

個人が特定のスキーマに適応しすぎると、そのスキーマに合致しない新しい情報やアイデアに対して抵抗を示す傾向があります。新しい情報が既存のスキーマに合致しない場合、無視されるか、無意識的に変形されてしまうことがあります。

創造性の低下

スキーマの呪縛は創造性を制限することがあります。新しいアプローチやアイデアを模索する余地が減少し、問題の解決において既存のパターンに固執しやすくなります。

視野の狭窄化

スキーマの呪縛に陥った人は、特定のスキーマに焦点を合わせ、他の視点やアプローチを見落とす可能性が高くなります。これにより、問題の多面的な理解が妨げられます。

誤った結論

既存のスキーマに合致する情報だけを受け入れることで、新しい情報に関する正確な判断を下すことが難しくなり、誤った結論に導かれることがあります。

スキーマの呪縛から逃れるには

スキーマの呪縛は、一般的には認知の柔軟性を制約するものであり、新しい情報や問題に対する適切な対応を難しくする可能性があります。
認知的な柔軟性を高めるためには、意識的にスキーマから離れ、新しい情報やアイデアにオープンで柔軟にアプローチするトレーニングや思考戦略を採用することが有益です。

1植原亮『思考力改善ドリル: 批判的思考から科学的思考へ』勁草書房、2020年、4頁。